デジタル技術で社会的弱者の防災を目指す|UNDPとJBPによるデジタル防災共同イニシアティブを完了

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国連開発計画(以下UNDP)と日本防災プラットフォーム(以下JBP)は、このほど、自然災害や気候変動の影響に対して脆弱な人々の災害対応力を高めるための共同イニシアティブの成果報告会を実施しました。この共同イニシアティブは、日本政府の資金提供による「DXと防災(DX4Resilience)」地域プロジェクトのもと、UNDPとJBPとの共創活動を通じてネパール、フィリピン、スリランカにおける包摂的な早期警報システム実現を支援する革新的なデジタル防災ソリューションの特定を目的として、2021年10月から2022年3月までの6か月間実施されたものです。

概要

UNDPとJBPとの協力及び共同イニシアティブの詳細については、UNDP/JBPのパートナーシップ発表にアクセスしてください。https://www.bosai-jp.org/ja/news/detail/254

2021年10月の共同イニシアティブ開始以来、JBPとUNDPは対象国政府関係者と協力して一連のコンサルテーションをオンラインで実施し、各国において社会的弱者層が直面する具体的なニーズや技術的な課題の理解と分析を行いました。

「他の開発プロジェクトでは、防災課題に対する現地ニーズの検討・特定のプロセスと解決策(ソリューション)の提案・実施とのプロセスとが別々になされることが多く、民間企業は、そのニーズが防災課題の根本的原因を真に反映したものであるかどうかにかかわらず、既に特定されたニーズに従って解決策を提案することがままあります。しかし今回は、対象国におけるニーズの把握・分析についてUNDPや現地関係者と何度もオンライン協議を行い、現地の防災課題の根本的原因や真のニーズは何なのかを定義するところから一緒に取り組むことで、最適な解決策を導くための情報を正しく整理し、それに基づいて提案を行うことができました。」と、JBPのアサインメントチームリーダーである豊田高士は述べています。

災害に強い社会を実現する7つのデジタル防災ソリューション

2022年3月29日にオンラインで実施された成果報告会では、共創活動の成果として選定された7つのデジタル防災ソリューションを、ネパール、フィリピン、スリランカ、日本各国及び「DXと防災」地域プロジェクトの関係者に紹介し、民間企業によるデジタルテクノロジーがいかに途上国の災害リスクを軽減できるかを示しました。

成果報告会では各国の関係者が提案されたソリューションや今回の共同イニシアティブについて所感を述べ、参会者と意見を共有しました。

例えば、2021年12月中旬の台風オデットによる被害と損失からの復興途上にあるフィリピンの関係者は、これらのソリューションの提案を特別な関心をもって歓迎しました。「私は今回の共同イニシアティブによる共創活動で提案されたソリューションに感銘を受けました。現在、フィリピンは台風オデットの対応と復旧のためのソリューションを模索しており、今回のパートナーシップで特定されたソリューションは災害復興プロジェクトを設計するうえで貴重な検討材料となります」と、UNDPフィリピン気候行動プログラムのFloradema C. Eleazar氏は述べています。

災害に強い社会を実現するための新しいテクノロジーの開発は民間企業が中心となって進めています。スリランカ災害管理センター長のAnoja Seneviratne氏は、スリランカではデジタル化が災害への備えを強化する一つの柱となっていると述べたうえで、「民間企業は、自社のハイテクソリューションについて、現地のニーズ、持続可能なサービス提供、各国固有の早期警報システムをどのように改善できるかなどをよく理解する必要があります」と発言しました。

今回の共創活動で選定された7つのデジタルソリューションは以下の通りです。

1. 建設技研インターナショナルの「RisKma」と日本工営の「防災プラットフォーム“防すけ”」は、近年頻発しているゲリラ豪雨や集中豪雨による災害の防止を目的として洪水リスク情報をリアルタイムで提供しています。

2. アジア航測の「Alandis+」はオープンソース技術をベースに構築されたWebGISで、リアルタイムに地図ベースの情報を行政機関及び、住民に提供します。

3. 理経の「顔認証による自動受付システム」は顔認証技術により、各避難施設に避難している被災者の安否確認他避難のプロセスをデジタル化します。

4. ウェザーニューズの「AIチャットボット」は、防災自分情報に基づき、災害弱者を含む一人ひとりに最適な防災情報を提供するとともに、市民と自治体などの災害対応機関との情報格差を解消するAIベースの災害対策用チャットボットです。

5. TOAの「緊急災害速報システム用ロングレンジスピーカー」は、早期警戒システム用の高性能ロングレンジスピーカーです。従来のものより2~3倍の音声伝達距離を実現し、周辺には優しく、遠方ではクリアな音質の音声を届かせることができます。

6. DiBEGによる「デジタルTVシステムによる防災情報」は、災害弱者が多く住む地域でデジタルTVを活用し効率的にコミュニケーションを図ることができます。

より強靭な未来を共に創る

JBPの西口 代表理事が強調したのは、共通のプロセスを作ることの重要性でした。「正しい解決策を提供するためには、正しく問題を特定し、初期の段階から様々な立場やグループの人々と協力する必要があります。このような共創活動を通じて、共に知恵を出しあうことによって、人智を超えた災害から命を救うことができるのです。」

ネパールは標高の高い山々が多く、地震に脆弱な国として知られていますが、効果的な早期警報システムは特に重要です。「ネパールの早期警報システムの強化には、特に最も脆弱なコミュニティに確実に届くようにするために、革新的技術やソリューションがおおいに求められています。」と、UNDPネパール事務所防災チームのVijaya Singh氏は述べました。

持続可能で包摂的、そして強靭な未来を創造する共感力

今回の共同イニシアティブは、JBPの会員企業にとって各国が抱える課題を議論し、適切な課題定義を行い、最も適切な解決策を共創する貴重な機会となりました。特に、災害時に取り残されがちな社会的弱者に焦点を当て、その対策を検討する機会は非常に貴重なものでした。

今回はコロナ禍の影響のためにオンラインでの作業となりましたが、最も脆弱な人々の災害に対する回復力を高め、現地の課題や既存の早期警報システム(EWS)より即応した持続可能な開発に向けたより良い提案をするために、JBPは現地における対面での共創作業の重要性も強調しています。JBP副代表の有山 聡 氏は、「現地の状況を実際に見て、触れて、感じ、関係者と会い、共感することで、ニーズをよりよく理解し、最も弱い立場にある人々の災害への耐性をより向上させることができる」と述べています。

3月に実施された成果報告会には、政府関係者、UNDP、JICA、JBPの会員企業など、プロジェクト対象国及び日本の主要な関係者が参加し、社会的弱者と呼ばれる人々が抱える課題やニーズに対応するためのデジタル防災ソリューションを紹介し、議論しました。

イベントのVideo(YouTube)はこちらからご覧いただけます。
https://youtu.be/IP_aE2hi3w0

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日本防災プラットフォーム(JBP)について

JBPは、民間主体・産官学連携の防災プラットフォームです。国内外の災害による被害を削減することに、企業が事業を通して貢献することを推進しており、多種多様な防災技術と、国内外における活動実績を有する企業/団体が約100社・団体所属しています。

JBPと​​国際機関との連携
海外に日本の防災技術を紹介していくためには、世界の防災の取組の潮流を知り、その流れの中でアプローチしていくことが欠かせません。JBPはUNDRR(国連防災機関)、UNDP(国連開発計画)、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関と綿密に連携しています。また、国際会合等で技術面での貢献を示すとともに、多くの国の防災関係者とのネットワークを築いています。

一般社団法人 日本防災プラットフォーム https://www.bosai-jp.org/ja/
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国連開発計画(UNDP):https://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home.html