竹中工務店など3社が牽引式水素発電装置を開発、建設現場・災害時向け移動式電源を実証

竹中工務店、那須電機鉄工、日本フイルコンの3社は2026年1月13日、牽引式水素発電装置を開発したと発表しました。この装置は、環境負荷を抑えながら必要な場所へ電力を供給できる移動式電源システムです。

革新的な水素貯蔵技術を活用

この発電装置の中核となっているのは、竹中工務店と那須電機鉄工が2025年6月に開発した水素吸蔵合金タンクです。従来の水素貯蔵方法と比べて小型軽量化を実現しており、何度も繰り返し使用できる点が特徴となっています。

このタンクに燃料電池を組み合わせることで、建設工事の現場や災害発生時など、様々な状況で手軽に電源を確保できるようになりました。

環境に配慮した発電を実現

燃料に水素を使用するため、発電する際のCO2排出量はほぼゼロです。地球温暖化対策が求められる中、環境への負担を大幅に軽減できる点は大きなメリットといえます。

また、発電時の騒音が小さく、においも発生しないため、周辺環境への影響を最小限に抑えられます。特に住宅地に近い場所や夜間の作業が必要な現場では、この特性が活きてくるでしょう。

開発に至った経緯

建設現場などで燃料電池を使うには、水素を安全に保管し、運搬する技術が欠かせませんでした。そこで竹中工務店と那須電機鉄工は、水素吸蔵合金タンクという技術に注目し、持ち運びしやすい小型軽量タンクの開発に成功しました。

しかし、水素タンクと燃料電池は通常、別々に開発されて使われています。そのため、現場で電源として使う際には、次のような問題がありました。

・装置同士をつなぐガス配管の接続作業が必要

・システム間の連動性を確保する必要がある

・複数の部品を運搬しなければならない

これらの課題を解決するため、燃料電池分野で多くの実績を持つ日本フイルコンとの協力体制を構築しました。3社それぞれの技術力を結集し、日本フイルコン独自の制御システムによって一体化することで、使いやすい発電装置が完成したのです。

燃料電池の仕組み

燃料電池とは、水素と空気中の酸素を化学反応させて水を作り出し、その過程で生まれる電気エネルギーを利用する装置です。CO2などの温室効果ガスや有害な物質を排出しない、クリーンな発電方法として注目されています。

システムの主な特徴

この牽引式水素発電装置には、次のような特徴があります。

まず、小型軽量の水素吸蔵合金タンク4本と燃料電池1台を、牽引できる車両に搭載しています。これにより、環境にやさしい電源を移動させながら使えるようになりました。

水素による発電装置に加えて、太陽光発電装置と蓄電池も併用しています。複数の電源を組み合わせることで、安定した電力供給システムを作り上げています。

設置が完了すれば、すぐに一般的な家庭の約2日分に相当する電力(約20kWh)を供給できます。水素吸蔵合金タンクを交換すれば、継続して電源を供給し続けることが可能です。タンクの交換作業は、1人あたり約10分で行えます。

安全面にも配慮されており、高圧ガス保安法や消防法における危険物の規制対象外となっています。

期待される効果

この装置がもたらすメリットは多岐にわたります。

CO2排出量をほぼゼロに抑えられるため、環境にやさしい移動式電源として活用できます。

水素は化石燃料と比較して長期間保管できる性質があり、電源用の備蓄燃料としても使えます。

振動が少なく、騒音も小さく、においも出ないという特性は、人が多く住む地域や夜間の工事現場で特に役立ちます。

3社の分担体制

開発にあたって、各社は以下の役割を担いました。

竹中工務店は、システム全体の計画立案、車体の設計と製作、性能の評価、実証実験を担当しています。

那須電機鉄工は、水素吸蔵合金タンクシステムの小型化に取り組みました。

日本フイルコンは、燃料電池システムの小型化と、各システム間の連携を実現しています。

これからの取り組み

現在、この装置は実証段階にあります。自社の建設現場で工事用電源として試験的に使用するほか、企業や自治体と協力した実証実験も予定されています。

今後は実証を通じて仕様の絞り込みを行い、商品化を検討していく方針です。同時に、環境にやさしい方法で製造された水素(グリーン水素)の製造拠点や充填施設、水素を運ぶ配送網の整備など、社会インフラの構築に向けて、新たな協力企業との連携も進めていきます。

環境保護と利便性を両立させたこの移動式水素発電装置は、建設業界における脱炭素化の実現に向けた重要な一歩となりそうです。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,牽引式水素発電装置を開発 小型軽量水素吸蔵合金タンクと燃料電池の一体化で、移動式電源供給を実現,https://www.takenaka.co.jp/news/2026/01/01/