国土交通省調査、建設業の人手不足が緩和傾向 10月は0.8%不足で前年比1.5ポイント改善

国土交通省は令和7年11月25日、建設業における技能労働者の需給状況を把握する調査の10月分結果を発表しました。この調査は昭和54年7月から継続して実施されており、建設業界の人材確保や公共事業の円滑な執行に役立てられています。

全国的な労働力不足の状況
今回の調査によると、8つの職種を合計した全国の過不足率は0.8%の不足となりました。前月の9月と比べると0.3ポイント改善し、不足の幅が縮まっています。また、前年同月との比較では1.5ポイントの改善が見られ、人手不足の状況は徐々に緩和されつつあることが分かります。
一方、6つの職種に絞った集計では0.1%の不足という結果になり、ほぼ均衡に近い状態となっています。
東北地域における特徴的な動き
東北地域に注目すると、8職種の過不足率は2.2%の不足でした。前月から0.8ポイント不足幅が広がったものの、前年同月と比較すると2.7ポイント改善しています。
6職種については、型わく工(土木)で7.1%、左官で4.3%、鉄筋工(建築)で14.3%、電工で0.7%、配管工で3.1%の不足が見られました。その他の職種では均衡状態となっています。
職種ごとの詳細な分析
職種別に見ると、鉄筋工(建築)のみが過剰となっており、それ以外の職種では不足が続いています。
特に注目すべき点として、配管工の過不足率が前年と比べて増加傾向にあります(2.3%から2.9%へ)。これに対し、鉄筋工(建築)は前年同月の2.2%の不足から、今回はマイナス9.3%と過剰となり、不足から一転して大きく改善しています(11.5ポイントの縮小)。
新規募集における過不足状況を見ると、6職種計と8職種計のいずれも、前年同月を下回る不足率となっており、採用環境はやや改善していることがうかがえます。
地域ごとの傾向
地域別では、北陸、四国、沖縄の3地域で均衡状態となり、その他の地域では不足が続いています。
前年同月との比較では、中国地域が1.9ポイントの増加で最も悪化した一方、関東地域は3.8ポイントの減少で最も改善しました。
6職種に限定して見ると、北陸、四国、沖縄で均衡、関東で過剰、その他の地域で不足という結果になっています。地域差は前年同月比で、中国が1.8ポイント増加し最も拡大した一方、関東は5.6ポイント減少し最も改善しました。
今後の見通しと現場の実態
12月および1月における労働者確保の見通しについては、全国および東北地域ともに「普通」という評価になっています。
12月の見通しでは、「困難」と「やや困難」を合わせた回答が29.5%となり、前年同月より2.9ポイント増加しました。反対に「やや容易」と「容易」の合計は5.0%で、前年同月より0.5ポイント減少しています。
1月については、「困難」との回答が25.0%で前年同月比3.3ポイント増、「容易」は8.2%で1.7ポイント増となりました。
作業強化の実施状況
残業や休日作業を実施している現場の割合は、全手持現場数の2.3%となっています。前月の1.9%から0.4ポイント増加し、前年同月の2.1%からも0.2ポイント増えています。
作業を強化している理由としては、「前工程の工事遅延」が34.4%で最も多く、次いで「昼間時間帯の時間制約」が26.6%、「天候不順」が9.4%、「無理な受注」が7.8%となっています。
調査の概要
この調査は、建設業法上の許可を受けた資本金300万円以上の法人企業のうち、調査対象職種の労働者を直接雇用する約3,000社を対象に実施されています。調査期間は令和7年10月10日から20日までの間の1日(日曜・休日を除く)です。
調査対象の8職種は、型わく工(土木・建築)、左官、とび工、鉄筋工(土木・建築)、電工、配管工となっています。
出典情報
国土交通省リリース,建設労働需給調査結果(令和7年 10 月分調査)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001969826.pdf