育成就労とは?メリットから建設業での可能性を解説
2024年6月14日に改正入国管管理法が成立し、育成就労制度が設立されました。建設業では、人材不足が進んでいるため、業界として人材を確保する施策を実施していかなければならない状況にあります。
そして、育成就労を活用することで、長期的な視点から外国人の育成に注力できるように変化しました。そのため、これまでのように一次的な労働力として採用するのではなく、企業の中核を担う人材の採用も可能となっています。
そこで、本記事では、育成就労の概要や技能実習との違いなどについて詳しくみていきましょう。
目次
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育成就労とは、外国人を対象とした「人材確保と育成」を目的に作られた制度です。期間は3年とされており、就業可能な業種の中に建設業も含まれています。また、スキルアップやキャリアアップが目的であるため、期間内で特定技能1号に該当する人材を育てることが目的の1つとなっています。
特定技能1号については、外国人に対して日本語能力と特定の分野におけるスキルや知識を問う試験に合格しなければなることのできない在留資格です。たとえば、ある程度の説明を聞いて、日本人と同様の施工や重機の操作ができるといった場合には、特定技能1号に該当すると考えられるでしょう。
また、活用を検討する場合は、民間企業ではなく、監理支援機関が管轄している点も知っておきましょう。
転籍が可能
育成就労では次のような条件を満たした場合には転籍が可能です。
- 受け入れ期間における就労期間が1年以上
- 技能検定(基礎)と日本語能力検定(N5)の試験に合格
- 転籍が同一の業務区分となっている、他に転籍してきた外国人労働者が一定以下
あくまでも特定の業界や業種でのスキルアップやキャリアアップが目的であるため、短期間での転籍は不可能となっています。そのため、制度を利用する外国人に、業界に対する魅力やメリットを感じてもらい入職を促すような取り組みも必要だといえるでしょう。
特定技能1号への移行条件
育成就労の対象となったうえで、特定技能1号へ移行したい場合の条件は以下になります。
- 受け入れ前:N5の日本語能力を有している(漢字やカタカナ、平仮名が呼んで理解できる。ゆっくりとした他人の話であれば、意味を理解して聞くことができる)
- 受け入れ後1年以内:技能検定基礎級の合格
- 受け入れ後3年以内:日本語検定N4と技能検定3級か特定技能1号評価試験に合格
人材の意思もあるものの、受け入れ機関となる企業も条件を把握し、それぞれの試験に合格できるような人材育成プログラムを検討・策定しておく必要があります。また、技能だけでなく、日本語による意思疎通も求められるため、専門の学習ができるサービスをみつけておくことも大切です。
育成就労と技能実習の違い
育成就労と技能実習の違いは次のようになります。技能実習については、長時間労働や教育不足といった問題があり、労働に関する権利も不十分な状況にあるケースも多い状況でした。そのうえで、育成就労と比較してみましょう。
育成就労 | 技能実習 | |
在留機関 | 最長3年(特定技能取得後は永住権も検討できる) | 最長5年 |
就労開始時点の技能 | N5の日本語検定に合格できるレベル | 介護以外はなし |
育成目的 | 1年時に技能検定基礎、3年目は日本語検定N4、技能検定3級か特定技能1号評価試験に合格する | 1号終了時に技能検定基礎、2号終了時は技能検定試験3級合格 |
転籍 | 可能(本人の意向を反映できる) | 不可能 |
建設業で育成就労を活用するメリット
建設業で育成就労を活用するメリットは、次のようになります。技能よりも外国人の日本語能力に抵抗があった企業であっても、育成就労の場合は最初からある程度の日本語能力が求められます。そのため、コミュニケーションコストや育成コストは抑えられるといえるでしょう。
長期雇用を検討しやすくなる
企業は育成就労の活用によって、ニーズに合った専門知識や技術を習得した外国人労働者を育成しやすくなります。日本語能力が高く、意思疎通もできるため、これまで以上に長期雇用を前提とした人材活用が可能となるためです。
結果として、企業は戦力となる従業員を確保でき、長期的な視点から経営について見直すことも可能になります。また、外国人労働者としても離職リスクが低くなるため、定着率が向上するといえるでしょう。
意思疎通がこれまで以上にしやすい
育成就労では、企業文化や業務プロセスに外国人労働者が馴染みやすいといえるでしょう。
言語の壁や文化の違いが障害となることが多いものの、育成就労では日本語能力の向上が求められます。
たとえば、日本の建設現場での作業手順や安全基準をもう一度説明するといった手間を省けるといえるでしょう。外国人労働者に対して、これまで以上に円滑なコミュニケーションがしやすくなると予想されます。
人材不足への対策となる
外国人労働者を積極的に受け入れ、企業のニーズに合わせて育成できれば、人材不足の解消につながります。人手不足によるプロジェクトの遅延や品質低下を防ぐことができ、安定した業務運営が可能となるでしょう。
また、外国人労働者の視点からもスキルを高める機会や期間が得られやすい点はメリットだといえます。
建設業で育成就労はどう役立てられるか
育成就労を活用することで、次のような効果を期待できます。
- 専門的なスキルを持つ技術者の獲得-AIやDXなどの要素をふまえて、建設業においてもデジタル人材が必要となる。そのため、育成就労によって、外国人労働者に最新技術を習得してもらうといった育成計画を立てられる
- 多様な人材の採用とイノベーションの創出-様々な背景やスキルを持つ人材を集めやすくなるため、グローバルな視点から企業競争力を高められる
- 長期的な視点の人材育成と定着率の改善-日本国内における労働力は採用を強化したとしても低下していく。しかし、育成就労では海外の人材に対して、長期的な目線からキャリアを築きやすい環境が整っている。そのため、海外労働者の離職率も低下する
まとめ
育成就労は、外国人労働者を対象としたキャリア支援を目的とした人材育成プログラムです。建設業に対しては、長期的な雇用の促進、企業文化への適応支援、人材不足の解消といった多くのメリットがあります。
国際的な労働市場からの人材確保と育成を検討・計画することで、企業の持続可能な成長につながるでしょう。