第5回 どうする?住宅の2025年法改正!「変わる建築確認申請」|毎月20日更新

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著者:紺野 透

来年の4月に控えた住宅の法改正について解説する「どうする?住宅の2025年法改正」。第5回目の今回は「変わる建築確認申請」です。

▼そのほかの連載記事はこちら
第1回:どうする?住宅の2025年法改正!「概論」
第2回:どうする?住宅の2025年法改正!「4号特例の縮小と構造計算」
第3回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その①」
第4回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その②」

住宅も省エネ適判が必要になる!?

確認申請時、必要になる手続きとは?

これまで、省エネの適合判定が不要であった「旧4号建築物」(2階建て且つ500㎡以下の建築物、一般的な住宅はこれにあたる)が2025年4月からは「新2号建築物」となり、適合判定の除外規定がなくなり、その対象になることはこれまで述べてきた通りです。
※詳しくは第1回どうする?住宅の2025年法改正!「概論」をご参照ください。

出展:国土交通省,2階建ての木造一戸建て住宅 (軸組構法) 等の – 確認申請・審査マニュアル,P4

実際には以下のように、建築確認申請時に同時に省エネ適合判定を受ける形となります。

出展:国土交通省,【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について

提出先は建築主事か指定確認検査機関となります。
建築主事に申請の場合、申請に前後して、あらかじめ省エネの適合判定が可能な判定機関で適合判定を受けておく必要があります。

指定確認検査機関と省エネの適合判定機関が同じ会社である場合、必ずしも事前に省エネ適合判定を受けておく必要はありませんが、適合判定に時間がかかることを想定して、早めに対応されることをお勧めいたします。

いずれにしろ、これまでの建築確認申請手続きに加えて、省エネの適合判定が加わります。適合判定が下りないことには確認済証も発行されませんので時間的な事も含め、注意が必要です。(※2025年4月着工物件はそれ以前に適合判定と確認申請が必要)

外注?内製?体制を整える

省エネの適合判定では、外皮計算と一次エネルギー消費量計算の両方が必要となります。

▼詳しくは以下の記事をご覧ください。
第3回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その①」
第4回:どうする?住宅の2025年法改正!「建築物省エネ法と省エネ計算・その②」

外皮で地域基準UA値を下回ること、一次エネルギー消費量計算ではBEI  < 1であることがその条件です。

出典:国土交通省,省エネ性能に係る 基準と計算方法(テキスト),P13

外皮計算は設計CADソフトにその機能が附属している、あるいは外皮計算の専用ソフトを用いる以外は、断熱材や窓の性能値、設備の仕様などをひとつひとつ拾って入力しなければなりません。

国で公開している「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」においてもそれは同じで、ある程度の予備知識と慣れがないとかなりの時間を要することになります。

一次エネルギー消費量計算は公開されているWebプログラムであり、誰でも無料で使えるのですが、はじめに住宅の外皮性能(UA値、ηAC値、ηAH値)を入力しなければならず、外皮計算が済んでいる事が前提です。

このように2025年以降の手続き(確認申請の際、省エネ適判が必要で、適判には省エネ計算が必要)を考えると、受注が決定し、図面が固まる前後で既に省エネ計算をはじめられるような流れができていると安心です。
また、審査機関での省エネ適合判定に時間がかかる(※➀2週間以内、改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料 Q&A質疑応答集 1-7省エネ適判の8番目)ことを見込んだスケジューリングとともに外注か内製かの判断も必要になってきそうです。

※➀参考:「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第 69 号)に係る質疑応答集(令和6年 10 月9日時点)」のQ&A集PDFの16枚目上段より

省エネ適判が免除になる裏技とは 

仕様基準を用いた省エネ計算

これまで述べた省エネ計算は標準計算による場合のケースですが、仕様基準を用いた省エネ計算の場合、確認申請時の省エネ計算を省略できます。

出典:国土交通省,【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について

仕様基準は屋根・外壁・床など外皮それぞれの部位の断熱材の種類と厚さから熱抵抗値を計算し、それらが基準値を下回ることによって基準適合とみなされる基準です。部位の面積を拾う必要がなく基準適合か否かのみを判断する簡易なものです。

出典:国土交通省,木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4~7地域版),P3

規格住宅や分譲住宅、あるいはいつも採用する断熱や窓の仕様が決まっている場合などでは、毎回標準計算をする必要がなく、手間が省けて適合判定も不要なので重宝するものと考えられます。

仕様基準のメリットとデメリット

仕様基準のメリット

適判不要な仕様基準のメリットについては、上述の通り適合判定が免除される他、「住宅性能評価」「BELS」「長期優良住宅」「低炭素住宅」「フラット35」「住宅ローン減税」等の申請図書の一部としても活用することが可能です。

出典:国土交通省,仕様基準チラシ,P2より一部抜粋

仕様基準のデメリット

一方、デメリットとして、以下の2点が挙げられます。
①部位によって一部分でも弱い(不適)箇所があると全体として不適合。
②省エネ基準に対して適/不適だけの結果であり、具体的な数値は出ない。

国土交通省,木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4~7地域版),P5

例えば、屋根の熱抵抗値について「R≧4.6」とあります。この場合、高性能グラスウール16k90+90mmで4.8とありますので、グラスウールなら180mm以上あればクリアできます。
もし、他の部位全てがクリアできていたとしても屋根で高性能グラスウール16kで180mm以上取れない段階で、基準不適合となってしまいます。各部位でそれぞれ基準となる数値が設定されていますが、どれか一つでもこの数値をクリアできないと不適合となり、全体で仕様基準をクリアできないことになります。まんべんなく最低限以上の性能を持たせていることが条件となります。

国土交通省,木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック(4~7地域版),P4

もう一つのデメリットです。仕様基準の最終的な判断は右下にある「省エネ基準適否」だけであり、実際のその住宅のUA値や一次エネルギー消費量のBEIの数値の表記はありません。認定や補助金制度申請の場合は数値を明確に出す必要がありますので、別途標準計算が必要なのではと見ています。(2024年10月現在明確な指針がありません。)

その他適合判定が不要なケース

仕様基準を用いた計算で省エネ性能を証明する以外に、以下の場合も適合判定が不要です。
①住宅設計性能評価を受けた住宅
②長期優良住宅の認定を受けた住宅
適判不要にはなりますが、構造計算を伴なったり、性能のハードルが上がったりと、手続きを簡略化する目的としてはナンセンスです。

一方で、同じ審査機関で省エネ適合判定とBELSを受ける場合、BELS審査が簡略化されたり、適判通知書でフラット35の審査を省略することも可能になるなどの措置がありますのでこちらは視野に入れておくとよいでしょう。

国土交通省,建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料,P74

まとめ

・確認申請と並行して(前もって)省エネ適判手続きが必要になります。
・省エネ計算と適判手続きのための体制を考えておく必要があります。
・仕様基準なら省エネ適判不要で各種申請図書の一部としても使えます。
・審査機関が同一ならBELSやフラット手続きの合理化あり。

いかがでしたでしょうか。
今回は新たに始まる住宅の省エネ適判と仕様基準について解説しました。

次回は最終回「そして変わる住宅のクオリティ」です。

参考資料

国土交通省,建築物省エネ法のページ,資料ライブラリー
国土交通省,建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料
一般社団法人,住宅性能評価・表示協会