水道施設の耐震化は進んでいる?現状の課題と今後の変化について解説
日本における水道施設の普及率は9割以上です。そのため、水道施設の耐震化は、国民の安全と生活を守るために不可欠な課題だといえるでしょう。
しかし、実際には耐震化の進展は地域や施設によってばらつきがあり、多くの課題が存在します。たとえば、財政的なハードルや古い設備、専門技術者の不足などといった課題があります。
課題解決のためには、官民の連携が今後より重要になっていくと予想されるでしょう。本記事では、現在の耐震化の進捗状況にふれたうえで、直面している具体的な課題に詳しくふれていきます。
目次
「トレンドワード:水道施設 耐震化」
水道施設の耐震化は、各地方自治体が主体となって進めているケースも多い状況にあります。しかし、耐震化が進んでいる場所とそうでない場所が二極化されつつあるといえるでしょう。
実際に、能登半島地震においては、最大で14万棟の住宅が耐震化できていない水道施設による断水などによって、復旧までに時間を要しました。そして、国土交通省は、次のような施策を行っていく方針を固めています。
- 上下水道に対して、分散型システムの活用も含めた災害に強いインフラ設備の構築
- 災害対策の拠点として機能する施設の上下水道の耐震化
- 災害を避ける施設配置計画の策定、実施
- 官民連携による新しい管理体制の構築
- 施設の円滑な状態確認に使用するDXの推進
災害の被害にあった地方自治体も含めて、新しい施設管理の方法を模索していくとしています。ただし、DXなどを活用する場合やシステムとして全く新しいものを導入する場合、人材の確保も必要になるため、難易度は高いと予想します。
日本国内における水道施設の耐震化状況
引用|厚生労働省|水道事業における耐震化の状況(令和4年度)
日本国内の水道施設の普及率は98%であるため、比較的高いといえるでしょう。しかし、水道管の耐震化率は41.2%、浄水施設は約39.2%、配水池は約62.3%であるため、災害に対応できる施設は少ない状況です。
とくに、東京や大阪では耐震化が進んでいるものの、地方自治体によっては3割をきってしまうケースも少なくありません。また、財政面から耐震化が難しいだけでなく、施工できる技術や人材が集まらないという事態に陥っている自治体も存在しています。
しかし、国としての支援制度の活用や官民連携を行うことで技術支援も可能となります。複数の自治体で1つの施設を管理する広域化では、以下のようなメリットもあるため、現状を把握したうえで適切な施策を実施する必要があります。
- 広域化によるコストダウンが可能になる。とくに、設備や人材に対するコストの分散などは小規模の自治体には効果があると期待できる
- 専門技術を持つ人材の共有が可能となる。採用や待遇も課題となるものの、条件を見直すことで人材の採用の幅が広がる。また、人材を育成する機会も設けやすくなる
自治体ごとの協力や話し合いが必要となるだけでなく、民間企業の力が必要となるケースもあるため、幅広い視点から課題解決に取り組むことが大切だといえるでしょう。
水道施設における3つの課題
ここでは、水道施設の3つの課題についてみていきましょう。
既設施設の老朽化が進行している
日本の水道施設は、設備を更新していない場合、耐用年数を大幅に超えているものが多い状況にあります。経年劣化が進むほど、災害に対して備えることが難しく、古い設備を部分ごとに変えていくことも技術的なハードルが高いといえるでしょう。
また、使用する水の水質に関しても低下する可能性も否定できません。
小規模自治体の収入・職員不足
日本の人口は、今後より減少していくと予想されます。そのため、今までは何とか維持できていた水道施設の管理が難しくなっていくといえるでしょう。また、小規模の自治体が提携したとしても問題を解決できるとは限らないため、現状を把握するためのリソースや調査も必要です。
人材に関しては、技術を持つ人材が退職するだけでなく、人数が少なくなっていくことが予想されます。そのため、経験豊富な人材が在職している間に、人材育成や管理体制を整えることが求められるといえるでしょう。
制度の活用不足
官民連携や広域連携、デジタル化など水道施設に関する制度や法律は多く存在しています。しかし、人材が少ない小規模自治体では、「そもそもどうやって申請し活用できるのか」といったノウハウがなければ、申請が難しい環境にあります。
また、認知度が低く、「法律には従っているものの、制度に関しては不明」といったケースも少なくありません。国としてアドバイザーを派遣する、申請方法を簡略化・簡素化するといった取り組みも必要といえます。
効率的な水道施設管理はいつできるのか?
効率的な水道施設管理は、耐震化も含めたインフラの更新やIoT機器・センサーの導入、人材育成体制ができれば実現できるといえるでしょう。ただし、短くても10年ほどの時間を要すると予想されます。その理由は、以下3つです。
- 人材育成プログラムや制度が充実しているとは言い難い
- データ連携・共有システムを持たない地方自治体が多い
- 補助金や支援体制などの仕組みを自治体に理解してもらう必要がある
教育機関との連携やキャリアパスの確立など、長期的な視点の仕組み作りが今後必要となるでしょう。また、データで予測する・施設の機能を分けるといった技術的な取り組みも今後継続して管理していくためには必要な施策だといえます。
まとめ
日本の水道施設の耐震化は、2極化しており、今後多くの自治体で実施しなければならない項目の1つです。また、効率的な水道施設管理には、長い時間がかかるだけでなく、現状の課題をある程度クリアしなければなりません。
今後、システム部分も含めて政府が状況を把握し、耐震化や設備の刷新に取り組んでいくとしています。社会的ニーズも高いため、どのような取り組みが行われていくのか注目しておきましょう。