THE TOKYO TOILETとは|渋谷トイレプロジェクトを解説

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近年、公共トイレは単なるインフラではなく、街の景観や快適性を構成する重要な公共空間として注目されています。なかでも「THE TOKYO TOILET」は、渋谷区内の公共トイレを世界的な建築家やクリエイターの手で刷新したプロジェクトとして話題です。
そこで本記事では、THE TOKYO TOILETの概要やコンセプト、17か所の施設について詳しく解説します。
THE TOKYO TOILETとは

THE TOKYO TOILETは、東京都渋谷区内の公共トイレを「誰もが快適に利用できる空間」へ刷新するプロジェクトです。日本財団が主導し、国内外で活躍する建築家やクリエイターが設計に参加しています。
従来の「暗い・汚い・怖い」といった公共トイレのイメージを変えることを目的に、デザイン性と機能性を両立したトイレとなっているのが特徴です。2023年公開の映画「PERFECT DAYS」の舞台としても注目を集め、観光スポットとして訪れる人も増えています。
コンセプト
THE TOKYO TOILETのコンセプトは、「多様性を受け入れる社会の象徴」として公共トイレを再定義することです。性別や年齢、障がいの有無にかかわらず、誰もが安心して利用できるユニバーサルデザインが採用されています。
また清潔性や安全性はもちろん、周辺景観と調和する高いデザイン性も重視されています。透明なガラスを使用したトイレなど、安全性や清潔さを確認できる工夫も導入され、公共空間への信頼向上にもつながっているのが魅力です。
設計施工|大和ハウス工業
施工を担当したのは、住宅や商業施設など幅広い建築実績を持つ大和ハウス工業です。世界的建築家やデザイナーによる独創的な設計を実現するため、高度な施工技術と品質管理が求められました。
限られた都市空間の中で、耐久性やメンテナンス性、バリアフリー性能を確保しながら、高いデザイン性を形にしています。優れた技術により、公共インフラでありながら“建築作品”としても評価される空間づくりを支えている点が特徴です。
設置機器|TOTO
トイレ設備機器には、衛生機器メーカー大手のTOTOの製品が採用されています。節水性能や衛生性に優れた最新設備を導入したことで、快適な利用環境が実現しました。
非接触操作や自動洗浄機能など、感染症対策や清掃性にも配慮されています。またユニバーサルデザインの思想に基づき、車いす利用者やお子さま連れ、高齢者にも使いやすい設備構成となっています。
維持管理・メンテナンス|渋谷区

完成後の維持管理・メンテナンスは、渋谷区が中心となって実施しています。公共トイレは設置後の清掃品質や設備維持が利用満足度を左右するため、複数の組織・企業によるメンテナンスのチームが組成されているのが特徴です。

具体的には下記3種類の清掃を実施し、さらに第三者機関である「トイレ診断士」による診断も組み込まれています。
- 通常清掃(1日最大3回)
- 定期清掃(1ヶ月に1回)
- 特別清掃(年に1回)
費用や清掃方法など最適な仕組みを探求することで、単なる建設事業ではなく、継続的な運営管理を含めた公共空間づくりとして注目されています。
THE TOKYO TOILETの一覧
ここでは、17か所あるTHE TOKYO TOILETをご紹介します。
①神宮通公園トイレ|安藤 忠雄

渋谷区役所近くの神宮通公園に設置されたトイレです。円形平面の棟から、屋根庇が大きくせりだし縁側をつくる造形が特徴で、安藤忠雄氏らしい静けさと存在感を感じられる空間に仕上がっています。
円形を基調とした構造により、公園景観との調和にも配慮されています。公共トイレでありながら、建築作品としての美しさを楽しめる施設です。
②代々木八幡公衆トイレ|伊東 豊雄

代々木八幡エリアに設置されたトイレで、柔らかな曲線を用いた親しみやすい外観が特徴です。自然光を取り込みやすい設計となっており、明るく開放感のある空間が実現しています。
周辺の住宅街や緑地との調和を意識しながら、安心して利用できる公共空間としてデザインされています。
③広尾東公園トイレ|後 智仁

広尾東公園内に設置されたトイレで、公園利用者が安心して使える温かみのある外観が特徴です。落ち着いた色合いや素材感を採用し、周辺環境に自然になじむ空間が実現しています。
世界人口と同じ79億通りのライティングパターンが施されており、昼は木漏れ日の様に、夜は月明かりや漂う蛍のように変化し続けるデザインとなっています。
④恵比寿公園トイレ|片山 正通

商業空間デザインで知られる、片山正通氏率いるWonderwallが手がけたトイレです。公園の中にありながら洗練されたデザインを採用し、都市空間に調和するスタイリッシュな外観となっています。
コンクリートでできた15枚の壁で、トイレでありオブジェクトでもある“曖昧な領域ー現代の川屋(厠)”が構築されています。壁と壁の間が男性用/女性用/ユニバーサル・トイレへの導入となり、利用者が快適に過ごせるユニークな空間構成が特徴です。
⑤鍋島松濤公園トイレ|隈 研吾

木材を活用した温かみのあるデザインが特徴のトイレです。ランダムな角度の耳付きの杉板ルーバーを取り入れることで、公園の豊かな緑と調和する空間となっています。
圧迫感を抑えた開放的な設計により、公共トイレに対する従来のイメージを刷新しています。隈研吾氏らしい自然との一体感を感じられる施設です。
⑥笹塚緑道公衆トイレ|小林 純子

緑道沿いに設置されたトイレで、地域住民が日常的に利用しやすい親しみやすさを重視したデザインです。高さの異なる円筒形のトイレに黄色い楕円形の大庇を浮かべ、外壁についた丸窓からはうさぎのモチーフがのぞいています。
周囲の歩行空間とも自然につながる設計で、街並みに溶け込む公共施設となっています。
⑦西原一丁目公園トイレ|坂倉 竹之助

住宅街に位置する公園内に整備されたトイレです。シンプルで落ち着いたデザインを採用し、周辺環境との調和が重視されています。
利用者の動線や安全性にも配慮されており、地域に開かれた公共空間として機能しているのが特徴です。“行燈”としてのトイレが公園を明るく照らし出すことで、誰もが気軽に訪れる公共空間として計画されています。
⑧恵比寿駅西口公衆トイレ|佐藤 可士和

駅前という人通りの多い立地に合わせ、視認性と機能性を重視して設計されたトイレです。毎日見る駅前のシンボルとして、極端に目立ちすぎずシンプルで分かりやすいデザインとなっています。
都市インフラとしての役割を果たしながら、洗練された美しさも備えています。
⑨七号通り公園トイレ|佐藤 カズー

トイレにおける全ての行動を音声で操作する、ボイスコマンド式の非接触トイレ「Hi Toilet」です。遊び心を取り入れたデザインで、明るく親しみやすい外観により、お子さまから大人まで利用しやすい雰囲気を演出しています。
地域コミュニティとのつながりも意識し、公園利用者が安心して利用できる空間となっています。
※ボイスコマンドを利用せず、手を使ってのドアの開閉や便器の操作も可能です。
⑩東三丁目公衆トイレ|田村 奈穂

特徴的な造形は、日本の贈り物文化のシンボルである「折形」からインスピレーションを得ています。国際都市渋谷にやってくるビジターへのもてなしの気持ちや、利用する人々を包み込む安全な場所にしたいという願いが込められています。
利用者目線の快適性を重視し、公共トイレの新しいあり方が提案されているのが特徴です。
⑪神宮前公衆トイレ|NIGO®

ファッションやカルチャーの発信地である、原宿エリアに設置されたトイレです。古き良き一軒家のような、ストリートカルチャーとの親和性を意識した個性的なデザインとなっています。
公共施設でありながらアート作品のような存在感を持ち、観光スポットとしても注目されています。
⑫裏参道公衆トイレ|マーク・ニューソン

銅製の「蓑甲(みのこ)屋根」をはじめとする、日本の伝統的な建築スタイルの引用が特徴的なトイレです。銅のピラミッド型屋根の緑青は、経年変化によって永続的な空間となることが期待されています。
内部空間も機能性と快適性を両立しており、デザイン性の高さが評価されています。
⑬代々木深町小公園トイレ|坂 茂

こちらは、透明なガラス壁を採用したことで話題となったトイレです。
利用していない時は内部が見える仕組みで、清潔性や安全性を外から確認できます。一方で利用時にはガラスが不透明に変化してプライバシーを確保できるため、公共トイレへの不安を軽減する革新的な設計となっています。
⑭はるのおがわコミュニティパークトイレ|坂 茂

代々木深町小公園トイレと同様、透明ガラスを採用した革新的なトイレです。昼夜を問わず明るく清潔感のある空間を演出し、公園利用者が安心して使える設計となっています。
夜には美しい行灯のように公園を照らし、THE TOKYO TOILETを象徴する施設の一つとして高い注目を集めています。
⑮西参道公衆トイレ|藤本 壮介

街並みと緩やかにつながるよう設計されており、閉鎖的になりがちな公共トイレの印象を刷新しています。軽やかで開放感のあるデザインが魅力です。
中央が大きく凹んだユニークな形状の外周部には、様々な高さの手洗い場が設置されています。水を囲んで人々が集う場所として、新しい公共空間のあり方を提案しています。
⑯幡ヶ谷公衆トイレ|マイルス・ペニントン東京大学DLXデザインラボ

公共トイレにオープンスペースを組み合わせた建築で、展示スペース、ポップアップストア、情報センター、待合所など、地域コミュニティの中心として役立てられることが想定されています。
誰もが使いやすい公共空間を目指し、デザインとテクノロジーを融合させた施設となっています。
⑰恵比寿東公園トイレ|槇 文彦

“タコ公園”として親しまれる恵比寿東公園に設置された「イカのトイレ」です。周辺景観と調和するデザインを採用したことで、公園利用者が安心して利用できる空間が整備されています。
機能性と美しさを兼ね備えた、上質な公共建築として評価されています。
まとめ
THE TOKYO TOILETは従来の公共トイレのイメージを変え、多様性を受け入れる公共空間として再定義した先進的なプロジェクトです。著名建築家やデザイナーによる個性的な設計に加え、施工・設備・維持管理まで高い品質で支えられている点も特徴といえます。
渋谷の街を歩きながら建築作品を巡るように楽しめることから、観光スポットとしても人気を集めています。公共インフラの新しい可能性を示す事例として、今後も注目される存在となりそうです。