セーフルームとは。住宅の新しいトレンドになるか?

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住宅業界では、カーボンニュートラルの実現のため、エネルギー消費量やCO2を抑える取り組みが政府主導で行われています。省エネ基準法やZEH基準(水準)の義務化などは、業界全体で対応しなければならない課題です。

では、将来的に断熱性やエネルギー消費量の観点から、住宅の性能を変える必要がある点に関連して、セキュリティに対する基準を高める必要はないのでしょうか。顧客のニーズとしても、日本の犯罪率は減少傾向にあるとしてもいつでも空き巣や不法侵入に備えなければなりません。

また、災害時でも住宅がエネルギーを創れる環境が求められているため、災害に耐えたうえで生活できる環境が必須となりつつあります。

そこで、今回は防犯と災害時の利用に役立つセーフルームの概要や今後広がるかどうかの予想についてみていきましょう。

「トレンドワード:セーフルーム」

セーフルームとは、シェルターの役割を担う緊急時に避難できる部屋を意味します。たとえば、セーフルームの扉は工具を使った破壊やこじ開けに耐えられ、耐震災害時には食糧庫として使用するなどといった使い方が可能です。

現状では、大手企業によって分譲住宅の一室をセーフルームにした住宅の販売が開始されたことから、今後住宅業界に広がっていくと想定されます。これまで、代表的な家のセキュリティに関しては次のような手段がありました。

  • 玄関や裏口のキーをディンプルキーや電子錠にする
  • 防犯ガラスに交換したり防犯フィルムを貼る
  • AIカメラや監視カメラを使用する

家を販売・施工する段階でセキュリティ対策を行うのではなく、後付けで交換する・取り付ける方法が主体だったといえるでしょう。対して、セーフルームは後付けではなく、住宅を設計する段階で組み込むため、セキュリティを意識する顧客のニーズに答えやすくなります。

セーフルームを使用が想定されるケース

セーフルームが使用される場合は、次のようなケースが考えられます。

  • 不法侵入(強盗)
  • 災害の発生時
  • 貴重品の預け場所(普段の生活に使用する)

セーフルームはいざというときに使用できるだけでなく、環境として機能性が高いことから、普段から使用することも可能です。わざわざ使用しないスペースを作るのではなく、普段から使用するスペースをセーフルームの中に作るといった設計も大切です。

セーフルームの普及率

ここでは、セーフルームの普及率についてみていきましょう。セーフルームは、海外であれば、核シェルターやパニックルームとして扱われており、一定の人気がある状況です。ただし、海外の場合は核のみでなく、防弾・防爆仕様となっているため、環境が日本と大きく異なるといえます。

日本

日本のセーフルームの普及率は0.02%です。核シェルターも含めて、シェルターの設置義務がなく、犯罪に対するセキュリティ意識も顧客によっては低い状況にあります。しかし、災害の発生率は年々増加しており、今後もその傾向は変わらないといえるでしょう、

つまり、セーフルームに関しては、ほとんどの人が導入の必要性に気付いていないものの、大手企業が住宅に対して組み込んでいくことで、認知が広がると想定されます。

そのため、セーフルームに着目する顧客は今後増えていくでしょう。

海外

スイスやイスラエル、アメリカなどは8割以上の人々が核シェルターを含めたセーフルームを自宅に設置しています。個人だけでなく、病院・公共施設など様々な場所に設置されており、法律で義務付けられている国も少なくありません。

セーフルームに関しても日本より導入が進んでいる国が多く、非常に高額なセーフルームの販売が行われてるケースも過去にありました。そのため、今後も庭にシェルターを設置したうえで、セーフルームを作っておくといった傾向は変わらないといえるでしょう。

セーフルームは今後日本でも普及する?

ここではセーフルームは、今後日本でも普及するかどうかについてみていきましょう。現状では、シェルターを含めたセーフルームの一般家庭の導入率は0.02%です。しかし、政府としての導入支援があった場合や住宅業界として、設置がトレンドとなった場合には導入率は向上すると判断されます。

また、警察庁の「令和5年の犯罪情勢」では、刑法犯認知数は70万3,351件となっています。今後の傾向は読めないものの、セキュリティに対してのニーズが顧客側で高くなっていく可能性もあるでしょう。

物理的な侵入を阻めるだけではない効果がある

セーフルームは、住宅の室内の中でも壁や素材を工夫することで、物理的な強度をあげることが可能です。そのため、セキュリティだけでなく、過ごしやすい空間として使用できる環境を作りやすいといえるでしょう。部屋の配置なども工夫することであらゆる災害の影響を低減できる可能性が高まります。

たとえば、地震や火事、洪水など全てに対応することは難しいものの、地域によっては発生確率が高いと推定されるものものあるため、優先順位を決めることも大切です。

今後、日本の傾向として災害が増加していく可能性が高いことから、セーフルームのニーズも将来的に高まっていくでしょう。

IoTやAI、防犯カメラとの連携が望める

セーフルームは室内が通常よりも強固な仕様となることから、IoTやAI、防犯カメラと連携も考えられるでしょう。たとえば、扉を開く人物を判別し、場合によってはすぐに通報したり、ホームセキュリティサービスと連携したりする方法も想定されます。

現状は、セーフルームの普及率が低く、他の機器や技術との連携は今後研究されていく可能性があります。そうなった場合、顧客も暮らしやすくなるでしょう。

まとめ

セーフルームは、シェルターの役割を担う緊急時に避難できる部屋を意味します。仕様として、壁や扉が通常の部屋よりも仕様として、強度が強いことから、不法侵入や災害に対応可能です。

また、セーフルームの普及率は低いものの、海外の状況や災害の発生率から、今後は高くなっていく可能性もあります。大企業がセーフルームを設置したことをきっかけに広がっていくケースもあるため、今後も注目していきましょう。