Polyuse製3Dプリンタで初の建築確認申請取得|国内適応技術を確立
建設用3Dプリンタを開発する株式会社Polyuse (本社 : 東京都港区、代表 : 岩本 卓也 / 大岡 航 以下Polyuse)は、建築基準法に準拠する形で、株式会社MAT一級建築士事務所(本社:群馬県吾妻郡、代表:田中 朋亨 以下MAT一級建築士事務所)による設計を元に、施工を実施しましたことをお知らせいたします。
本件は、3Dプリンタ施工による、日本国内における初の建築確認申請取得の建築物となります(自社調)。
※1 「建築確認」は、建物の設計や敷地配置などの計画が建築基準法などに適合しているか、都道府県または市町村の建築主事(建築確認等に関する事務を担当する役職)や指定確認検査機関による確認を受ける手続きのこと。
目次
本プロジェクトの概要
Polyuseは2019年に創業し、これまで2021年に国内初の実利用の土木構造物や国内初の民間の実案件工事での適応などを実施しており、2021年12月には国土交通省中国地方整備局 広島国道事務所の令和2年度安芸バイパス寺分地区第4改良工事においても、国内初の産官学が連携した実証実験の実施を行ってまいりました。また、国内における唯一の建設用3Dプリンタメーカーとして、専門性の高い技術者を確保し、開発体制を構築することによって、国内での適応をいち早く推進し、将来的に見込まれる建設業における人手不足の一助となるプロダクト開発を実施しております。
2012年ごろより建設用3Dプリンタの開発が活発に行われ、海外では先行して建設用3Dプリンタを用いた住宅等の建築物の施工が実施されており、業界を長らく牽引しております。一方、国内においては地震、台風などの自然災害から我々の生活を守るため建築基準法の基準が存在し、法的に適合する形で建設用3Dプリンタを活用してどの様に施工すれば良いのか長らく未実証の課題となっておりました。
今回、MAT一級建築士事務所と協力し、群馬県渋川市内にて同市の建築確認申請を実施し、確認済書を取得したため、施工を実施しました。MAT一級建築士事務所が設計、施工を実施し、Polyuseは建設用3Dプリンタを用いて建築部材を製作しました。本件は国内初の建築許可を取得した建築物施工の成功事例であり、海外で先行する建設用3Dプリンティング建築の国内適応技術を実証確立した国内初の事例となります。
Polyuseでは今後も建設現場への適応事例を加速させ、建設業界の日常となる技術提供を目指します。世界的にも現在の建設用3Dプリンタが抱える安定的な稼働や効率的な施工方法の構築に寄与し、一刻も早く建設現場へ寄与してまいります。
施工内容
施工は群馬県渋川市にて実施し、建設用3Dプリンタで造形した3Dプリンタ部材を事前に工場製造したものを運搬し施工する方針としました。
今回造形した形状は建設用3Dプリンタが得意とするR形状を含む、12個の建築部材で成り立ち、組み立て施工する方式となっています。横幅は約6m、奥行きは約3〜4m、高さは約3mの平家建てとなります。これまで建築確認申請が不要だった10㎡以下のコンテナやユニットハウス、タイニーハウスといった領域※2ではなく、人間の暮らしを考える上で必要不可欠なサニタリーやインテリアを置く面積を確保した、17㎡超の広さを実現しております。
そのため、建築確認申請を取得する必要があり、1月24日付けで渋川市より交付いただきました。
※2 10㎡以下の建築物に関しては建築確認申請が不要ではありますが、建築物としては同様に建築基準を満たし、安全性や快適性を考慮する必要性があります。
Polyuseとしては、今後も国内での建設用3Dプリンタ施工での建造物における、正しい性能評価や事例共有を積極的に行ってまいります。
各部材ともに内部含めて使用モルタル素材を充填して造形をしており、充填して造形を行うことで密な状態を生み出し十分な強度を担保します。既に強度試験等は複数回実施しており、強度は従来のコンクリート壁時に適応される基準強度以上の強度を発現することを確認しています。従って、標準的なコンクリート製の外壁と同水準以上を保ちつつ、安全性を検討する上で実施する構造計算における計算値でも問題なく協議を進めてまいりました。
造形においては高さ150cmまでの内部空間を充填した印刷で凡そ4〜6時間程度必要であり、全部材の製造に約10日間程度要します。
造形期間中に並行して基礎打ちを実行することで効率的に施工を実施できます。造形後の現地組み立ては2日間で完了し、その後屋根等々の組み付け、内装の仕上げなどを実施し、旧来同様の建屋を建造するのに2ヶ月強かかるところを約1ヶ月で施工することができます。
プロジェクトの背景:Polyuseが建設用3Dプリンタの国産製造&普及に取り組む理由
建設用3Dプリンタは、2012年ごろより欧米を中心として開発が進められ、日本においても建設業界を取り巻く課題の解消や将来的な建設技術としてさまざまな期待がされています。
日本では近年、少子高齢化の影響や職業の多様化により、建設業界における就業者数の減少が国土交通省などの統計も含めて報告されています。特に実際の工事を担う職人は10年以内に1/3以上減少すると言われており、人手不足への対応が喫緊の課題となっています。居住者の多い首都圏を中心とした都市部では担い手も比較的若い傾向がある一方で、過疎化した地域など居住者が少ないエリアでは担い手不足はより顕著になり、対応が求められています。このような地域での技術者不足を補う要素として、3D図面データを用いることで誰でも必要な際、迅速にコンクリート構造物を製造できる機能が過疎地域でのインフラ維持に期待されています。
また、近年増加傾向にある災害時に早急な住宅供給や特殊部材の供給という側面でも建設用3Dプリンタは活用される可能性があります。災害時の仮設住宅なども居住後数年間は居住するケースも多く、これまでのプレハブ式のみならず居住快適性を意識した震災時の対応も検討していく必要があります。建設用3Dプリンタを活用した住居はデータを適宜変更することで迅速に家族構成などを考慮した異なるサイズの住宅を提供することが可能です。復興時の土木工事においても製造が短期的には提供が難しい形状なども3Dスキャナーなどと組み合わせることで必要な形状を迅速に提供できる可能性を秘めております。
国土交通相PRISMでも上記内容を含んだ検証プロジェクトを実施。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000049711.html
建設用3Dプリンタは我々の生活をより豊かにする観点でもこれまでコンクリート構造物の製造では高コスト化しやすい曲線形状などへの製造を容易にし、これまで作りにくかった形状ができることで建築士の創造性をより幅を広げることに寄与し、生活者にとってもより個々人に合わせた住宅の多様化をもたらすと考えています。また、自由な形状は構造上不要な箇所を削ぎ落とし、必要最小限の材料を使用するような部材供給を可能にし、限りある資源をよりサステイナブルに利用する手法としても期待されます。
東京大学 工学部 石田 哲也教授からみた本プロジェクトの意義について
東京大学 大学院工学系研究科 教授 石田 哲也(いしだ てつや)氏より本プロジェクトおよび建設用3Dプリンタを建設業界やコンクリート工学側からみた意義についてコメントをいただきました。
コンクリートを用いた建設用3Dプリンターの開発は、ヨーロッパや中国、シンガポールなどの海外諸国での研究が先行しており、既に建築物や橋梁などへの適用が試みられている。型枠を作り、型枠内部にコンクリートを充填し、養生して硬化させるという従来型の構築方法とは全く異なる3Dプリンティング技術は、建設産業を変革する大きな可能性を秘めている。これまでに作ることが難しかった複雑な形状を作ることが出来ること(造形自由度の高さ)、ロボットや情報技術と組み合わせることで施工の省力化・自動化が出来ることなど、数多くのメリットが指摘されている。しかしながら、地震国である日本で建築物や橋梁などのインフラを作る際には、十分な耐震性、安全性、耐久性を満足する必要があるため、解決すべき課題が多く、実用化に向けた取り組みが精力的になされている。
今回、国産の建設用3Dプリンターを用いて、建築基準法に準拠した住居用の建物が我が国で実現したということの意義は大きい。このような先駆的な事例が刺激となり、多くの研究者や技術者が切磋琢磨しながら、日本における建設用3Dプリンティング技術の開発競争が活性化することを期待したい。
本プロジェクトチームより
田中 朋亨 MAT一級建築士事務所 代表取締役のコメント
海外では3Dプリンタを活用した建築物の事例が増えています。日本でも活用が期待されていますが、日本では建築基準法により、3Ⅾプリンタでの建築行為は難しいとされています。しかし、今回Polyuseさんと協議を重ね、日本で初めて3Dプリンタを用いた建築物の建築許可を取得しました。これを足がかりに日本の建築業界でも3Ⅾプリンタを用いた建築行為への議論が活発になり、日本の建築業界がより盛り上がっていくことを期待しております。
また、日本では建物を建てる際に様々な規定がある為、海外の3Dプリンタ建築物の事例などを日本に置き換えて比較することは容易にはできません。しかし、この様々な規定がある故に日本の建築物は世界でも最高水準の安全性を保持しています。
今回の3Dプリンタ建築物は住宅への活用の第一歩でありますが、まだまだ課題は山積みです。例えば、環境性能や省エネ、そしてあらゆる方面やシーンからの安全性についても実際検証しなくてはならないことが多々あります。
日本の3Dプリンタ建築の発展の為にも今回の建築物を用いて実験や検証を行い、従来工法に負けない省エネ性能や安全性の確保を証明していきたいと思います。
岩本 卓也 Polyuse 代表取締役CEOのコメント
今回、国内初の建築許可を取得した建築物の施工に成功したことを誇りに思います。
Polyuseでは2021年度においてこれまで開発してきた技術を用いて実際の現場への適応と課題の抽出をしてきました。その一環として、土木工事への適応に引き続き、建築工事における適応も実施し、課題や今後の開発上の必要要件を洗い出すことを行っております。
今回、MAT一級建築士事務所の田中様のご協力もあり、実際に施工を行い検証を重ねることができました。
日本ではまだまだ実活用を普及するために課題も多いですが、これまで同様迅速に課題解決を重ね、MAT一級建築士事務所様をはじめとし、これまでもご協力いただいているパートナー企業様と共に一刻も早い現場への実機提供を目指して参りたいと思います。
鎌田 太陽 Polyuse プロジェクトリーダー(博士(工学))のコメント
本プロジェクトは、現場で型枠を作り鉄筋が張り巡らされたところにコンクリートを流し込んで部材を作る方法とは違い、工場で製作した部材を現場に運び込んで組み立てるという手法を採っています。3Dプリンタ施工では型枠を用いずに製作することが一般的であり、本現場では、最適化した複数の部材を工場から現場に運搬し短期間での製造及び納品することが出来ました。
開発チームとしては、これまで印刷造形させていただいたものとは色合いが大きく異なり、開発に取り組んできたコンクリート用3Dプリンタシステムの性能限界により苦労することも多く存在しました。特に、背が高く単純な形状ではない部材を多数製作する必要があったため、当社プリンタシステムには「連続稼働時間」、「冬季環境下での印刷造形」、「長時間におよぶモルタル材料の管理」といった性能限界への対処なども行い実施したことでより一層、建設業界の力になれると感じています。今後もパートナー企業様との協議を進め、開発を進めていきたいと思います。
事業急拡大に伴い、仲間募集中!
Polyuseでは現在、エンジニアチームを中心に絶賛仲間を募集しています。
チームは、修士・博士出身者が多く、それぞれが自身の専門領域や責任感、建設業界をより良くする為のモノづくりを重要視する目線を持ち、常に課題を楽しむ最高のチームであることを大切にしています。
Polyuseの開発現場では、多くのパートナー企業様や行政・大学研究機関様等と共同での事業展開を進めつつ、最先端の研究開発分野を社会実装していくことが可能です。
是非、建設業界の課題解決への強い関心と興味、そして各領域での実力・実績を兼ね備えた方と、より業界をアップデート出来るチームを作っていきたいと考えております。テクノロジーによる技術開発を通して、建設業界を変革する。というチャレンジにワクワクした方がいらっしゃれば、下記コーポレートサイトよりお問い合わせ頂ければ幸いです。
https://polyuse.xyz/recruit/
株式会社Polyuseについて
会社名 : 株式会社Polyuse(ポリウス)
所在地 : 東京都港区2-2-15 2F(開発拠点は神奈川県鎌倉市)
代表取締役 : 岩本卓也 / 大岡航
事業内容 : 建設用3Dプリンタを中心とした建設業界特化型のハードウェア、ソフトウェア、サービスの企画設計、製造、販売
設立 : 2019年6月
URL : https://polyuse.xyz/
【本件に関する報道関係者様からのお問合せ先】
株式会社Polyuse 広報部
メール : info@polyuse.xyz
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