GNSS測量とは|手順やデメリットも

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著者:小日向

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「GNSS測量」についてピックアップします。センチメートル単位での高精度な測位が可能になり、自動運転など様々な技術に応用されています。本記事ではGNSSの概要やメリット・デメリット、主な手順についてご紹介していきます。

GNSS測量とは

GNSS測量とは、衛星を用いた測位システムのことを指します。「Global Navigation Satellite System」の頭文字を取った言葉で、読み方は「ジーエヌエスエス」です。

「測位システムと言えばGPS(ジーピーエス)」というイメージが広まっているかもしれませんが、じつはGPSはアメリカのGNSSの一種です。日本の「みちびき」は、QZSSと表記されます。

GNSS測量の種類

ここでは、代表的なGNSS測量の種類についてご紹介していきます。

①単独測位

単独測位は、衛星からの情報を「1台」のアンテナで受信する方法です。4個以上の衛星を用いることで、観測点の位置を決定します。

電波が届くまでの時間を測ることで、距離を推測します。ただし衛星の位置誤差や電波の遅れにより、「約10m」の誤差が発生するのが特徴です。主に船舶や飛行機、乗用車といった位置情報システムに活用されています。

②相対測位

相対測位は「2台以上」の受信機を使用して同時観測を行う方法です。それぞれの受信機に電波が届く時間差を計測し、相対的な位置関係を割り出します。

各受信機は同じ条件下で観測を行っているので、衛星の位置誤差や対流圏・電離層遅延量は相殺できます。そのため「100万分の1」の高い精度で位置関係が分かるのです。

③DGPS方式・RTK方式

DGPS(ディファレンシャルGPS)方式とRTK-GPS(リアルタイムキネマティックGPS)方式は、基準局と観測点で同時に観測を行う方式です。位置の分かっている基準局での観測データをリアルタイムに送信することで、観測点の位置を的確に求められます。

DGPSは両点で単独測位を行うのに対して、RTK-GPSは両点で位相測定を行うという違いがあります。どちらに関しても誤差は非常に少なく、DGPSは数m、RTK-GPSは数cmの誤差に収まるのが特徴です。

④ネットワーク型RTK測位

ネットワーク型RTK-GPS測量は、電子基準点のリアルタイム観測データ等を利用する方式です。これにより長距離基線の測量が可能になり、RTK-GPSと同様、誤差数㎝の精度が期待されます。

GNSS測量のメリット

GNSS測量の主なメリットは、下記が挙げられます。

  • 天候が悪くても計測できる
  • 設置場所を問わない

従来までの測量では、風雨など悪天候時には計測ができないことがありました。しかしGNSS測量では、天候に関係なくいつでも観測が可能になります。また高い建物があっても計測でき、山の上の三角点に行く必要もなくなりました。

GNSS測量のデメリット

GNSSは従来の測量に比べて誤差は少ないものの、ある程度誤差が生じるのがデメリットでしょう。「数センチの誤差なら問題ないのでは?」と思われるかもしれませんが、自動運転やドローンといった分野では事故に繋がる可能性があります。

マルチGNSSとは

マルチGNSSとは「多周波GNSS」とも呼ばれ、複数のGNSSを同時に使用する技術のことを指します。いくつかの衛星を活用することで、信頼性の向上や制度の改善が期待されています。

具体的には、自動運転、GIS、防災管理などの安全性に関わる分野で利用されています。

マルチGNSS測量の手順

ここでは国土交通省国土地理院によるマニュアルから、マルチGNSS測量の主な手順を抜粋してご紹介します。

  • 機器の点検及び調整
  • 観測の実施
  • 計算

①機器の点検及び調整

基線解析で統合処理を行う場合は「観測着手前及び全観測完了後の計 2回」GNSS 測量機(受信機本体)間の ISB(Inter System Bias)の推定を行い、ISB の差を点検します。ただし、観測に使用するGNSS 測量機(受信機本体)の機種が同じ場合は不要です。

②観測の実施

観測距離が10km以上の観測は、1級 GNSS 測量機により2周波又は3周波で行います。また観測距離が 10km未満の観測は、2級以上の性能を有する GNSS 測量機により1周波で行います。

③計算

計算結果の表示単位等は、次表のようになります。

気象要素の補正は、基線解析ソフトウェアで採用している標準大気に従います。また統合処理を行う基線解析では、GNSS 測量機(受信機本体)の機種が同じ場合を除きISB の補正を行います。

基線解析の固定点の緯度及び経度は、成果表の値または国土地理院が提供する地殻変動補正パラメータを使用してセミ・ダイナミック補正を行った値(以下「今期座標」という。)とします。

なお、セミ・ダイナミック補正に使用する地殻変動補正パラメータは、測量の実施時期に対応したものを使用します。以後の基線解析は、固定点の緯度及び経度を用いて求められた緯度及び経度を順次入力します。

基線解析の固定点の楕円体高は、成果表の標高とジオイド高から求めた値とし、元期座標又は今期座標とします。ただし、固定点が電子基準点の場合は、成果表の楕円体高又は今期座標とします。以後の基線解析は、固定点の楕円体高を用いて求められた楕円体高を順次入力します。

まとめ|GNSS測量の活用に期待

GNSS測量は衛星を利用した測位方法で、誤差が少なく精度が高いことで注目されています。今後自動運転やIoTが普及するにあたっては、さらに需要が高まることが期待されるでしょう。