建設業での省人化の事例|少人化・無人化との違いは?メリットやデメリットまとめ
目次
トレンドワード:省人化
「省人化」についてピックアップします。ロボットやAIを用いることで、人手不足の解消が期待されています。本記事では建設業界での省人化の事例やメリットについて、詳しくご紹介していきます。
省人化(読み方:しょうじんか)とは|意味や概要
「省人化(しょうじんか)」とは、業務や作業において人手を削減して効率化することを指します。機械化や自動化、IT技術の導入によって人力に依存する作業を減らし、生産性の向上やコスト削減を目指すのが目的です。
建設業における省人化は、技術の進歩とともに重要なテーマとなっています。例えばロボット技術やAI技術、ドローン、BIMなどが導入され、人手不足や労働者の高齢化に対応するための省人化が進んでいます。これにより作業の精度や安全性の向上だけでなく、工期短縮やコスト削減にも貢献しています。
少人化・省力化・無人化との違い
省人化とよく似た言葉として「少人化」、「省力化」、「無人化」があります。いずれも業務の効率化や労働の軽減に関わる概念ですが、それぞれ意味が異なっています。
まず「少人化」は、必要な人員の数を減らすことに焦点を当てています。省人化と比べて人の手が減るものの、作業そのものは依然として人手を前提とします。人手を減らすことが主な目的です。
次に「省力化」は、作業そのものにかかる労力を減らすことを意味します。機械やツールを導入することで、同じ作業をより少ない力で行えるようにすることが目的です。
そして「無人化」は、人の手を完全に排除して作業をすべて機械や自動化技術に任せることを指します。全自動のシステムやロボットを導入することにより、人手を一切使わずに業務が遂行される状態です。
建設業ではこういった概念を組み合わせることで、効率化や安全性の向上が図られています。
省人化を実現する方法
建設業における省人化を実現する方法には、さまざまな技術や管理手法の導入が考えられます。特に下記のような技術が、業務の効率化やコスト削減、そして労働力不足への対応に役立っています。
- 自動化技術の導入
- IT技術の活用
- ドローンの活用
- AIの導入
- 遠隔作業やテレワークの導入
建設現場では危険な作業も多いですが、ロボットを使用することで人手による作業を代替できます。また遠隔操作や自動運転による重機の使用も広まりつつあり。無人の掘削機やブルドーザーなどが効率的に土木作業を行っています。
こういった技術や方法を組み合わせることで省人化を実現しつつ、労働力不足に対応していくことが重要です。
省人化のメリット・背景
ここでは、省人化のメリットや注目されている背景についてご紹介します。
人手不足問題の解消
建設業では労働力不足が深刻化しており、これが省人化を進める原動力となっています。現場で働く熟練労働者の高齢化が進んでいるのに加えて、次世代の労働者が不足していることも問題です。
人手不足が続く中、限られた人員で建設プロジェクトを進めるためには、業務の効率化や生産性の向上が不可欠です。省人化技術を導入することで、少ない人数でも従来以上の仕事量をこなせるようになります。これにより、人手不足の影響を最小限に抑えられるのです。
人為的ミスの防止
建設業の現場作業では精密な測定や正確な作業手順が求められますが、疲労や集中力の低下によりミスが発生するケースもあります。しかし自動化技術やロボティクスを使えば、作業を正確かつ一貫して行うことが可能です。
またBIMやクラウドベースのプロジェクト管理システムを利用することで、データの正確な処理と共有が可能になります。これにより図面のミスや工期スケジュールの誤りが防げるため、作業が円滑に進みます。
安全性の向上
建設現場では高所作業や重機を使った作業など、危険が伴う業務が数多くあります。そのため作業をロボットや自動化機械に任せることで、事故のリスク軽減につながります。
たとえば自動運転重機や遠隔操作のクレーンを使用すれば危険な場所に立ち入らずに済むため、事故のリスクを大幅に減らせるのです。また自動化技術やAIによるデータ管理も、現場での品質管理や安全基準の徹底に有効です。
省人化の課題・デメリット
ここでは、省人化の課題やデメリットについてご紹介します。
人材教育が必要
省人化に伴って自動化や新しい技術が導入されることで、従来の作業方法とは異なるスキルや知識が求められるようになります。その結果、企業や現場で働く人材の教育やトレーニングが必要となります。
特にロボットやAI、IoTなどの新しい技術を活用する場合、現場の作業員が新しい技術を理解して使いこなせる能力を身につける必要があります。新しい機器の操作方法やソフトウェアの使い方を習得する際には時間が掛かるため、教育や研修の機会を設けることが重要です。
初期費用が掛かる
省人化を進めるためには、機械化や自動化のための設備投資が必要となり、これに伴う初期コストが企業に負担となる場合があります。特に中小企業にとっては負担が大きく、省人化の実施をためらう要因となってしまうことも多いです。
また機械や自動化システムは導入しただけではなく、保守やメンテナンスを定期的に行う必要があります。故障した場合には修理費用が発生するだけでなく、部品の交換やソフトウェアの更新も継続的に発生します。
そのため導入による長期的なコスト削減効果を期待しながらも、まずは初期投資を賄うための計画的な資金を確保することが必要です。
建設業での省人化の事例|ロボット活用
ここでは、建設業で行われている省人化の事例についてご紹介します。
YKKAP|非木造建築用窓施工ロボット「MABOT」
YKK APは、非木造建築の建設現場で窓の施工を行うロボット「MABOT(マボット)」を開発しました。これは自律移動して人と一緒に働くロボットシステムのシリーズで、業界初の試みです。
具体的には「アライメンター」で窓枠を正確な位置に設置し、自動溶接ロボット「ウェルフィクサー」で鉄製ブラケットを自動で配置し溶接固定します。これにより、溶接工程を省人化できるほか、作業員の高所作業による災害リスクの低減に貢献します。
大林組|耐火被覆吹付けロボット
大林組は、耐火被覆吹付けロボットの新型機(2号機)を開発しました。これにより、施工の自動化によるさらなる生産性向上が期待できます。
具体的にはあらかじめ登録した作業データに従って現場施工エリア内を走行し、所定の吹付け位置に停止して作業を開始する「自律移動機能」を搭載しています。2号機では位置決め時の測位法に測量で利用されている後方交会法を採用することで、より正確な自律移動を実現しました。
鹿島建設|墨出しロボットプリンター「ロボプリン」
鹿島建設は、墨出し作業を全自動で行うロボットプリンター「ロボプリン」を開発しました。具体的には読み込んだ施工図面データを基に、工事に必要な基準墨や仕上げ墨などをコンクリート床にプリントします。
特別な装置やアプリが不要でスタート後は全自動で作業するため、誰でも手軽に高精度の墨出しができるのが特徴です。実証の結果、墨出し作業の生産性を約2倍に向上できることが確認されています。
まとめ
建設業界での人手不足が課題となっている中で、省人化への流れも加速しています。デジタルツールやロボットを活用することで、さらに効率化を図ることが期待されています。