清水建設、BIMで原子力発電所建屋の設計業務を効率化
清水建設(株)<社長 井上和幸>はこのほど、原子力発電所建屋の構造設計業務の効率化に向け、BIMをベースとする設計業務統合システム「NuDIS-BIM(Nuclear Design Integration System on BIM)」を開発しました。今後、設計の上流段階からシステムを適用し設計期間の短縮を図ります。
概要
原子力発電所建屋の構造設計業務は、システム化が進んでいるものの、構造技術者の知見に頼る部分が多く、システムへのデータ入力やヒューマンエラーを回避するためのチェックなどに膨大な手間と時間を要しています。また、原子力発電所建屋は巨大かつ複雑な形状をした部材で構成されており、多くの設計プロセスを経るものの設計データが非連動で、しかも2次元の設計データ上で各種の検討が重ねられています。
NuDIS-BIMはこうした課題のソリューションであり、BIMを活用して一連の設計業務をデータ連動させ効率化しています。具体的には、設備機器・配管と建屋構造体の干渉検知、構造部材である壁・床・柱・梁の配置と断面スケールの最適化、構造解析モデルの自動構築、部材の配筋検討、建屋構造設計図面のアウトプットを、自動で行う各システムをデータ連動・統合しています。いずれのシステムもBIMの構造モデル上で稼働します。
NuDIS-BIMを適用した設計では、最初に機電メーカーがBIM上で設備機器配置計画図を作成するとともに、建屋の躯体形状や必要な放射線遮蔽性能を提示。次に当社の技術者が同じBIM上で、床、柱、梁などの配置や大きさ等の構造計画の妥当性、設備と躯体の干渉の有無を検証し、構造BIMモデルの形状を確定。続いて、構造BIMモデルのデータを解析用の3次元モデルに自動変換し、地震応答解析などの本解析により建屋の構造安全性を検証。最後に解析結果から求めた必要な鉄筋本数等の部材断面情報を構造BIMモデルにフィードバックすることで、建屋の構造BIMモデルが完成します。完成したモデルからは構造躯体図(平面図・断面図)・配筋リスト等の構造図を自由にアウトプットできます。こうしたデータ連動により、原子力発電所建屋の設計期間を約2ヶ月、10%程度短縮できる見込みです。
なお、開発にあたっては、原子力発電所建屋の特徴である部材断面が非常に大きく、複雑な開口を有する壁・床などの構造特性を反映した構造解析モデルの自動構築がポイントになりました。建屋の構造解析では、壁、床、柱、梁などの各要素間の構造的な連続性の担保など、これまで構造技術者が解析モデル構築時に検討してきた事項のデータベース化を進め、構造解析モデルを自動構築するアルゴリズムを完成させました。
当社は今後、NuDIS-BIMの機能を拡充し施工・維持管理業務への適用を図るとともに、クリーンなエネルギー施設の建設を通じSDGs達成に寄与します。