第2回:どうする?住宅の2025年法改正!「4号特例の縮小と構造計算」|毎週30日更新
来年の4月に控えた住宅の法改正について解説する「どうする?住宅の2025年法改正」。第2回目の今回は4号特例の縮小と構造計算について述べていきます。
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目次
4号特例の縮小で何がどう変わる?
まず、4号特例の縮小について説明する前に、四号建築物と4号特例が何かについて知っておく必要があります。
■4号建築物とは?
建築基準法で定める建築物には種類があります。
・1号 特殊建築物(映画館、病院、ホテルなど用途に供する部分が100㎡超)
・2号 一定規模以上の木造建築物(3階以上で延面積500㎡超、高さ13m又は軒9m超)
・3号 一定規模以上の木造以外の建築物(2階以上で延面積が200㎡超)
・4号 1~3号以外の建物
一般的な2階建ての住宅は4号建築物に該当します。
■4号特例とは?
「2階建て以下の木造建築物等(いわゆる4号建築物)について、建築士が設計を行った場 合に構造耐力関係規程等の審査を省略する]という建築確認及び検査に係る特例のこと。
建築確認や検査の際必要な構造関連の審査が4号建築物については不要であるというもので、結果として一般的な住宅において構造計算までするというケースは稀になっていたという背景があります。
4号特例の縮小とは
2025年4月の法施行により4号建築物というカテゴリーそのものが廃止され、住宅は以下の2つの種類に分類されることになります。
・新2号(木造2階建てと木造平屋建て200㎡超)
・新3号(木造平屋建て200㎡以下)
そしてこれまで通り構造審査が不要なのはこの新3号建築物だけとなり、新2号建築物に ついては建築確認及び検査における構造関係規定の審査が必要になります。
つまり、今まで不要だった一般的な木造2階建ての住宅における構造計算が、2025年4月からは必要になります。
このことを称して「4号特例の廃止や縮小」と言います。
R2年の法改正で構造計算書等の保存は義務にはなっていたけれど
2020年3月の建築士法の改正で、それまで不要であった構造計算に係る図書の保存が義務付けられるようになりました。4号建築物も例外ではなく、名目上一般的な木造住宅でも構造計算がなされ、その図書は15年間保存されることになっています。(下図参照)
但し、これはあくまでも建築士事務所が自身で保存する義務であって、対外的に何らかの報告の義務はありません。つまり構造計算をしていなくてもそれが明らかになることはない性善説の制度であったとも言えます。
今回の改正では建築確認申請と検査時に構造計算審査が義務になりますので、保存はもちろんのこと、実際に行政や第三者認証機関に提出して審査を受けることが義務になるというものです。
確認申請で必要な構造計算とは
来年の改正では構造計算に関わる規定もいくつか改正されます。
①必要壁量の基準
②存在壁量の基準
③柱の小径の基準
④構造計算対象の見直し
⑤小規模伝統的木造建築物等の合理化
⑥住宅の採光規定の見直し
このうち①から③については表計算ソフトや早見表などで確認ができる設計支援ツールが既にリリースされていて、こちらである程度の対応が可能になっています。(1年間は現行の壁量基準も引き続き使用可能です。)
④の構造計算対象は以下の図にある通り、建物の高さと面積の範囲が拡大されました。
同時に二級建築士の業務も高さ16m以下、階数3以下に改正されます。
では、一般的な木造二階建ての住宅で実際の確認申請時にどのような計算が必要になってくるのかを見てみます。・「仕様規定」が必要→高さ16m以下300㎡以下の1~2階建て
「簡易な構造計算」が必要→高さ16m以下の300㎡超の1~2階建てと3階建て
「高度な構造計算」が必要→4階建て以上
計算対象の規模の分類では一般的な2階建ての木造住宅は「仕様規定」で良いことになります。
「仕様規定」は以下の3つの計算と8つの仕様ルールで構成されます。
■3つの計算(①壁量計算②四分割法③N値計算法)
■8つの仕様ルール
・基礎の仕様
・屋根ふき材等の緊結
・土台と基礎の緊結
・柱の小径等
・横架材の欠込み
・筋かいの仕様
・火打材等の設置
・部材の品質と耐久性の確認
3つの計算と8つのルールを網羅した状態で、確認申請時の必要図書は以下の図をご参照ください。
先に述べた設計支援ツールを活用して壁量計算。あとは壁配置バランスを四分割法、柱頭柱脚をN値計算or告示で対応できれば申請図書の対応はできそうです。その他、300㎡以上や3階建て以上の仕様規定以外では以下の構造計算があり、許容応力度計算を含むものになっていきますが、ここでは説明を割愛いたします。
・簡易な構造計算(ルート1、許容応力度計算)
・高度な構造計算(ルート2、許容応力度等計算、ルート3、保有水平耐力計算、ルート4、限界耐力計算)
構造計算は何のため?
これまで述べてきた構造計算については建築基準法に係る部分で、確認申請の際、実際に詳細の確認が必要になる部分ですが、一方で住宅性能表示や長期優良住宅などの耐震等級の観点から構造計算のレベルを検討する必要があります。
耐震等級の経緯と中身とは
「耐震基準」と「耐震等級」
「耐震基準」は建築基準法や建築基準法施工令に則って定められた、建築する建物が最低限満たすべき地震への耐性基準のことです。旧耐震基準は震度5までを想定した1950年(昭和25年)から1981年(昭和56年)までの基準で、新耐震基準は1981年以降のものです。その後、阪神淡路大震災1995年(平成7年)を経た2000年(平成12年)の改正での新耐震基準は震度6〜7を想定しています。
そして「耐震等級」は2001年(平成13年)に品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で規程されました。
品確法以降は住宅についての性能評価(設計と建設)が行われるようになり、構造・火災・劣化・維持管理・温熱・空気・光・音・高齢者配慮・防犯の項目において評価が行われ、供給側とユーザーとで情報を共有し、品質を担保できるようになりました。
このように、地震対策としての耐震基準や耐震等級は大きな地震がある度、改正が加えられ今日に至ります。
構造計算と耐震等級と長期優良住宅
構造計算は建築基準法で定められたもの、耐震等級は品確法で定められた基準です。
耐震等級1 基準法上の最低ライン、震度6強の地震で傾くが、倒壊しない
耐震等級2 等級1の1.25倍の地震に耐えられる
耐震等級3 等級1の1.5倍の地震に耐えられる
耐震等級1は建築基準法の「仕様規定」(前述3つの仕様と8つのルール)で設計されます。
耐震等級2〜3においては「仕様規定」とは別に「性能表示計算」または「許容応力度計算」が必要になります。
「性能表示計算」は仕様規定に加え、床・屋根倍率の確認、床倍率に応じた横架材接合部の倍率チェックが加わります。性能表示計算による計算では耐震等級2以上が保証され、長期優良住宅の条件を満たすことになります。
「許容応力度計算」は柱や梁全ての部材において応力を計算します。
そして、長期優良住宅の要件については2016年(平成28年)の熊本地震を受け、2022年(令和4年)に改正があり、一般的な2階建ての木造住宅では壁量計算である場合、耐震等級3が求められるようになりました。もしくは許容応力度計算をする等級2が必要ということになります。
したがって、シンプルに建築確認許可を得る場合、構造計算は仕様規定レベルで良いのですが、耐震等級を求められる長期優良住宅や今後のZEH等では実質的に許容応力度計算を含む構造計算を視野に入れておかなければなりません。
まとめ
・4号特例縮小により、木造2階建ての建築でも構造計算が必要になります。
・但し、一般的な木造2階建ての住宅で義務となる必要な計算は「仕様規定」です。
・地震対策には「耐震基準」と「耐震等級」があります。
・令和4年から長期優良住宅で必要な耐震レベルは「耐震等級3」へ。
いかがでしたでしょうか。
複雑な構造計算と耐震関連の法律ですが、その時々の地震や今後の住宅の高性能、高重量化に対応し、必要に応じて法律もアップデートされていった結果となっています。必要な計算、手続きを整理して来年以降の実務を合理的に進めていけますよう、引き続き情報をご提供してまいります。
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参考資料
<参考URL>
・国土交通省|建築省エネ法 資料ライブラリー
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/04.html
・国土交通省|申請・審査マニュアル(ダイジェスト版)
https://www.mlit.go.jp/common/001627104.pdf
・国土交通省|長期優良住宅のページ
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000006.html