グリーン・トランスフォーメーション(GX)をわかりやすく解説|事例やDXとの違い
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「GX(グリーントランスフォーメーション)」についてピックアップします。地球環境問題の重要性が高まっている中、経済・社会全体を巻き込んだ変革が求められています。本記事では、GXの意義や具体事例についてご紹介していきます。
GX(グリーントランスフォーメーション)とは
ここでは、GXの意味や定義についてご紹介していきます。
GXの概要
GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは、「化石燃料から再生可能エネルギーに転換するための変革」のことを指します。
近年地球温暖化が大きな問題となっており、その原因として「CO2等の温室効果ガス」が挙げられています。これを太陽光・風力・水素といったクリーンなエネルギーに置き換えることで、環境負荷の少ない社会を目指すという取り組みとなります。
これまで環境に優しい活動は「利益に直結しない」と企業から敬遠される傾向が見られていました。しかしGXでは、活動を「経済成長の機会」としても捉えているのが大きな意義です。
GXとDXの違い
DXとは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略語で、読み方は「ディーエックス」です。経済産業省では、DXを下記のように解釈しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
ただし明確な定義があるわけではなく、まだまだ発達段階の成長分野となっています。「DX」について詳しくは、下記記事をご覧ください。
GXの実現にはDXの技術が非常に重要であり、どちらも「変革をもたらす」という点が共通しています。しかしGXには「脱炭素」という明確な目的があるという違いがあります。
GX(グリーントランスフォーメーション)に関する国の取り組み
ここでは、日本でのGXに関する具体的な取り組みをまとめていきます。
①内閣官房|GX実行会議
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/index.html
GX実行会議は、2022年から始まった取り組みです。岸田首相を中心に外務大臣、財務大臣、環境大臣、有識者らによって構成されています。会議の主な議題は以下の2点です。
- エネルギーの安定供給の再構築に向けた方策
- 今後10年間のロードマップ作成
2022年12月には「GX実現に向けた基本方針(案)~今後 10 年を見据えたロードマップ~」が作成されました。GXは経済社会全体を巻き込んだ変革になり、国も「20兆円規模」の大胆な先行投資を行う意向を示しています。
②経済産業省|GXリーグ基本構想
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/GX-league/gxleague_concept_2.pdf
経済産業省は、「GX企業が産官学と協働する場」としてGXリーグを立ち上げました。世界で競争力を高めていくには「企業群」が変革を牽引する必要があり、経済社会システム全体の創造を行うことが求められています。
GXリーグ基本構想ついては、すでに440社の企業から賛同を得ています。さらに2023年4月からの本格稼働に向け、2月1日からは「GXリーグ参画企業」の募集を開始しています。
今後は排出量取引市場の価格安定化や、脱炭素への代替手段が存在しない産業分野への研究開発等を進めていく予定です。
GX(グリーントランスフォーメーション)の事例
ここでは、企業や自治体が行っているGXの具体事例についてご紹介していきます。
①浜松市|浜松市中小企業等グリーントランスフォーメーション支援補助金
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/sangyosomu/gx.html
浜松市では、2022年度に中小企業向けのGX支援を実施しました。原油価格や物価高騰の影響によるコスト増に直面している企業による「省エネに繋がる製品の購入」を促し、カーボンニュートラルに対応することを目的としています。
具体的には、CO2排出量等の見える化ができる「温室効果ガス排出量診断、空調等配管のエア漏れ点検等」で上限20万円、照明のLED化で上限50万円が補助されるといった内容です。
②東大(東京大学)|SPRING GX
https://www.cis-trans.jp/spring_gx/
東京大学では、2021年から「グリーントランスフォーメーション(GX)を先導する高度人材育成」プロジェクト(SPRING GX)を実施しています。これは全学の博士課程学生(4年制博士課程学生を含む)600名が参加するプロジェクトで、次世代研究者の挑戦的プログラムとして注目されています。
https://www.cis-trans.jp/spring_gx/
近年の傾向として「博士課程に進学すると生活の経済的見通しが立たない」、「博士課程修了後の就職が心配」という声が聞かれます。実際博士課程まで修了するとなると、最短での年齢は「27歳」です。
上記の理由から博士後期課程への進学者数は減少傾向にあり、優秀な人材が育たないという危機的状況に陥っています。そのため東京大学では高度スキル養成プログラムを開発し、将来社会で活躍できる「GX人材」の育成に取り組んでいるのです。
③大成建設|TAISEI Green Target 2050
https://www.taisei-sx.jp/environment/tgt/
大成建設では、経済産業省の「GXリーグ構想」に賛同を表明しています。
2050年を見据えた環境目標の「TAISEI Green Target 2050」では、2030年に売上高あたりのCO2排出量をスコープ1+2で50%削減、スコープ3で32%削減(2019年度比)、さらに2050年に事業活動によるCO2排出量実質ゼロを目指しています。
また環境配慮型コンクリートの開発・普及や、新築建物のZEB化・ZEH化技術の向上および既存建物をリニューアルによりZEB化する「グリーンリニューアル」といった取り組みも盛んです。こうした取り組みを通して、「企業活動と脱炭素化の両立」が図られています。
まとめ|GXで持続可能な社会の実現を
産業革命以来、石油や石炭といった化石燃料中心の社会が続いてきました。しかしGXにより「経済社会システム全体の変革」が実行されようとしています。脱炭素に向けた取り組みの影響は多方面に渡ると考えられ、今後の動きが注目されます。