建築のALCとは?正式名称・構造・RCやサイディングとの違いまで実務目線で解説

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Category:コラム建築
Tag:建築

著者:上野 海

建築の外壁や床材として使われる「ALC」について、「名前は聞いたことがあるが、RCやサイディングとの違いがよくわからない」と感じていないでしょうか。

この記事では、建築物に用いられるALCについて、正式名称や構造・他構造との違いを実務目線でわかりやすく解説します。

建築に使われる「ALC」とは?正式名称も紹介

建築に使われるALCとは、正式名称を「軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight Concrete)」という建材です。

一般的なコンクリートと製造方法や性質が異なり、軽量でありながら断熱性・耐火性・遮音性に優れています。

また、ALCは無機質材料として扱われ、防火地域・準防火地域の外壁材としても多く採用されている材料です。実際に、中高層マンション、工場、店舗、戸建住宅の外壁や床材として広く使われています。

なお、気泡コンクリートの概要をチェックしたい方は、以下の記事もご参考ください▼

ALCと他構造・材料との違い

ALCは「建築材料(主に外壁・床材)」であり、RC造やサイディングとは役割が異なります。

ここでは、「ALCとRC造」「ALCとサイディング」をそれぞれ比較し、建築実務で混同されやすいポイントを整理します。

ALCとRC造(コンクリート)の違い

ALCとRC造の最大の違いは、「建物を支えるかどうか」です。

以下のように、RC造(鉄筋コンクリート造)は柱・梁・床などで建物の荷重を支える構造方式ですが、ALCはあくまで外壁や床に使われる部材であり、構造体そのものではありません。

比較項目ALCRC造(鉄筋コンクリート)
役割外壁材・床材建物の構造体
重量非常に軽量
※コンクリートの約1/4〜1/5
非常に重い
施工パネル取付(乾式)現場打設(湿式)
断熱性高い(気泡構造)低め(別途断熱必要)
耐火性高い(不燃材料)非常に高い
主な用途外壁・床・間仕切り柱・梁・床・壁

実際、ALC協会が公開している「ALC パネル構造設計指針・同解説(平成25年12月)」にも、ALCは「不燃材料としての外壁材」として扱われています。

ALCとサイディングの違い

ALCとサイディングの違いは、「性能重視か、施工性・意匠重視か」にあります。どちらも外壁材ですが、求める建物性能によって向き・不向きが次のように分かれます。

比較項目ALCサイディング
重量軽量(コンクリート比)非常に軽量
断熱性高い低〜中(仕様依存)
耐火性高い(不燃)製品により差
デザイン性比較的シンプル非常に高い
コスト高め比較的安価
向いている建物中高層・性能重視住宅一般戸建・コスト重視

よって、外観デザインを優先するならサイディング、建物性能を優先するならALCと使い分けることが大切です。

ALCの製造方法(オートクレーブ養生とは)

ALCの性能を決定づけているのが「オートクレーブ養生」です。

ALCは、セメント・けい酸質原料・発泡剤を混合して成形後、高温(約180℃)・高圧(約10気圧)環境のオートクレーブ釜で養生されます。

(参考:電力土木技術協会「オートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)」

この工程により内部に均一な気泡が形成され、軽量でありながら強度・耐火性・寸法安定性が高い建材になります。現場打ちコンクリートと違い、工場で品質管理された製品のため、性能のばらつきが少ない点も特徴です。

ALCが中高層建築や外壁材として採用され続けているのは、この製造工程による信頼性があるためです。

ALCパネル内部の構造(鉄筋+気泡)

ALCパネルは「鉄筋」と「無数の気泡」を組み合わせた構造により、軽さと強度を両立できるのが特徴です。

ALCの内部には防錆処理された鉄筋が配置されており、パネルとしての剛性や施工時の安全性を確保しています。一方、内部に均一に分布する気泡は、重量を抑えるだけでなく、断熱性・遮音性・耐火性を高める空気層として機能します。

この構造によって、ALCは普通コンクリートの約1/4〜1/5の重量でありながら、建築外壁材として十分な性能を発揮できるのが強みです。

ALCの性能とメリット

ALCは「軽さ・断熱性・耐火性」を高い次元で両立した建築材料です。特に、耐震性・省エネ性・防火性能が求められる建築では、ALCの特性が強みになります。

ここでは、ALCが選ばれる理由を「軽量性」「断熱性・保温性」「耐火性」という3つのメリットに分けて紹介します。

軽量性|コンクリートの約1/4〜1/5

ALCのメリットは、普通コンクリートの約1/4〜1/5という軽さです。内部に気泡を持つ構造によって、十分な強度を保ちながら建物重量を抑えられます。

建物が軽くなれば、その分だけ地震時の慣性力が小さくなり、構造体や基礎への負担軽減=耐震性向上につながります。特に中高層建築や軽量鉄骨造との相性が良く、合理的な構造計画が可能です。

断熱性・保温性|夏は涼しく冬は暖かい理由

ALCは、内部の無数の気泡が空気層となり、高い断熱性・保温性を発揮します。空気は熱を伝えにくいため、外気温の影響を受けにくく、室内環境を安定させやすいのが特徴です。

実際、国土交通省の省エネ基準でも、外壁の断熱性能は冷暖房負荷に直結するとされています。ALCを採用することで、冷暖房効率の向上=光熱費削減につながるケースも少なくありません。

耐火性|防火地域でALCが選ばれる理由

ALCは無機質の不燃材料という特徴をもつ、耐火性能に優れた建材です。

建築基準法においても、不燃材料として扱われ、防火地域・準防火地域の外壁材として多く採用されています。

火災時に燃え広がりにくく、有毒ガスも発生しにくいため、人命安全と建物被害の抑制に貢献できるのが強みです。その性能を活用し、住宅だけでなく、工場・店舗・マンションでもALCが使われています。

ALCのデメリットと注意点

ALCは性能に優れる一方で「吸水性」と「コスト面」に注意が必要な建材です。

ここでは、ALCを採用する前に知っておくべき注意点を整理します。

吸水性と防水塗装が必須

ALCは内部に気泡を多く含むため、吸水性が高いという性質があります。つまり、正しく防水処理を行わないと次のような劣化の原因につながります。

  • 素材の劣化
  • ひび割れ
  • 剥がれ

よって、ALC外壁では塗装による防水層の確保が必須です。一般的に10〜15年程度で再塗装が必要とされます。

コストが高くなりやすい

ALCはサイディングなどに比べ、初期コストが高くなりやすい建材です。

材料費に加え、重量物の施工、下地調整、目地処理などが必要になるため、施工費も上がる傾向があります。一方で、断熱性・耐火性・耐久性といった性能を外壁材単体で担えることから、長期的な視点で費用対効果を判断しましょう。

初期費用だけでなく、長期的な維持費も含めて判断することが重要です。

ALC外壁が向いている建物一覧

ALC外壁は「建築物の性能を重視する用途」に向いています。以下に、ALC外壁が向いている建物とその理由を整理しました。

建物種別向いている理由
中高層マンション軽量で建物負荷を抑えつつ、耐火・遮音性能を確保できる
工場・倉庫不燃材料で火災リスクを低減し、耐久性が高い
店舗・商業施設防火地域対応しやすく、外壁性能を確保しやすい
医療・福祉施設遮音性・断熱性により室内環境を安定させやすい
性能重視の戸建住宅断熱・耐火を優先する設計と相性が良い

断熱性・耐火性・耐久性に優れるため、初期コストよりも長期的な安全性や快適性を優先する建物で採用されやすいのが特徴です。特に、防火規制・騒音対策・建物規模といった条件が絡む場合、ALC外壁は合理的な選択肢になります。

建築のALCについてよくある質問【FAQ】

ALC外壁は防音に強い?

ALC外壁は、防音性に比較的優れた外壁材です。内部の無数の気泡が音を反射・吸収するため、外部騒音を低減しやすい構造になっています。ただし、完全な防音を実現するものではなく、開口部(窓・換気口)や下地構成によって効果は左右されます。

ALCはなぜメンテナンスが必要?

ALCは吸水性が高いため、防水性能を保つためのメンテナンスが必要です。外壁表面の塗装が劣化すると雨水が浸入しやすくなり、耐久性低下の原因になります。一般的に10〜15年ごとの再塗装が推奨されており、計画的な維持管理が重要です。

まとめ

ALCは、軽量性・断熱性・耐火性に優れた建築用建材で、性能重視の建物に適した外壁材です。中高層の住宅や工場などでも採用されており、地震の多い日本で強みを活かせます。

なお、ほかに構造体や外壁材として利用されているRC造やサイディングとの違いを理解することも重要です。用途や維持管理を踏まえて材料を選択しましょう。