国土交通省発表、10月の建設工事受注は民間16.7%減・公共26.1%増の明暗

10月の受注総額は1兆4,249億円となり、前年同月と比較して10.1%の減少を記録しました。これは3ヶ月ぶりの減少となります。国内工事に限定すると1兆3,709億円で、前年同月比8.7%の減少となっています。
民間工事については減少傾向が見られた一方で、公共工事は増加という対照的な動きを示しました。

民間部門での受注が大幅に縮小
民間工事の受注額は9,865億円となり、前年同月比で16.7%減少しました。これも3ヶ月ぶりの減少です。
製造業分野では9.0%の減少、非製造業分野では19.0%の減少となり、両部門ともに受注が落ち込む結果となりました。
発注者の業種別に見ると、増加したのは以下の業種です。
・鉱業、採石業、砂利採取業、建設業
・運輸業、郵便業
・卸売業、小売業
一方、減少した主な業種は次の通りです。
・サービス業
・製造業
・不動産業
工事の種類別では、建築工事が減少し、土木工事が増加しました。具体的に増加が見られたのは宿泊施設、医療・福祉施設、鉄道関連の工事です。逆に、事務所・庁舎、倉庫・流通施設、教育・研究・文化施設などの工事は減少傾向にありました。
公共工事は4ヶ月ぶりに増加
公共工事の受注額は3,444億円で、前年同月比26.1%の大幅な増加となりました。これは4ヶ月ぶりの増加です。
国の機関からの受注は15.3%増加し、地方の機関からの受注は41.4%増加しました。
国の機関の内訳を見ると、国からの発注は増加しましたが、独立行政法人や政府関連企業からの発注は減少しています。
地方の機関では、市区町村や地方その他からの発注が増加した一方、地方公営企業や都道府県からの発注は減少しました。
工事種類別では、建築工事と土木工事の両方で増加が確認されました。増加した工事の種類には、土木その他、事務所・庁舎、上水道・下水道などがあります。減少したのは道路、港湾・空港、治山・治水などの工事でした。
海外工事も減少傾向
10月の海外工事受注額は540億円となり、前年同月比34.9%の減少となりました。これは2ヶ月ぶりの減少です。
なお、この海外工事の数値には現地法人による受注分は含まれていません。
大規模工事の動向
受注額が10億円以上となる国内大規模工事について見ると、国内工事受注額に占める割合は75.3%となっています。
合計203件の大規模工事が受注されており、その内訳は以下の通りです。
・建築工事:128件、受注額7,840億円
・土木工事:75件、受注額2,483億円
発注元別では次のようになっています。
・民間等:127件、受注額7,537億円
・公共機関:76件、受注額2,786億円
前年同月と比較すると、大規模工事の受注額は10.8%減少しています。
建設市場の今後の見通し
今回の統計結果から、民間工事の受注が大きく減少する一方で、公共工事が堅調に推移していることが明らかになりました。
民間部門では、サービス業や製造業、不動産業といった主要な発注元からの需要が減退しています。これは、経済環境の変化や企業の投資意欲の変化を反映していると考えられます。
対照的に、公共工事は国と地方の両方で増加しており、特に地方の機関からの発注が大幅に伸びています。インフラ整備や公共施設の維持管理に対する需要が継続していることがうかがえます。
海外工事の減少も注目すべき点です。国際的な建設市場における日本企業の立ち位置や、世界経済の動向が影響していると見られます。
建設業界全体としては、民間需要の回復と公共工事の安定的な確保がバランス良く実現されることが、今後の健全な発展には必要と言えるでしょう。
この統計調査の詳細なデータは、政府統計の総合窓口「e-Stat」で公開されており、さらに詳しい分析や地域別のデータなども確認することができます。
出典情報
国土交通省リリース,建 設 工 事 受 注 動 態 統 計 調 査 報 告 ( 大 手 50 社 調 査 )( 令 和 7 年 10 月 分 ) に つ い て,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001969722.pdf