自動運転はどこまで進んでいる?建設業界の現状を解説
建設業においては、単純作業の繰り返しをロボットに代替させたり、AIプラットフォームを使用した図面作成が可能になったりしているため、デジタル化が進んでいる状況といえるでしょう。しかし、人間とAIの住み分けが進んでいるものの、自動運転をはじめとする属人性の高さを解消する施策について「あまり知らない」という企業も少なくありません。
そこで、今回は建設業における自動運転の概要、使用されている技術にみていきましょう。
「トレンドワード:自動運転」
自動運転とは、車両や重機などを人間が行っている判断や操作をAIや画像処理といったあらゆる技術を使用し、自動的に運転させるシステムを意味します。ヒューマンエラーがなくなり、施工の安全性が高まるといったメリットがあるものの、導入する場合にはコストが高い点はデメリットだといえます。
建設業界においては、次のように活用されているケースが多い状況です。
- 重機操作
- ダンプ操作
- 掘削
建設業界における重機やダンプに関しては、これまで人間頼りで動かすケースが多く、オペレーターは専用の資格を保有しなければならないといった規定もありました。しかし、自動運転技術が確立すれば、資格や熟練のスキルがなくとも施工を実施できるようになります。
また、精度の高い自動運転が達成できれば、作業の効率化・属人性の解消・労働人口の減少などといった課題解決に役立つといえるでしょう。
自動運転を可能とする技術
ここでは、自動運転を可能にする技術についてみていきましょう。AIによる認識、データ処理だけでなく、通信技術の確保なども必要となります。
AI
自動運転における様々な判断は、AIが行います。画像や操作などを、AIに学習させる必要があるものの、学習するごとに精度が高くなっていくため、最終的に人間と同様の作業が可能となるという仕組みです。
たとえば、重機で掘削を行う場合には、AIは次のような処理を行っているといえます。
- 何をどこまで掘るのか(認識・判断)
- 安全を確認し接触せずにダンプに土砂を入れる(位置特定、認識、予測)
- ダンプが到着したことを認識し作業を切り替える(認識、検知、判断、予測)
会社によって自動化したい範囲が異なるものの、AIに学習させるという流れは同じであるため、専門的な会社の協力が必要となるケースも多いでしょう。
画像処理
画像処理は、AIに様々な画像から、対象物が何かを判断・認識させる技術です。カメラの画像や映像からAIが状況を認識し、判断を行えるようにAIに学習させる必要があります。
建設業では、位置特定・周辺認識のためにセンサーを活用するケースが多く、次のような高度な認識や処理を可能とします。
- 障害物、人間の検知
- リアルタイムの状況共有
- 内部に人間がいる場合の体調変化(建設業界では無人も多い)
無人で施工を進められる重機も多数あるため、労働力の確保に苦労している場合には導入を検討してもよいでしょう。
重機の自動運転が取り入れられる理由
ここでは、重機の自動運転が取り入れられる理由について解説していきます。建設業においてよく課題となる属人性、人口減少、生産性の向上に効果的なアプローチができる点は多くの企業にとってメリットといえるでしょう。
生産性の向上
重機の自動運転が可能になった場合、遠隔で施工状況を確認できるだけでなく、人の手や指示が必要だった作業についても効率化が可能です。たとえば、現場で重機オペレーターに直接指示を出す必要がなくなり、作業範囲に人が侵入してしまった場合の動作停止などもAIが自動的に行います。
属人性が低くなる
自動運転では、制御システムが動作しているため、人間の操作に頼る必要がなくなります。また、リスクの高い作業もAIを搭載した重機に任せられるため、人材の心理的負担の軽減にもつながるでしょう。
オペレーターが必要な作業においても、制御システムによってコントロールできるため、高い操作技術を人間に求める必要がなくなります。そのため、施工の品質向上やオペレーターのスキル面の向上も期待可能です。
建設業界における自動運転の事例
ここでは、建設業界における自動運転の事例について詳しくみていきましょう。
ローラー
舗装工事などに使用するローラーも自動運転が可能です。無人で設定された数値に従い、施工を行うことに加え、品質が安定する点がメリットだといえます。また、周辺環境の判断や適正パターンを自動的に選択することも可能となるため、オペレーター不足に対処できる技術として期待されている状況です。
ダンプ
実証実験の段階ではあるものの、ダンプの自動運転もスタートしています。重機に必要となる技術と自動車に必要となる技術はほぼ同じであり、この実証実験では、前後に進む・ダンプアップダウンも実行できました。
また、指示に基づいた進路変更や他車両との位置の把握も可能であることから、今後多くの施工現場での活躍が見込まれます。現状では、実証実験であり、公道を走るのは難しいと想定されるものの、限られた範囲であれば問題なく使用できるといえるでしょう。
バックホウ
バックホウも自動運転が可能となっています。バックホウの操作に関しても、スキルによって質の差が生じるだけでなく、高い技術を持つ人々が業界から引退することによって生産性の低下が懸念されている状況です。
そのうえで、バックホウの遠隔操作・自動運転はある程度の成果を挙げており、複数同時の操作、システムの連携によるスムーズな施工が可能となっています。
まとめ
自動運転は、AIなどの最先端技術を駆使して、人間が行っていた重機の操作を代替できるシステムの総称です。画像の認識から位置の判定、スムーズな操作が可能となります。
とくに、重機の操作をオペレーター任せにしてしまっている場合や今後人材の退職が見込まれる場合にはとくに役立つシステムだといえるでしょう。ただし、導入費用が高額な点とシステムの内容を把握し対応できる人材が建設業に少ない点はデメリットだといえます。
既に建設業における自動運転の事例は多く存在する状況です。そのうえで、今後はより生産性の向上が求められる業界になっていくと想定されます。建設業における自動運転がどのように広がっていくかどうか注目しておきましょう。