大成建設、15MW級風車対応の浮体式基礎OO-STARで基本設計承認(AiP)取得

大成建設株式会社は、コンクリート製のセミサブ型浮体式基礎「OO-STAR」について、一般財団法人日本海事協会(ClassNK)から基本設計承認(AiP)を取得したと発表しました。この浮体式基礎は15MW級の大型風車に対応できる設計となっており、今後の浮体式洋上風力発電の普及拡大に大きく寄与することが期待されています。
洋上風力発電の重要性が高まる背景
日本政府は2050年にカーボンニュートラルを達成する目標を掲げており、その実現において洋上風力発電は再生可能エネルギーの中核を担う存在として注目されています。2025年8月に洋上風力産業競争力強化に向けた官民協議会が公表した「洋上風力産業ビジョン(第2次)」では、2040年までに15GW以上の浮体式洋上風力発電を実現するという具体的な数値目標が示されました。この目標に基づき、2030年代には浮体式洋上風力発電の設置が本格化すると見込まれています。
大成建設はこうした動きを先取りする形で、コンクリート製セミサブ型浮体式基礎「OO-STAR」の研究開発を推進してきました。今回の基本設計承認の取得は、同社の技術力が第三者機関によって認められたことを意味します。
「OO-STAR」の構造と係留システム
今回承認された浮体式基礎は、中央に位置するセンターシャフトと、その周囲に配置された3つのコーナーカラムから構成されるセミサブ型の構造を採用しています。係留方式については、複数の係留点を持つ多点係留システムを使用し、合成繊維索によるセミトート係留を導入しています。
浮体の主要な材料としてコンクリートを選択したことには、いくつかの重要な意義があります。
材料の安定的な調達が可能
・地域で生産・消費することで地元経済に貢献
・製造から廃棄までのライフサイクル全体でCO2排出量を抑制
これらの特徴により、環境面と経済面の両方で持続可能な洋上風力発電の実現につながります。
製造面での優位性
「OO-STAR」には、製造プロセスにおいて他のセミサブ型浮体式基礎と比べて優れた利点があります。
まず、造船用のドックを使用する必要がなく、一定の広さを持つ製造ヤードがあれば製作可能です。これにより、製造場所の選択肢が広がり、地域の既存施設を活用できる可能性が高まります。
次に、ポンツーン部分の寸法を調整することで喫水を浅くすることができます。この特性により、岸壁で風車の組み立てまでを一貫して行うことが可能となり、作業効率が向上します。
さらに、カラム上部のブレースなど細かい補強部材が不要なシンプルな構造設計となっています。複雑な部材が少ないため、製造作業がスムーズに進み、生産性の向上が見込めます。
量産化に向けた取り組み
大成建設は基本設計承認の取得と並行して、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する委託事業「浮体式洋上風力発電の導入促進に資する次世代技術の開発」にも参加しています。
この事業では、浮体式基礎のコスト削減を実現するための設計技術の確立や、年間25基を超える大量生産を可能にする製造技術の開発に取り組んでいます。浮体式洋上風力発電の普及には、個々の性能向上だけでなく、量産体制の構築が不可欠です。
今後の展開と社会への貢献
大成建設は今後、浮体式洋上風力発電に関する政府目標の達成に向けて、コンクリート製浮体の技術開発をさらに加速させる方針です。関係機関との協力体制を強化し、製造から設置までのサプライチェーンを整備することで、浮体式洋上風力発電の実用化を推進します。
洋上風力発電は、日本のエネルギー政策において重要な位置を占めています。特に浮体式は、水深が深い日本の海域特性に適した技術であり、その普及は再生可能エネルギーの拡大に直結します。「OO-STAR」の実用化により、カーボンニュートラル社会の実現に向けた歩みが着実に進むことが期待されます。
出典情報
大成建設株式会社リリース,コンクリート製セミサブ型浮体式基礎「OO-STAR」の基本設計承認(AiP)を日本海事協会から取得-15MW級風車対応により浮体式洋上風力発電の本格導入に向けた技術開発を加速-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251127_10663.html