建設業におけるQCDSEとは|基礎知識を解説

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「QCDSE」についてピックアップします。「QCDSE」は建設業において、特に施工管理で重要とされる要素です。本記事では、建設業界における「QCDSE」の基礎知識について解説します。

建設業におけるQCDSEとは

Quality(品質)

品質は、建設プロジェクトにおいて極めて重要です。建設物が設計通りに機能し、長寿命で安全でなければなりません。品質管理は、建設工程全体にわたります。例えば、建設プロジェクトでの品質に関連する具体的な事例として、高速道路の舗装工事を考えてみましょう。

品質の確保には、適切な材料の選定、正確な厚さと均一な仕上がり、耐久性のある舗装層の設置などが必要です。品質が低下すると、交通事故のリスクが高まり、補修や改修の必要性が生じ、コストと時間の増加につながります。

Cost(原価)

コストは、プロジェクトの予算内で実行されることが不可欠です。予算を超えるコストの増加は、プロジェクトの経済的な持続可能性に対する脅威となります。例として、高速鉄道の建設プロジェクトを考えてみましょう。

予算を超えたコスト増加が発生すると、政府の予算が逼迫し、プロジェクトの完了までの時間が遅れ、運賃値上げや予定された利益の減少といった問題が生じます。

Delivery(工期・納期)

納期は、プロジェクトの遂行において極めて重要です。例として、「大規模な商業施設の建設」を考えてみましょう。この場合、プロジェクトは以下のように進行します。

大規模商業施設の建設プロジェクトでは、多くのステークホルダーが関与し、厳格な納期が求められます。例えば、新しいショッピングモールの建設では、テナント、ショップオーナー、設計会社、建設会社、設備提供業者などが関与します。

プロジェクトの納期は、ショッピングシーズンや市場需要に合わせて設定され、特に季節的な需要がある場合、スケジュールは極めて重要です。建設プロジェクトは通常、工事段階と内装段階に分かれます。工事段階では、建物の骨組みや外装などの主要な構造要素が建設されます。

この段階での遅延は、全体の納期に影響を及ぼし、建設工程の適切な管理が求められます。内装段階では、ショップの仕上げや設備の取り付けが行われ、テナントが自分の店舗を整えるための時間が与えられます。

プロジェクトの納期を守るためには、建設会社は適切なプロジェクト管理ソフトを活用するなど、スケジュールの監視と調整を行います。また、施工中に問題や遅延が発生した場合、リスク対策のプランを立案し、迅速に対処します。

また、ステークホルダーとのコミュニケーションも欠かさず、プロジェクトの進捗状況や変更について適切に共有し、協力を促します。

このような大規模商業施設の建設プロジェクトでは、納期の遵守がプロジェクト成功の鍵であり、タイムリーな竣工はテナントや顧客に対する信頼を築くために不可欠です。

Safety(安全)

建設プロジェクトにおいて安全性は、従業員や一般の方の安全を確保するために不可欠です。安全な作業環境の維持は、労働者の事故やけがを減少させ、労災補償や訴訟のリスクを軽減します。

建設業界における安全の例として、高所作業が挙げられます。高所での作業は、適切な安全手順、保護装置、教育とトレーニングが不可欠です。これにより転落や落下物のリスクが低減し、安全が確保されます。

Environment(環境)

環境への影響を最小限に抑えることは、現代の建設プロジェクトにおいてますます重要となっています。建設プロジェクトは、土壌、水資源、大気質などの自然環境に影響を及ぼす可能性があります。環境とは、以下の3つに分類されます。

  • 自然環境:周辺の環境(空気・地盤・土壌・水質など)を汚染しない
  • 周辺環境:騒音や振動、重機や搬出入車の排ガスや粉塵などで迷惑をかけない
  • 職場環境:作業員が働きやすい環境づくりに努める

具体的な環境への配慮の例として、大気質指数[日々の大気汚染の状況を、健康影響(数時間から数日程度の時間スケールでの短期的な影響)の視点から市民にわかりやすく伝えるための指標。]を現場に提示します。

QCDとの違い

製造業をはじめ、IT業界などさまざまな業種で、上の3要素の頭文字を取った「QCD」という言葉が、昨今ではビジネス用語としても用いられています。「高品質な“もの”を、原価を抑えて、納期を遵守して作ることが重要」という意味です。

建設業界では、“もの”にあたるのが「建物」となります。ただし、建物を造る上ではプロジェクトごとに環境が変わり、危険を伴う場面も少なくありません。建築現場では「安全第一」と掲げ、近隣住民の協力なくして工事を進めることはできません。

よって、QCDにSafety(安全)、Environment(環境)の2要素を加えた「QCDSE」が建築業界で用いられるようになりました。QCDSEは、「高品質な建物を、原価を抑え、工期を遵守して、従業員の安全・環境に配慮して提供することが重要」ということを意味します。

優先順位

QCDの優先順位

製造業などにおけるQCDの優先順位は、並び順に、Quality(品質)を重要視する要素と考えられています。

  1. Quality(品質)
  2. Cost(原価)
  3. Delivery(工期)

QCDSEの優先順位

一般的に考えられている、施工管理におけるQCDSEの優先順位は、QCDと同様の並び順ではありません。

  1. Safety(安全)
  2. Environment(環境)
  3. Quality(品質)
  4. Cost(原価)
  5. Delivery(工期)

建設現場に、「安全第一」と掲示している通り、最優先すべきは安全に工事を進めることです。

現場の安全や周辺の安全を確保できない建物は、品質においても、原価や工期においても、よい建物にはなり得ないということです。

まとめ | 建設業の未来のために

「QCDSE」は建設業界において、品質、コスト、納期、安全、環境の要素を包括的に考慮する重要な要素です。これらの要素は、プロジェクトの成功、効率性、持続可能性に対して大きな影響を与えます。建設業界は、これらの要素をバランスよく管理し、持続可能なプロジェクトの実現に向け、鋭意努力しています。