グリーンAIとは | 地球環境問題をAIで解決

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著者:小日向

トレンドワード:グリーンAI

「グリーンAI」についてピックアップします。SDGsの考え方が広まりつつある中、地球環境をAIで解決するグリーンAIにも期待が集まっています。本記事では、グリーンAIの概要やメリット、具体的な事例についてご紹介していきます。

グリーンAIとは

グリーンAIとは、AIを活用して地球環境問題を解決する取り組みのことを指します。現在2050年カーボンニュートラルに向けて、脱炭素化に向けた取り組みが注目されています。

目標の達成には再生可能エネルギーの利用や循環経済の進展など、多くの変革が必要です。グリーンAIの技術を活用することで、効率的な運用が期待されているのです。

グリーンAIのメリット

具体的なグリーンAIのメリットとしては、下記が挙げられます。

  • エネルギー効率の向上
  • 持続可能な資源の管理
  • 環境問題への貢献
  • サステナビリティへの取り組み

グリーンAIは、省エネルギーのアルゴリズムや最適化技術を活用する取り組みです。AIがデータや環境条件を分析することで、電力消費を削減し環境への負荷を軽減します。

また、クラウドコンピューティングのリソース割り当てやデータセンターの冷却制御においてもAIが活躍します。リアルタイムに最適な設定を行うことで、不必要なリソースの浪費を防ぎます。

さらに、気候変動や環境問題への対策にも寄与します。たとえばグリーンAIを活用したエネルギー管理システムや交通制御システムは、エネルギーの効率的な利用や排出量の削減に貢献し、環境への影響を軽減します。

グリーンAIは、企業や組織が持続可能なビジネスモデルを構築するための一翼を担います。エネルギー効率の改善や環境への配慮をAIによって実現することで、企業のサステナビリティ戦略に役立つのです。

グリーンAIの課題・デメリット

一方で、グリーンAIには下記の課題やデメリットもあります。

  • データ収集とプライバシーの問題
  • 技術進化の必要
  • ビジネスモデルと経済性
  • 現実の複雑さへの対応

まず、グリーンAIの実現には高性能なハードウェアやデータセンターが必要となります。これに伴い、大規模なデータセンターの運用によるエネルギー消費や資源の使用が増加する可能性があります。

またグリーンAIでは、多くのデータ収集と解析が必要です。個人や組織のデータを収集することで、プライバシーの問題が発生する可能性があるでしょう。データの適切な管理と、セキュリティ対策が求められます。

AI技術やハードウェアの進化により、グリーンAIの実現には常に最新のテクノロジーへの対応が求められます。アップデートやアップグレードの必要性があり、コストやリソースの面が課題です。

さらにグリーンAIの導入や運用には、初期投資や運用コストがかかります。ビジネスモデルや経済性の観点から、「グリーンAIの導入が適切であるか、長期的な経済的メリットが得られるか」という点を慎重に評価する必要があります。

AIは現実の複雑な問題に対応する能力がありますが、完全な解決策を提供するわけではありません。地球環境には多くの要素が関係しているため、解決策の提示が難しい場合もあるでしょう。

グリーンAIの事例

ここでは、グリーンAIの事例についてご紹介していきます。

海洋調査

NECらは、AIによる画像認識技術を活用して「海水からマイクロプラスチックを計測するシステム」を開発しました。この技術は、海洋プラスチックごみの動態や環境への影響を評価するための手法として注目されています。

近年、大きさ5mm以下の微小なプラスチック粒子である「マイクロプラスチック」による海洋汚染が世界的に拡大しています。生態系への影響だけではなく、食物連鎖を通じた人体への悪影響も重大です。

汚染の実態を正確に把握するためには、各海域におけるマイクロプラスチックの数・大きさ・種類を分析することで流出源を推定し、流出経路・到達地を予測する必要があります。

このシステムでは、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」のディープラーニング技術を搭載した「RAPID機械学習」による画像認識技術が活用されています。これにより、従来まで手作業で行なってきたマイクロプラスチックの検出を、自動化・高精度化することが期待されています。

森林保護

日立ヴァンタラは、破壊が進む熱帯雨林の保護に向けてAI技術を用いたソリューションを提供しました。具体的には、樹上設置型のソーラーパネルで電力を補充する「ガーディアンズ」と呼ばれるモニタリングシステムを開発しています。

このシステムでは、広大な熱帯雨林が奏でる「音」を継続的に録音してクラウドに送信しています。AIと機械学習を使用して特定の音を解析し、広大な森林生態系で何が起こっているかを迅速に観察します。

潜在的に有害な行動を特定して、熱帯雨林の近くにいる現地パートナーや先住民族、地元の人々に、タイムリーに熱帯雨林への侵入者がいるとの警告を送り、森林伐採や野生動物の密猟を防ぐことを目指しています。

気象予報

大林組と大阪ガスは、「建設工事向けAI気象予測サービス」の開発に着手しています。

AI技術を用いた高精度な気象予測情報を建設現場で活用することで、安全で効率的な施工管理を支援することが目的です。

今後大阪・関西万博の開催予定地である「夢洲(ゆめしま)」にて、実証実験が行われる予定となっています。本件は、2022年12月の法改正で「気象予報士を介さない気象予測結果の提供」が可能となったことを活用した取り組みです。

建設工事では、「雨天時に屋外でのコンクリート打設工事を延期する」、「強風時にはクレーンによる荷揚げ作業を中止する」など、気象条件に合わせて工程を調整する必要があります。高精度でタイムリーなAI気象予測サービスの開発で、効率的な現場の運用が期待されるのです。

まとめ|グリーンAIで環境問題を解決

グリーンAIは、複雑な地球環境問題を解決するための手段として注目されています。限りある資源を有効に使い、自然と共に生きるためには欠かせないツールです。まだまだAIは発達途中の部分も多いですが、これからの活用が期待されます。