第1回:どうする?住宅の2025年法改正!「概論」|毎月20日更新

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著者:紺野 透

住宅関連の法改正施行まであと1年を切ってきました。そこでこれから6回にわたって、法改正の中身や変わる手続き方法、対策などについて解説していきたいと思います。

第1回目の今回は以下の項目について解説します。

▼そのほかの連載記事はこちら
第2回:どうする?住宅の2025年法改正!「4号特例の縮小と構造計算」
第3回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その①」
第4回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その②」
第5回:どうする?住宅の2025年法改正!「変わる建築確認申請」

建築基準法の改正

法改正の背景と概要 

まず、今回の法改正の背景にあることについて、国土交通省の資料によると、「2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向け、2021年10月、地球温暖化対策等の削減目標を強化」が挙げられています。目標として「建築物分野の省エネ対策の徹底、吸収源対策としての木材利用拡大等を通じ、脱炭素社会の実現に寄与。」とあります。

つまり、今回の法改正のベースにあるのは住宅分野の省エネと木材利用推進であることを理解しておく必要があります。この後に触れる4号特例縮小などの構造関係の改正も、根本にあるのは住宅分野の省エネ推進です。

「建築部門の省エネ推進→省エネ基準への適合→省エネ化に伴い重くなる建築物→それらの構造的な安全性を担保していく→4号特例の縮小」という流れです。

建築基準法の改正で変わること

この法改正で変わる主な項目は以下の通り。
1.建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し
2.階高の高い木造建築物等の増加を踏まえた構造安全性の検証法の合理化
3.中大規模建築物の木造化を促進する防火規定の合理化
4.部分的な木造化を促進する防火規定の合理化
5.既存建築ストックの省エネ化と併せて推進する集団規定の合理化
6.既存建築ストックの長寿命化に向けた規定の合理化

建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

ここでは「1.建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し」について解説していきますが、その前に4号特例について少しおさらいします。

4号建築物とは、以下の建物のことです。
・木造の小規模建築物、延べ面積500㎡以下
・2階建て以下・高さ13m・軒高9m以下

この条件を満たす建築物については、建築確認や完了検査を省略しても良いことになっているのがいわゆる「4号特例」です。今回の改訂では4号建築物というくくりそのものがなくなり、全ての住宅が「新2号」と「新3号」とに分類されることになります。

・「新2号」は木造平屋建てで200㎡以下のもの
・「新3号」は構造や広さ、階高に関係なく「新2号」以外の住宅全て

今回の法改正「1.建築確認、検査の対象となる建築物の規模の見直し」では、従来の4号特例として、不要であった建築確認、完了検査などが必要になるというものです。

出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

同時に建築確認申請の際、構造規程等の審査も必要になります。一般的な住宅の場合においても、実質的に壁量計算以上の計算が必ず必要になります。

(構造計算の詳細については第二回 <建築基準法と構造計算>で解説します。)

出典:国土交通省「建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し

建築物省エネ法の改正

建築物省エネ法で変わること

1.建築主の性能向上努力義務
2.建築士の説明努力義務
3.省エネ基準適合義務の対象拡大
4.適合性判定の手続き・審査
5.住宅トップランナー制度の拡充
6.エネルギー消費性能の表示制度
7.建築物再生可能エネルギー利用促進区域

このうち、1と2についてはいずれも努力義務です。
建築主は性能の向上に努めること、建築士は施主に省エネ性能についての説明をすることが努力義務として課せられるというものでこれは従前と変わりません。

出典:国土交通省「省エネ基準適合義務の対象拡大

 全ての建築物について省エネ基準適合が義務に

出典:国土交通省「省エネ基準適合義務の対象拡大

 
ここでの一番のトピックは、「3.省エネ基準適合義務の対象拡大」です。
現在、非住宅については300㎡以上が基準適合義務対象で、住宅は300㎡以上であっても基準適合そのものは義務ではなく、届出や説明の義務のみが課せられている状態です。例えば400~500㎡の木造賃貸住宅(共同住宅)は省エネ基準適合の対象外で、届出だけが義務になっています。
一般的な住宅についても同じで、省エネ基準に適合すること自体は義務ではなく、施主に省エネ性能を説明することだけが義務であるという、少々中途半端な状態です。

改正後はこれらの中規模集合住宅や一般的な戸建て住宅にも全て省エネ基準への適合義務が課せられることとなり、省エネ基準に適合していない建物については建築許可が下りないこととなります。
構造同様、確認申請の段階で裏付けとなる計算書等が必要になってきます。

(省エネ基準への適合義務等詳細については第三回以降の記事でお伝えします)

まとめ

  • 2025年住宅をめぐる法改正の背景には建築物関連の省エネ推進がある
  • 改正は建築基準法と建築物省エネ法の大きく2種類がある
  • 基準法による改正は4号特例の縮小と構造計算の要件化
  • 建築物省エネ法では全ての建築物について基準への適合が義務になる

今回は住宅をめぐる建築基準法と建築物省エネ法の改正についての概要を解説しました。
次回以降、それぞれの中身について詳しくお届けしていきます。

第2回の記事「4号特例の縮小と構造計算」こちらからお読みいただけます。

参考URL

国土交通省ホームページ
建築確認・検査の対象となる建築物の規模等の見直し
省エネ基準適合義務の対象拡大