大成建設が最新技術で点検業務を効率化、全国展開で建設DXを加速、老朽化と人材不足に対応

大成建設株式会社(代表取締役社長:相川善郎)は2025年11月26日、建設現場におけるドローンや3Dスキャナを使った新しい点検手法の提供を本格的にスタートさせました。このサービスでは、現場で取得した立体データを活用し、離れた場所からでも点検作業を進められる仕組みを整えています。
建築物の老朽化と人材不足という課題
現在、日本全国で建築物の経年劣化が進んでいます。こうした建物に対しては、改修工事などの適切な処置を施す必要がありますが、その前提として詳しく正確な調査が欠かせません。
しかしながら、点検作業を担当する経験豊富な技術者の確保が難しくなっており、現場に直接足を運ぶ従来の方法では素早い対応が困難になっています。特に、セキュリティ要件が厳しい施設や遠方に位置する建物では、訪問そのものに制限が生じるケースも少なくありません。その結果、点検作業が後回しになり、費用が膨らむという問題が発生しています。
最新技術による課題解決への取り組み
同社は、これまでの現地調査や立ち会い確認という手法に加えて、ドローンや3Dスキャナ(Matterportなど)を活用することで、精密な立体データを作成する体制を構築しました。さらに、クラウド技術を用いて情報を共有することで、現場訪問にかかる負担を軽くし、データのやり取りを速やかに行える環境を整えています。
また、同社の専門チームが主体となって全国規模で対応することにより、点検業務における省力化と効率向上を推進しています。
サービスの主な特徴
このデジタル点検サービスには、以下のような特徴があります。
■パッケージ型の一貫対応
調査から見積もり、発注、点検の実施、データ作成まで、専門チームがすべての工程を統一的に担当します。
■精密な立体データの構築
ドローンや3Dスキャナを使い、対象となる建物や構造物の現状を高い精度で立体データとして記録します。
■クラウドを通じた情報の共有
作成したデータをクラウド上に保存し、遠隔地からでも内容を確認できるようにすることで、関係者間の合意形成を円滑に進めます。
■全国展開可能な体制
現地での撮影作業やデータの編集を代行する専門チームが全国に対応しており、迅速かつ安定したサービス提供を実現しています。
■業務フローの整備
情報共有を容易にすることで、工事に関する打ち合わせや現地確認にかかる手間を削減し、時間とコストの両面で効率化を図ります。
■調査から見積もり・発注・点検・データ化までの統一管理
調査、見積もり、発注、点検、データ化という一連の流れを途切れることなく対応します。
■安全性と作業効率の確保
高い場所や狭い空間など、人が立ち入りにくい箇所でも安全に作業を進めながら、生産性を維持します。
今後の発展計画
大成建設は、NADI株式会社(代表取締役社長:湯浅浩一郎)と共同で、さらなるサービスの高度化に取り組む予定です。
具体的には、ドローン本体や操縦を行う人員の貸し出し・返却スケジュールをクラウド上で一括管理するシステムを導入します。また、チャットツールと組み合わせることで、飛行の依頼から計画書の提出、承認手続き、リアルタイムでの報告、成果物の提出、不具合の連絡まで、すべての情報をクラウド上で一元的に管理できる仕組みを整える計画です。
幅広い分野への展開を目指して
このデジタル点検サービスの運用開始と今後の機能拡張により、同社は中央省庁や地方自治体、電力施設、生産設備といったセキュリティ要件の高い施設を含め、建築分野や土木分野における様々なプロジェクトへの適用を進めていきます。
さらに、地域に暮らす人々や地元企業との協力関係を深めることで、あらゆる地域において持続可能なインフラの維持管理に寄与していく方針です。
実際の活用事例
同社はこれまでにも、様々な場面でデジタル技術を活用してきました。
Matterportの活用では、建物を立体モデル化した情報を関係者間で簡単に共有できるサービスを展開しており、2019年にはプレスリリースで紹介しています。
BLK360の活用事例としては、2024年に島根県大田市で石見銀山DX化事業を開始しました。
災害対応でのドローン活用では、2022年に災害発生時の復旧作業計画の策定において、ドローンを積極的に活用する取り組みを進めています。
狭い空間での点検では、煙突内部のような狭隘な場所の点検作業に、ドローンELIOS3を使用した事例もあります。
出典情報
大成建設株式会社リリース,ドローンと3Dスキャンを用いたデジタル点検の本格運用を開始-点検業務の省力化と効率化により、建設現場のDXを促進-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251126_10774.html