2024年6月。建設業における休日はどう変化した?
建設業は、これまで長時間労働や休日の確保が大きな課題とされてきました。適正な工期の設定や残業時間の上限規制といった方針や法律の改正が実施されたことで、人々の働き方は変化しつつあります。
そして、2024年6月12日には改正公共工事の品質確保の促進に関する法律が成立し、国が主体となり、賃金の支払いや休日に関する調査を実施することが盛り込まれました。
本記事では、改正品確法の概要と休日の現状、休日に対する具体的な取り組みについてみていきましょう。
目次
「トレンドワード:建設業 休日」
建設業における、休日の不足や長時間労働は現在も課題となっています。業界として、休日が少なかった理由については、以下のように多岐にわたる点も知識として知っておきましょう。
- 工期の交渉は基本的にできなかった-ルールや工期設定の考え方としてガイドラインもなかった
- 予算、リソースに制限があった-人件費や材料費なども含めて、工期に対して使用できる予算がギリギリなことが多かった。また、人件費に関しては時間的余裕とスキル依存であるため、決まった納期に終わらせることが優先だった
- 労働力に頼りがちだった-現状もDXの推進やロボットの活用などがなければ、手作業が主体となる企業も多い。
長時間労働に加え、スキルや知識の取得が精神論に頼るケースも多かったといえます。そのため、休日に関しても「管理する側も納期に間に合わせるために休日を削る」という働き方を避けるのは難しい状況でした。
そのうえで、現在はゼネコンを中心に残業時間の徹底的な遵守、新しい工法・技術の導入による人材負荷の軽減が図られています。そのため、生産性向上につながっており、週休二日制を実現できる企業も増加している状況です。
公共工事の品質確保の促進に関する法律とは
公共工事の品質確保の促進に関する法律とは、2005年4月1日に施行された、公共工事における品質と適正な工期の確保を目的とした法律です。2019年6月14日にも改正されており、その際には次の項目が改正されています。
- 発注者の緊急対応力の強化-建設業関連団体や地方自治体との協定の締結や連携、緊急性に合わせた契約や入札の実施が可能となった
- 働き方改革への対応-適切な工期設定。中長期にわたる発注見通しの公表、適正金額での発注、契約に対する規定の作成。社会保険の加入を要件化
- 設計や設計の品質確保-「公共工事に関する測量、地質調査その他の調査及び設計」を発注者の規定・責務に追加
2024年の段階でも適切な工期の設定や発注金額が不当に安価となるような契約を禁止するといった規定が作られている状況です。つまり、今後より規定が厳しくなるという考え方もできます。
しかし、人材の確保や減少する労働人口を代替できる生産性を確保するためにも、休日も含めた適切な工期が必須だといえるでしょう。
2024年6月12日の改正について
2024年6月12日に改正されたのは、公共工事の品質確保の促進に関する法律・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律・測量法です。
公共工事の品質確保の促進に関する法律に焦点を当てると、公共工事では、政府が週休二日制の推進と法律に基づいた調査・発表を実施するとしています。
つまり、今後国土交通省の直轄工事においては、事業者と発注者の契約内容を第三者がチェックし、適正かどうかを公表することになります。
建設業における休日の現状
引用:国土交通省|最近の建設業を巡る状況について|https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001493958.pdf
建設業の休日の状況を見てみると、年間の平均休日は過去と比較すると増加したといえます。しかし、4週辺りの閉所日数は平均で5.29日となっていることから、週休二日制で働けている労働者は少ないという状況になっています。
また、4週6休と4週4休の割合が高いことから、週休二日制を実施できている企業が非常に少ないといえます。労働時間や出勤日数の減少率が低いため、他の産業と同様の環境になるまでには時間を要すると予想されるでしょう。
建設業における休日取得の取り組み
ここでは、建設業における休日取得の取り組みについてみていきましょう。作業者の意識やスキルのみでは働き方は変えられません。事業者が主体となって、賃金や休日などの労働環境を管理し、生産性を高める必要があるといえます。
鹿島建設
鹿島建設は、大規模な現場においても4週8休を実現しています。徹底した肯定管理によって、予定外の遅延や無理のないスケジュール調整を実施し、作業時間の短縮を図ることで週休二日制を実現できました。
また、勤務インターバル制度も導入しています。これは、従業員の申し出か所長指示で、退勤から次の出勤までは少なくとも9時間はインターバルとして休息を取るというものです。従業員への負荷を軽減する仕組みとして参考になるでしょう。
JV(戸田建設・アイサワ工業)
住宅街での施工ということもふまえて、祝日・土曜日の作業は閉所という条件を満たし、GWや夏季休暇といった長期休暇も実現しています。長期休暇のために、JVで実施した項目は次のようなものが代表的です。
- 協力会社との事前打ち合わせとスケジュール調整
- ITツールを用いた管理による省力化
- ツールに検査の一元化
JVによる一連の取り組みを通して、長期休暇や週休二日制の実現は十分に可能という判断にいたっています。ただし、天候によっては、工期が圧迫され休暇を取る余裕がなくなることも考えられました。そのため、悪天候も考慮した工期設定の大切さをうかがえる事例だといえるでしょう。
まとめ
建設業は、社会のインフラを支える産業であるものの、長時間労働や休日不足が長年の課題となっています。過去の労働環境の厳しさによって、現在も労働環境のイメージは良いとはいえない状況です。
しかし、時代が変化し、建設業界でも労働環境改善の取り組みが進みつつあります。2005年に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」は、公共工事の品質向上と適正な工期設定を目的としており、労働環境の改善にもつながりました。
2024年6月12日の改正では、週休二日制の推進や労働時間の適正化が強化され、労働者の健康維持とワークライフバランスの向上に寄与しています。今後、建設業界全体での労働環境がどのように改善されていくのか注目しておきましょう。