CO2回収技術のゼネコン事例|二酸化炭素を減らすには
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トレンドワード:CO2(二酸化炭素)回収
「CO2(二酸化炭素)回収」についてピックアップします。世界的に地球温暖化対策が重要になってきている中、新技術に注目が集まっています。本記事では、CO2回収の方法やゼネコンによる取り組みについてご紹介していきます。
CO2(二酸化炭素)削減が世界的な課題に
CO2(二酸化炭素)削減は、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの主な要因として世界的な課題となっています。CO2は異常気象や海面上昇など深刻な環境問題を引き起こす原因と考えられており、社会全体で進めるべき重要な課題です。
具体的には、再生可能エネルギーの導入やエネルギー効率の向上、カーボンニュートラルを目指す企業活動といった項目が挙げられます。持続可能な未来を実現するために、経済や技術革新等幅広い分野での取り組みが求められています。
CO2(二酸化炭素)を減らすには①家庭・個人でできる方法
ここでは、CO2を減らすために「家庭・個人」でできる方法についてご紹介します。
電気の使用量を減らす
省エネ家電の使用や照明をLEDに切り替える、不要な電気をこまめに消すなど、電力消費を減らすことでCO2排出を抑えられます。また、エアコンの温度設定を調整するといった行動も有効です。
ゴミの削減
リサイクル可能な資源を分別して再利用することで、焼却処分されるゴミの量が減りCO2の排出を抑えられます。使い捨て製品の購入を避け、長く使える物を選ぶことも重要です。
電気自動車の活用
電気自動車(EV)は、ガソリン車に比べて走行中のCO2排出量が大幅に少ないため、CO2削減に貢献します。さらに再生可能エネルギーで充電すれば、より環境負荷を軽減できます。
CO2(二酸化炭素)を減らすには②国・企業による方法
ここでは、CO2を減らすために「国・企業」で実施されている方法についてご紹介します。
植物を増やす
植物は光合成によって大気中のCO2を吸収し、温室効果ガスの削減に貢献します。植林活動や緑化事業を通じて植物を増やすために、森林保全や再生プロジェクトを行うことも重要です。
BECCS|回収・貯留
BECCSとは「Biomass Energy with Carbon Capture and Storage」の頭文字を取った言葉で、バイオマスを燃料としてエネルギーを生産し、その過程で発生するCO2を回収して地下に貯留する技術のことを指します。再生可能エネルギーを用いつつ、CO2を大気に放出せずに削減できると期待されています。
DACCS|回収・埋立
DACCSとは「Direct Air Carbon Dioxide Capture and Storage」の頭文字を取った言葉で、大気中から直接CO2を取り出して回収し、それを地下に埋める技術のことを指します。
工学的プロセスにより大気中から直接CO2を分離・回収する「DAC技術」と、地中に貯留する「CCS技術」を組み合わせているのが特徴です。大規模にCO2を削減できる方法のため、企業や政府による技術開発が進められています。
CO2の主な回収技術|DAC(直接空気回収技術)
ここでは、CO2の主な回収技術「DAC(直接空気回収技術)」について詳しくご紹介します。DACは排出源に限定されず、すでに大気中に拡散したCO2を削減できる点が特徴です。
ただし、大規模導入には高コストやエネルギー消費の問題が課題となっています。カーボンニュートラルやカーボンネガティブを目指す取り組みとして、研究開発が進められている段階です。
物理吸着法
物理吸着法は、ガスや液体の分子が固体の表面に引き寄せられて表面に付着するのを利用する方法です。この方法では化学反応を伴わず、単に分子が固体表面に「くっつく」イメージとなります。
表面に多くの小さな穴がある多孔質の素材を使って、空気中のCO2を固体の表面に吸着させます。温度や圧力を調整することで吸着と脱着を繰り返し、CO2を効率的に回収できるのが特徴です。化学吸着よりもエネルギー消費が少なく再利用がしやすいですが、吸着力は化学吸着より弱くなります。
アミン吸収法
アミン吸収法とは、CO2を多く含むガスとアミン(有機化合物の一種)を反応させて効率的に取り除く方法です。具体的には、アミンがCO2と化学反応を起こして結合してCO2を吸収します。その後、加熱することで強制的に分離でき、アミン溶液を再利用可能です。
この方法は、火力発電所や工業プロセスなどの大規模なCO2排出源で広く使用されており、高い効率でCO2を回収できます。しかし大量のエネルギーが必要なため、コストやエネルギー消費が課題となっています。
膜分離法
膜分離法は、特殊な膜を使ってガスを分離する技術です。CO2を含むガスが膜を通過するときに、分子の大きさや化学特性の違いによってCO2だけを選択的に透過させたり、逆に通さないようにしたりするのが特徴です。
深冷分離法
深冷分離法は、CO2を液体や固体として凝縮させて分離する方法です。CO2は他のガスよりも比較的高い温度で凝縮するため、温度を調節することでCO2だけをドライアイスとして効果的に分離できます。
主に石油精製や天然ガスの精製工程で利用され、CO2を高純度で分離できるのがメリットです。ただし、冷却に大量のエネルギーを必要とするのが課題です。
CO2回収技術の事例|ゼネコン企業が活躍
ここでは、大手ゼネコンが実施しているCO2回収の取り組みについてご紹介します。
清水建設|m-DAC技術の都市実装
清水建設は双日㈱、Carbon Xtract㈱と共同で、CO2を大気から直接回収して利活用するシステムの都市実装に向けた事業を行う予定です。この取り組みは、東京都の「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」に採択されています。
具体的にはCarbon Xtractが保有する「m-DAC」の技術でCO2を回収し、植物栽培プラントで植物の光合成を促進すること等が計画されています。小型・分散型のCO2回収システムを用いたネガティブエミッション技術を都市実装することにより、炭素の循環利用が可能な都市づくりを目指します。
鹿島建設|DACでカーボンネガティブコンクリート製造
鹿島建設は、川崎重工と共同でカーボンネガティブコンクリート「CO2-SUICOM」の製造に向けた共同研究を開始しました。具体的には川崎重工のDAC技術で、多孔質材料とアミン化合物から成る固体吸収材によって大気中のCO2を分離・回収します。
回収できたCO2を使って「CO2-SUICOM」を製造することで、CO2を吸収・固定できます。これにより、CO2排出量を実質ゼロ以下に抑えるのが目標です。
大成建設|先進的CCS事業に採択
大成建設は、伊藤忠商事、日本製鉄、太平洋セメント、三菱重工、INPEX、伊藤忠石油開発と共同で「先進的CCS事業(二酸化炭素の分離回収・輸送・貯留) に係る設計作業等」を実施します。
このプロジェクトはJOGMECの「先進的CCS事業」に採択されており、国内初の政府支援対象となる先進的CCS事業の1つとなっています。具体的には九州製鉄所などから回収したCO2を船で輸送し、地下に貯留する計画です。2030年度の操業開始を目指し、CO2の分離回収や輸送、貯留に関する基本設計が進められています。
まとめ
CO2の削減は世界的な課題であり、個人レベルだけでなく企業による取り組みも重要になっています。建設業ではCO2排出量が多いのが問題であるため、ゼネコン各社による大規模な対策が注目されています。