可搬型ローカル5Gとは?建設業に与える影響を解説

5Gは、高速大容量通信や低遅延の通信が行える電波です。幅広くスマートフォンで使用できるものと、限られた建物や土地で使用できるローカル5Gがあります。建設業界においても、5Gを活用する動きに注目が集まっている状況です。

記事では、5Gの概要についてふれたうえで、移動させることのできる「可搬型ローカル5G」のメリットについて解説していきます。とくに、これから社内のDX推進を意識する場合は、業務効率化や安定した通信環境の構築ができる点は知っておきましょう。

「トレンドワード:可搬型ローカル5G」

https://www.soumu.go.jp/main_content/000802944.pdf

可搬型ローカル5Gとは、限られたエリア内で5Gの電波を送受信できる環境を構築できるものです。移動させられるため、工事ごとに基地局を設置する必要もなく、サービスとして活用できれば、自社のコストや労力を抑えられます。

従来のローカル5Gを構築するには、次のような課題がありました。とくにコストに関しては、規模によっては数千万円かかるケースもあるため、よく確認しながら実装しなければなりません。

  • 運用や構築するまでのコストが高い(対応端末の購入、基地局の構築)
  • ネットワークの構築が難しい(ITスキルやプログラミングスキルがない企業では不可能)
  • 免許やメンテナンス、設置は簡単にできない(申請のみでも1カ月かかることもある)

しかし、可搬型ローカル5Gであれば次のようなメリットがあるため、ローカル5Gで発生していた課題を解決しやすくなります。

  • 自社で運用と構築を行う必要がなく、コストも安価で使用できる
  • コアやアンテナといった必要なシステムを提供するため、すぐに使用できる
  • 専門知識が必要な申請業務が必要なくなる(使用者は無線の資格は必要)

提供する企業によっては長時間稼働も可能であるため、建設現場における電波の確保・AIやネットワークを利用した管理、安全点検などに役立てられる点に注目が集まっています。

建設業界で可搬型ローカル5Gを活用するメリット

ここでは、建設業界で可搬型ローカル5Gを活用するメリットについてみていきましょう。とくに遠隔作業を前提としたデータのやり取り、作業指示の効率化、移動時間の減少など、建設現場における時間の短縮につなげられます。

建設現場の作業効率化

可搬型ローカル5Gを活用することによって、現場の作業効率化が可能です。たとえば、「データのやり取りや通信を行いながら、施工を進めたい」「安定した電波環境さえあれば、施工管理者が作業とコミュニケーションを取り、施工の確認ができる」といった場合には、可搬型ローカル5Gで解決できる可能性が高いです。

遠隔作業指示、状況把握なども安定的な通信が可能であるため、問題なく行えます。また、発注者に連絡やコミュニケーションを取るといった場合でも、現場から直接確認できるようになるため、作業者だけでなく、施工管理者にも魅力があるといえるでしょう。

労働環境の安全性向上

アプリケーションなどによって、作業員の体調や当日の危険予測ができる環境が整いつつあります。そのため、可搬型ローカル5Gを導入した場合、途切れないネットワークを担保できるため、安全性を向上させられるでしょう。

また、遠隔による体温変化の管理、作業と関係ないエリアへの侵入なども管理可能となるため、施工管理者の負担も軽減できます。

安定した通信環境の提供

建設業では、山、トンネルなどであれば、電波が満足に届かない状況となることも少なくありません。しかし、可搬型ローカル5Gを活用できれば沿岸部や山トンネルなどであっても、十分な速度があるデータ通信が可能です。

そのため、「電波が安定しない場所で作業を行うことが多く、AIやアプリケーションなどを端末に実装しているものの使えない」といった課題に頭を悩ませていた場合には、十分な効果を発揮するでしょう。

ローカルも含めた5Gの活用事例

ここからは、可搬型ローカル5Gと5Gの活用事例について、みていきましょう。大手ゼネコンでは、以前から5GやAIといった最先端の技術を活用しながら、施工管理を進めている状況にあります。

BIM/CIMの活用が進んでいる点も含めて、計画段階から施工にいたるまでのデータ連携や安定した電波環境がどういった面で役立つのか把握しておくことが大切です。

安藤ハザマ

安藤ハザマは、5Gに関連して、ゲーム作業の生産性の向上や労働力不足の解消を目的とした実証実験を行っています。

この実験は、2022年12月から2023年にかけて、東日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・ブロードバンドプラットフォーム株式会社と協力して行われました。この実証実験では、次のような結果を得られています。

  • 広域掘削工事においても5Gで対応できる
  • トラックや重機の動きに5Gが影響されずに通信できる
  • ローカル5Gや設備収納BOXは建設現場でも長期間安定して稼働ができる

建設現場におけるDX推進に5Gは一定の効果を示したといえるでしょう。

一般社団法人建設ディレクター協会

一般社団法人建設ディレクター協会では、2024年1月末から2月中旬にかけて、株式会社長大・日本電気株式会社・伊田テクノス株式会社・EXPACT株式会社・日本電気通信システム株式会社と連携し、可搬型ローカル5Gを活用したサービスの検証を行っています。

検証目的は、デジタルツインによる遠隔作業支援や遠隔安全管理を可搬型型5Gで行うことです。現場作業の効率化、安全確保、安定した通信の確保を目指すとしています。

施工管理者や作業員、発注者などを対象に、サービスの満足や導入の移行を調査し、実際に運用可能かどうかといった事項まで検証する予定です。

まとめ

5Gを活用した建設工事は、大手ゼネコンでは既に取り組まれているケースも多く、実際に作業効率の向上や時間の短縮などにつながっているといえるでしょう。ただし、実際にローカル5Gを設置する場合には、申請に専門知識が必要となることに加え、コストが高くなりやすい状況にあります。

しかし、可搬型ローカル5Gであれば、無線の資格は必要となるものの、ローカル5Gをコストを抑えながら使用できます。そのため、データやネットワークを活用した施工であれば、可搬型ローカル5Gは多くの場面で活用可能です。

また、持ち運びのできる可搬型ローカル5Gのサービスや商品が業界で広がれば、建設業界で課題となりやすい生産性の向上や労働時間の減少につながる可能性が高いと想定されます。今後の可搬型ローカル5Gの動向を見守っていきましょう。