中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発|決定後に中止した理由とは?今後のスケジュールも

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今回は、「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」をピックアップします。

本事業は、都市化計画が決定した後も建物の概要が変更になるなど二転三転し、最終的には白紙となった計画です。この記事では、当初の事業計画の詳細や、中止の理由、今後の予定までくわしく解説します。

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」とは|事業概要

出典:中野区,中野駅周辺まちづくり 中野駅周辺まちづくり事業一覧,https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/bunyabetsu/machizukuri/nakanoeki/gaiyo/nakanoekisyuhen.files/7jigyouichiran.pdf,参照日2025.12.23

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」は、2000年から本格的に始まった「中野駅周辺まちづくり計画」全11事業のうち、1事業目にあたります。中野駅周辺まちづくり計画とは、中野駅周辺の約110ヘクタールのエリアを「東京の新たなエネルギーを生み出す活動拠点」として整備するものです。

今回ピックアップした「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」は、中野駅新北口駅前エリアとなる区役所とサンプラザ地区を再整備する計画で、中野サンプラザの建て替えが検討されていました。

所在地

出典:中野区,中野駅新北口駅前エリア(区役所・サンプラザ地区)再整備について,https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kousou/bunyabetsu/machizukuri/nakanoeki/gaiyo/nakanoekisyuhen.files/7jigyouichiran.pdf,参照日2025.12.23

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」の所在地は、東京都中野区中野 4丁目2-47 他です。当エリアは、中野駅周辺のうち中野サンプラザや区役所の敷地を含む約2.3ヘクタールの範囲で、音楽をはじめサブカルチャーなどさまざまな文化が育まれてきたエリアです。

中野サンプラザは1973年竣工、区役所は1968年竣工と、ともに竣工から約50年が経過していることから、再整備計画が進められてきました。なお、中野区役所は2024年に新庁舎が完成し、開庁済みとなっています。

面積

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」の面積はこちらをご参照ください。

  • 建築敷地面積:約23,460㎡
  • 延べ面積:約 298,000 ㎡
  • 建築面積:約18,800㎡

構造・規模

出典:中野区,中野駅新北口駅前エリアのまちづくりに関する説明会,https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/machizukuri/machizukuri/nakanoekisyuhen/ikenbosyu_setsumeikai/ikenkokankai.files/78.pdf,参照日2025.12.23

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」の構造と規模は、一度変更されています。2023年11月に都市計画が決定された当初の計画では、オフィス・住宅・商業エリアを含む高層棟と、ホール・ホテルほかエリアマネジメント施設を含む低層棟の2棟でした。

出典:中野区,中野駅新北口駅前エリアのまちづくりに関する説明会,https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/machizukuri/machizukuri/nakanoekisyuhen/ikenbosyu_setsumeikai/ikenkokankai.files/78.pdf,参照日2025.12.23

2025年1月に提出された見直し提案では、2棟のうち低層棟の上部に住宅棟を新たに追加した構造に変更されています。以上のような2つの計画がありましたが、本事業は中止となったため、どちらも白紙となっています。

ゼネコン|清水建設

「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発」の協力事業者は、清水建設に決定していました。また、代表事業者は野村不動産、施工予定者には東急不動産、住友商事、ヒューリック、JR東日本の4社が予定されていました。

中野駅再開発中止の理由と経緯

中野再開発事業は、なぜ中止となったのでしょうか。その理由には、建設業界にも大きくかかわる2024年問題と、二転三転した建設計画が影響していました。

ここからは、中野駅再開発が中止となった理由と経緯についてご紹介します。

円安・戦争・人件費高騰などによる工事費の倍増

中止となった経緯を時系列で見ていきましょう。

年月日できごと
2023年5月中野区が施工予定者を決定、代表事業者に野村不動産、協力事業者に清水建設など
2023年11月野村不動産が都市計画を公式発表、中野サンプラザを含む中野駅新北口駅前エリアにおける市街地再開発事業として、中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業都市計画都市計画決定
2024年7月施工認可を申請(野村不動産→中野区)
2024年8月総事業費約2639億円から工事費約900億円を上積みして提示(清水建設→野村不動産)
2024年9月工事費高騰などの理由で着手が困難であると報告(野村不動産→中野区)
2025年2月事業計画見直し案を提出(野村不動産→中野区)
2025年3月再開発事業の基本協定解除

中野駅再開発が中止となった大きなきっかけのひとつが、工事費の高騰です。当初予定されていた工事費は1210億円でしたが、2024年1月に1845億円に修正されていました。それから約半年後の2024年8月には、清水建設が総事業費約2639億円から工事費約900億円を上積みして提示しています。

計画当初から約1.5倍となる工事費の高騰を受け、野村不動産は中野区に対して「着手が困難である」と報告しました。工事費が増額した理由は、人件費高騰・円安・ウクライナ戦争による資材・エネルギーコストの上昇などが原因です。

人件費については、物流業界の人手不足の原因となっている「2024年問題」もかかわっています。さらに、工事が予定されていた時期が建設業者の繁忙期と重なったことも要因となり、工事費が増大する自体となりました。

計画の大幅変更で「魅力が不十分」と判断

中野駅再開発中止の二つ目の理由は、二転三転した計画です。当初の計画は高層棟と低層棟からなるツインタワーでしたが、2025年2月に提出された見直し提案では住宅面積を大幅に増やし、高層棟2棟に変更、住宅単価の見直しも提案されていました。

住宅面積を大幅に増やした理由は、保留床処分金を増やすことで事業収支を改善するためです。このような建設計画が提案された結果、中野区は「当初の計画から大きく変更され、区民にとって魅力的な施設を実現するために十分な計画ではない」と判断しました。

こうして、2025年3月に中野区が中野駅再開発事業の基本協定解除を決定し、計画は白紙となりました。

中野サンプラザ再開発、新たな計画と今後のスケジュール

中野駅再開発事業計画は中止となりましたが、事業の見直しに向けた検討が進められています。ここからは、中野サンプラザの現在と、今後のスケジュールについてご紹介します。

にぎわいの場として再利用が始まる

出典:中野区,中野サンプラザパフォーマンスフィールド,https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/shisetsu/sisetuyoyaku/nakanosunplazaperformancefield.html,参照日2025.12.23

中野サンプラザは現在、中野区のまちづくり事業用地として管理されています。2025年10月からは、ミュージシャンやお笑いなどのパフォーマンスや練習ができる場として、無料で開放しています。(利用は要登録)

また、アニメイベントなどのプロモーション活用や、事業者への南側広場などの全体貸付も検討されています。

区民との意見交換会を活発に開催

現在は、区民との意見交換により事業計画の再検討が進められています。2025年11月に行われた「中野駅新北口駅前エリアのまちづくりに関する意見交換会」の資料では、再整備事業計画についてまとめられています。

区民からは、「ディベロッパー任せにせず区の施設として計画を」との声もあり、ホールの大きさや使い方などかなり具体的な意見も寄せられています。100年先も区民に愛される施設を実現するために、中野区の取り組みが期待されています。

まとめ

中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発は、事業計画決定後に中止となった異例のプロジェクトですが、現在は新たな再開発計画がスタートしています。意見交換会では区民から積極的な意見が多く寄せられており、再整備への期待が高まっています。今後も中野区の発表に注目していきましょう。