久留米高専が技術の歴史をデジタルアーカイブ化!蒸気機関車3Ⅾモデルを作成

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建設DX

独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校(福岡県久留米市、校長:本庄春雄・研究担当者:機械工学科 助教 渡邊悠太 以下「久留米高専」)では、同校を支援するために設立された技術振興会組織「テクノネット久留米」(福岡県久留米市、会長:津福一宏)が行っている研究・開発シーズ育成奨励事業による支援を受け、「産業・技術遺産のデジタル・アーカイブ化」に取り組みました。

アーカイブ化された蒸気機関車模型

【取組みの背景】

図書館や博物館に収蔵されている文化財や資料、産業界において生み出された多くの歴史的な製品・装置・部品及びその設計図などを含めた「現物」は経年劣化が避けられません。また企業等においては、保管場所やコストなど問題からすべての製品等を保存・承継し、後世に伝えることは非常に難しいのが現状です。 こうした産業・技術遺産の永久的な保存を図るための手段として、「デジタル・アーカイブ」があります。デジタル・アーカイブとは、現物による保存では避けることができない経年劣化を電子データとして記録・保存することで劣化を無くし、保存・蓄積・複製が容易に行うことができる方法です。現在、大きな博物館などでは、インターネットなどを通じて時間的・距離的な制約を超えて広く公開ができる手法として様々な文化財や美術作品、学術資料のデジタル・アーカイブ化が進められています。

【取組みの概要】

蒸気機関車3Dモデル:内部の構造も確認できる 

産業界において生み出された技術遺産はその多くが企業によって保管されています。また、機構部品の摩耗や交換部品の生産終了など保全をめぐる諸問題を各企業で解決するのは難しい現状があります。
今回、久留米高専技術振興会「テクノネット久留米」による研究・開発シーズ育成奨励事業の支援を受け、地元中小企業に保管されている技術遺産の保全に活用できるよう、手軽なデジタル・アーカイブ化手法確立に取り組みました。今回のアーカイブ化の特徴は、技術遺産を対象とすることから機械の仕組みをコンピュータ上での再現を主眼としていることにあります。アーカイブ対象を現物ではなくその技術遺産において実現された仕組みとすることで、アニメーション・透過モデルによる解説やデジタルものづくり機器を利用した動作モデルの作成などデジタルデータの「必要に応じて編集を加えることができる」、「共有・複製が容易」といった特徴を生かすことができます。
アーカイブ化の第一歩として、久留米工業高等専門学校で長年展示に使用されてきた蒸気機関車模型を対象としました。この機関車模型は地元久留米で活躍した「からくり儀右衛門」こと田中久重が佐賀藩藩主・鍋島直正の命により製作した国産第一号蒸気機関車模型をモチーフとしています。機関車模型を分解・計測し、部品一つ一つをCADソフトウェアによりデジタルデータ化します。デジタルデータ化した部品をコンピュータ上で組み立てることで内部の構造や動作原理を確認することができる3Ⅾモデルとすることができました。

また、江戸時代の技術啓蒙書である「機巧図彙」(からくりずい)に記載された図面をもとに「品玉人形」というからくり人形の3Dモデル化にも取り組んでいます。品玉人形は手品をするからくり人形で枡を持った人形が床に置かれた小物に枡を伏せては持ち上げるという動作を繰り返すと小物が次々と変化します。「機巧図彙」の図面を参考に機構を考えながらコンピュータ上で設計をします。
3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタルものづくり機器での製作を前提とした設計とすることで、これらの機器があれば誰でもからくり人形を復元できるように目指しています。 

品玉人形機構解説 (国立国会図書館デジタルコレクションより)
機巧図彙に記載された品玉人形 (国立国会図書館デジタルコレクションより)
CAD上で再現された品玉人形機構部
3Dプリンターにより試作した機構部

【今後の展開】

今後、実働模型とデジタルデータによる解説動画をまとめ学習教材として活用していくとともに、テクノネット久留米会員の企業をはじめとした、地元企業等がデジタルアーガイブ化により、手軽に技術の保存・承継ができるようこの取り組みを広く公開して行きます。

【テクノネット久留米について】

テクノネット久留米ロゴ

所在地:福岡県久留米市小森野1-1-1 久留米工業高等専門学校内(事務局)
代表者:会長 津福一宏
設立:平成24年10月
事業内容:
福岡県久留米市・佐賀県鳥栖市地域の有志企業により、地域産業のさらなる発展、地域の人材の育成や地場産業の高度化、産業力強化のための研究開発の推進を期するため久留米高専と緊密な連携を図り、「人・知・物」的資源を地域に還元することを目的に平成24年10月に設立されました。 現在、法人会員(71社)と個人会員(3名)に加え、地方公共団体などの特別会員(14件)の88団体により構成され、久留米高専との共同研究や講演会のほか、学生向けの企業説明会なども開催しています。

【久留米工業高等専門学校について】

久留米高専

久留米工業高等専門学校は、昭和14年に設立された旧制の久留米高等工業学校まで遡り、その後九州大学に吸収されたのち、昭和33年に久留米工業短期大学を経て、国立高専の第3期校として昭和39年に創設されましたが、全国の高専に先駆けて、昭和41年3月に最初の卒業生を送り出しています。
教育理念である、自立の精神と創造性に富み、広い視野と豊かな心を兼ね備えた社会に貢献できる技術者の育成に努めています。

【学校概要】

会社名:独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校
所在地:福岡県久留米市小森野一丁目1番1号
代表者:本庄 春雄
設立:1964年
URL:https://www.kurume-nct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校・高等教育機関

【本リリースに関する報道お問い合わせ先】

久留米工業高等専門学校 総務課
TEL:0942-35-9333
e-mail:pi-staff.gad@on.kurume-nct.ac.jp