ゼロウォータービルとは|定義や環境配慮のゼネコン事例紹介

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著者:小日向

トレンドワード:ゼロウォータービル

「ゼロウォータービル」についてピックアップします。気候変動が問題となっている中で、持続可能な社会実現のためには水資源を守る取り組みが重要です。本記事では水を循環させる建物の仕組みや、ゼネコンによる具体事例をご紹介します。

ゼロウォータービルの定義

https://www.energy.gov/femp/net-zero-water-building-strategies

ゼロウォータービルとは「水資源自立循環型建物」のことを指します。具体的には、水を建物・敷地内で循環させることで自給自足を目指す建物が該当します。

持続可能な環境保護を重視した建物設計としては「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」もポピュラーです。こちらは「年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」で、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて必要性が高まっています。

ZEBについて詳しくは、下記記事をご覧ください。

ゼロウォータービルのメリット

ここでは、ゼロウォータービルの主なメリットについてご紹介します。地球環境が変動している中で、水資源の重要性が増しています。

環境保護につながる

ゼロウォータービルでは、雨水や使用済みの水を再利用する仕組みを採用しています。これにより、新鮮な水の消費を大幅に削減できるのがメリットです。地域の水資源を節約することで、将来的な水不足に備えられます。

また再利用システムを導入することで排水量を削減し、下水処理施設への負担を軽減できるのも特徴です。これにより河川や海への汚染物質の流入を減らし、水質の保全に貢献します。

災害対策になる

ゼロウォータービルには貯水タンクが設置されているため、災害時に使用できる水を備蓄しておくことが可能です。そのため、災害時に水道インフラが機能不全になった場合でも水を確保できます。

また独立した水処理システムを持っているため、地域の下水道インフラに依存せずに排水処理が行えます。これにより公共の下水道システムが機能しなくても、建物内で衛生環境を維持できます。

複数の水源や処理システムにリスク分散する仕組みなので、システム全体の信頼性が向上するのもメリットです。自治体の水供給インフラへの依存度が減少することにより、地域全体の復興を早めることにもつながります。

不動産価値が向上する

ゼロウォータービルは、不動産価値の向上にもつながります。持続可能な建物への需要が高まる中、エコフレンドリーな特徴を持つ物件は市場での魅力が高く、不動産価値が向上しているのです。

具体的には、LEEDやWELLなどのグリーンビルディング認証を取得しやすくなります。こういった認証を取得することで不動産価値を高められ、売却時や賃貸時に有利に働くでしょう。

環境保護への取り組みが評価されることで、企業や個人の社会的評価も向上します。特に企業の場合、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、ゼロウォータービルを保有・利用することが企業イメージの向上につながります。

ゼロウォータービルの課題

ゼロウォータービルにはメリットが多いですが、新しい概念のためまだまだ課題も残っています。

  • 電気使用量が増える
  • 水の安全性の問題
  • 広大な土地が必要

水の再利用や汚水の処理には、高度な水処理技術が必要です。そのため現時点の技術では、総合的なエネルギー消費が増えてしまう場合があります。

また水の再利用では、安全性が確保できるのか不安という声も多いです。そして貯水タンクを設置するためには、広いスペースが必要です。これにより、特に都市部のような土地が限られている場所では難しい場合があります。

こういった課題に対処するためには、技術の進歩とともに法整備の推進や適切な政策の導入が必要です。また土地利用の効率化やエネルギー効率の向上にも注力することで、ゼロウォータービルの普及と実現が進むと考えられます。

ゼロウォータービルの事例

ここでは、ゼロウォータービルの具体的な事例をご紹介します。大手ゼネコンでは試験的に導入が進められており、今後さらなる広がりが期待されています。

大成建設|人と空間のラボ(ZEB実証棟)

https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/240409_9965.html

大成建設は、2024年4月に国内で初めて「LEED Zero Water」認証を取得しました。横浜市戸塚区の「人と空間のラボ(ZEB実証棟)」内で使用する水利用に際して、雨水利用や雑排水再利用システムの導入を行ったことが評価されています。

https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/240409_9965.html

具体的な成果は、下記の通りです。

  • 月間使用水量は、雑排水再利用システム導入後から雨水と再利用水の合計値が上水の値を上回った。
  • 2年間使用水量は、雨水利用のみの場合と比較した結果、上水使用量が34%削減され、雨水・再利用水使用量が130%増加となり、全体使用量では雨水と再利用水(代替水)の合計値が上水を上回る状況を実現。

今後は、実証の知見を活かしてZero Water認証取得の支援を行っていく予定です。新築・既存建物での雨水利用・雑排水再利用により、上水使用量削減を推進することが期待されています。

日建設計|Kurita Innovation Hub

https://www.nikken.co.jp/ja/expertise/mep_engineering/zero_water_building.html

日建設計では、栗田工業の研究開発拠点である「Kurita Innovation Hub」の設計でゼロウォータービルの概念を取り入れています。

具体的には施設全体での上水利用を最小限にするため、超節水型の大便器や水栓類を採用しました。飲用水と手洗い以外の用途には、再生水を使用しているのが特徴です。

https://www.nikken.co.jp/ja/expertise/mep_engineering/zero_water_building.html

また研究開発棟には排水処理プラント、純水製造プラントが設けられ、施設から出た排水を系統ごとに分別します。それぞれの排水に応じて処理工程を最適化することで設備の負荷を減らし、高い水回収率と省エネルギーを実現しています。

まとめ

気候変動が課題となる中で、水資源の重要性も高まっています。まだまだ課題はあるものの、ゼロウォータービルの導入で環境保護につながると考えられます。災害対策としても有効なので、さらなる普及が期待されます。