建坪を基盤にした設計・施工の革新|BIM・CIM技術で変わる建物価値の最大化

建坪は建物の設計段階において重要な指標です。単なる面積の計算だけでなく、建坪は設計・施工・運営の各フェーズで情報を一元化し、効率化を図るための起点となっています。
BIM/CIMといった先進技術の導入によって、従来の設計フローが劇的に変化しています。設計段階から施工、維持管理に至るまで、建坪を含む全ての建物情報がリアルタイムで共有・管理されるようになり、プロジェクト全体の透明性と精度が大幅に向上しました。
設計変更があった際にも即座に影響範囲を把握し、手戻りを最小限に抑えることが可能です。本記事では、これらの新しい技術を駆使して建坪をどのように活用し、実際のプロジェクトでどのようなメリットを享受できるのか、具体的な事例を交えながらみていきましょう。
目次
BIM/CIMの導入状況と建坪の重要性の変化

建坪は、建物の設計や積算において基礎的な指標として使用されてきました。建設業界のデジタル化が進む中で、建坪に対するアプローチも大きく変化しています。建坪を中心に建物全体の設計情報を3Dで視覚化し、その情報に関連するコストや工期、資材の情報までを統合的に管理できるようになりました。
建坪に関しても、単なる「面積」から「建物全体の情報統合」を指す重要なデータポイントへと進化したといえるでしょう。従来の設計フローでは捉えきれなかった構造や設備、資材、コスト、工期に関する情報が一元管理できるようになり、プロジェクト全体を効率的に管理するための基盤が整いました。
ここでは、建坪のデータの重要性について詳しくみていきましょう。
従来の建坪の考え方とその限界
建坪は、建物設計において面積把握や積算段階でのコスト算出に使用されてきました。設計段階では、2D図面を基に建坪を計算し、その面積をもとに資材の量やコストを予測します。予算や設計方針を立てられるものの、以下のような限界もありました
- 設計変更への対応の難しさ
2D図面では、構造や設備変更の影響を即座に把握することができず、設計変更時に手戻りが発生しやすくなる - コスト再計算の手間
設計変更があるたびに新たにコストを計算し直す必要があり、工数が増大する。結果として、プロジェクトの効率が低下するリスクがある - 情報共有の遅れ
建坪を含めた設計変更後の情報共有が手動で行われるため、現場や関係者への情報伝達が遅れるケースがあった
従来の建坪の使われ方では、設計変更や情報の共有に時間がかかり、プロジェクトの効率化が難しいという課題があったといえます。
BIM/CIM技術による設計ワークフローの革新
BIM/CIMが導入されたことから、建坪に関連した図面設計のこれまでの課題が改善されつつあります。BIM/CIMによって、建物全体の3Dモデルを作成し、建坪を含む設計情報や構造、設備、コスト予測などを一元管理できる技術です。設計から施工、維持管理までのデータが一貫して管理されるため、次のようなメリットが期待できます。
- 迅速な設計変更対応
設計変更が即座に3Dモデルに反映され、影響を受ける部分が一目で分かる。手戻りが減少し、コストや工期への影響を事前に把握できる。 - ミスや手戻りの削減
設計者と施工者が同じ3Dモデルを共有することで、情報の齟齬が減り、設計ミスや施工ミスの発生を抑えられる - 工数とコストの可視化
BIMを使うことで、工数やコストのシミュレーションができ、リアルタイムで管理可能。無駄なコストを削減し、予算内でプロジェクトを完了させやすくなる - 省エネ・GX対応
設計段階でエネルギー消費やCO₂排出のシミュレーションを行い、環境に配慮した設計が早期に可能となる。サステナブルな建設にも応用できる
BIMツールの最新進化とゼネコンの活用法
建設業界では、BIM技術の進化とともに、活用方法も変化を遂げています。特に、単なる3D設計から一歩進んだ「BIM for Lifecycle Management(ライフサイクル管理を見越したBIM)」や「BIM × AI/IoT」の融合など、新しいツールと技術の導入が進んでいます。
ゼネコンは、単に設計段階での利用にとどまらず、施工から維持管理までの全プロセスをBIMで一貫管理する方向にシフトしています。
最新のBIMツールの進化
従来、BIMツールは設計から施工にかけてのデータ管理に使われていましたが、設計後の運用や維持管理の部分がデータとして活用されにくかったため、建物のライフサイクル全体でのコストや効率が最適化されていませんでした。たとえば、施工後の設備の故障予測やメンテナンス計画は、事前に予測しにくかったため、後からの予算オーバーや作業の遅れが問題となることが多かったといえるでしょう。
しかし、建坪をはじめとする設計情報をBIMツールで統合的に管理することにより、設計から施工、運用、維持管理に至るまで、すべてのデータを一元化して活用できるようになりました。デジタルツイン技術を導入したBIMツールでは、建物の3Dモデルを基に、建坪や運用段階のデータ(温度、湿度、エネルギー消費など)をリアルタイムで管理できます。これにより、設計段階での面積や資材の情報が施工後の運用にも活かされ、長期的なコスト予測や効率化が可能となります。
実際に、あるゼネコンではデジタルツインを活用して建物内の空調設備の故障を予測し、事前に修理スケジュールを立てることで、無駄な設備修理費用を削減したケースがあります。このような情報の統合により、建坪を含む建物の維持管理コストが削減され、プロジェクト全体の経済性が向上しました。
日本国内向けBIMツールの進化
日本では、建築基準法や設計規格が厳格で、従来のBIMツールでは基準に完全には対応できていませんでした。とくに、国内の設計基準を満たしつつ、ライフサイクル管理を統合するためのツールが不足しており、近年まで長期的なコスト予測や運営段階でのデータ管理が難しいという問題がありました。
現在は、GLOOBEやBIM6Dといった日本向けBIMツールが登場し、日本の建築基準法や設計規格に対応した設計・施工の管理が可能になっています。6D BIMを導入することで、建物の運用段階まで視野に入れた情報管理が実現し、建物のライフサイクル全体を通じて、コスト削減や効率化が可能となりました。
ゼネコンは施工後のメンテナンスコストや設備更新を事前に予測し、建坪を含む情報を一元管理することで、メンテナンス作業を最適化し、運用段階のコスト削減を実現しています。あるゼネコンでは、BIM6Dツールを用いて、新築オフィスビルの設計から施工、運営までのデータを一元管理しました。その結果、施工後の設備更新のタイミングやメンテナンスコストを予測でき、運用段階でのコスト削減を実現しています。
まとめ
建坪はもはや単なる面積を示す指標にとどまらず、建設プロジェクト全体のコスト、価値、性能を一貫して管理するための重要な要素となっています。BIMやCIM技術を活用することで、設計から施工、運用までのすべてのプロセスを効率化し、プロジェクトの価値を最大化することが可能です。ゼネコンをはじめとするBtoB関係者にとって、先進技術を積極的に導入することは、今後の建設業務における競争力強化につながるでしょう。