JASS5とは?最新版2022の改定内容・PDF入手法・2018版との違いを解説|鉄筋コンクリート工事標準仕様

建築・施工管理・設計に携わる方なら一度は耳にしたことがある「JASS5」は、鉄筋コンクリート工事の品質基準や施工条件を体系化した、日本建築学会が定める標準仕様書です。
しかし「最新版はどれ?」「2018版との違いは?」「PDFで入手できる?」など、調べても断片情報ばかりで理解しづらいのが現状です。
そこでこの記事では、2022年改定版(第16版)を基準に、変更内容・適用範囲・使い方・入手方法まで実務者目線でわかりやすく解説します。
目次
JASS5(ジャス5)とは?
JASS5(読み方はジャス5)とは、日本建築学会が発行する鉄筋コンクリート工事標準仕様書です。以下を目的に作成された技術基準であり、現在は2022年版が最新版として販売されています。
- 建築物の品質確保
- 耐久性向上
- 施工精度の均一化
たとえば建築現場では、設計図書・仕様書・施工計画書の判断基準としてJASS5が使われており、高層建築物から公共工事・民間建築まで幅広く適用されているのが特徴です。
仕様書には施工検査、材料選定、受入検査、ひび割れ制御、スラブ厚、かぶり厚、配筋基準、耐久設計の判断基準が掲載されているため、実務のなかでも頻繁に利用します。
(参考:日本建築学会「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事 2022」)
JASS規格との違い
JASS(Japanese Architectural Standard Specification)規格は、建築工事全般における標準仕様の総称です。これに対し、JASS5は27種類に分けられているJASS規格の「鉄筋コンクリート工事」に関する章が対象となっています。
- JASS1:一般共通事項
- JASS2:仮設工事
- JASS3:土工事・山留工事
- JASS4:杭および基礎工事
- JASS5:鉄筋コンクリート工事
- JASS5N:原子力発電所施設における鉄筋コンクリート工事
- JASS6:鉄骨工事
- JASS7:メーソンリー工事
- JASS8:杭および基礎工事
- JASS9~27まであり
つまり、JASS規格>JASS5という位置付けです。「JASS=大分類」「JASS5=鉄筋コンクリート編」と覚えると混乱しません。
(参考:日本建築学会「建築工事標準仕様書JASS」)
JASS5が使われる工事範囲【鉄筋コンクリート】
JASS5は、鉄筋コンクリート構造物(RC造・SRC造)における以下工程で使用されます。
- コンクリート材料選定(セメント・骨材・混和剤)
- 配合設計・単位水量・スランプ管理
- 配筋・かぶり厚・継手位置・定着長
- 打込み・締固め(バイブレーター使用など)
- 養生(湿潤養生・断熱養生)
- 構造体の寸法チェックや検査
JASS5の各章に分けて基準がまとめられているため、業務と同時進行で内容を確認し、設計検討などに活かすことが重要です。なお実務では、仕様書→施工計画→施工図→検査記録の流れで基準として活用されます。
JASS5の活用シーン一覧
JASS5は、単に設計・施工の前提基準として使うだけでなく、次のような場面で活用されます。
| 活用シーン | 使い方の例 |
| 施工計画書作成 | 材料選定・配合・検査条件の根拠として引用 |
| 配筋・打設検査 | かぶり厚さ・スランプ・強度受入判定に使用 |
| 設計仕様書の確認 | 施主要求・公共仕様・契約条件との整合確認 |
| トラブル対応 | ひび割れ・強度不良・施工差異の判断基準 |
| 建築士・施工管理技士試験勉強 | 出題頻度高い基準知識の整理 |
「判断に迷ったときはJASS5に戻る」が現場共通ルールです。
最新版「JASS5 2022(第16版)」の特徴と改定ポイント
2022年に発行されたJASS5(第16版)は、2018年版をベースに環境性能・持続可能性・施工合理化の視点が大幅に強化された改訂版です。
ここでは、2022年版と2018年版の違いをわかりやすく解説します。
JASS5 2018版との変更点を比較
最新版では、強度やICTといった新技術、環境配慮材料などに関する基準が見直されています。以下は主要な変更点の概要です。(※詳しくは書籍をご確認ください)
- 環境性能が正式に要求項目へ追加(SDGs対応)
- 材料定義の拡張(結合材・粉体概念に整理)
- 一般強度の対象範囲を48N/mm²まで拡大
- 環境区分と耐久設計の整理(劣化条件で仕様分離)
- ICT・AI含む新しい品質管理方法が採用可能に
- 再生骨材H・エコセメントが標準材料扱いへ
- 調合設計が性能規定型(W/C依存→性能軸)に変更
- 高流動・高強度・特殊用途の規定を最新技術に更新
特に今回の改訂では、基準があいまいな状態だったものが具体化されているのが特徴です。現在の現場検査や監査で確認されやすいポイントであるため、変更点の確認が欠かせません。
JASS5が4年ぶりに改定された理由
改定理由は、大きく3つあります。
まず1つ目は、国土交通省および環境省が推進するカーボンニュートラル政策と整合する仕様が求められたためです。特に、エコセメント・再生骨材・低CO2型コンクリートの活用が今後増えることを前提とした内容になっています。
(参考:環境省|脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは」)
続いて2つ目は、施工管理DX・配合設計システム・遠隔検査など、建設DXの普及に合わせて仕様根拠が必要だったためです。建設DX等に伴い、技術基準の大規模な改定が必要になりました。
そして3つ目は、国内にある建物の老朽化が著しく進行しているためです。近年、ひび割れ、鉄筋露出、仕上げ剥離などの劣化トラブルが増加し、基準の明確化が求められていました。
JASS5の改定履歴まとめ
JASS5の改訂の軌跡として、これまでの改訂履歴を表にまとめました。
| 改定年 | 改定の特徴 |
| 1953(制定) | JASS5の基礎体系を策定(鉄筋コンクリート基準の原型) |
| 1968 | 用語・材料基準の整理(現場仕様への反映開始) |
| 1975 | 配合・施工基準を明確化(施工精度向上へ) |
| 1978 | 強度体系整理・材料分類更新(生コン利用普及対応) |
| 1979(昭和54) | 「呼び強度」導入・かぶり厚変更・鉄筋規格拡張 |
| 1984(昭和59) | 型枠・養生・施工管理を強化(品質管理体系化) |
| 1986(昭和61) | 材料規格の調整・検査体系を刷新 |
| 1993(平成5) | 高強度・高流動技術対応へ基準拡大 |
| 1997(平成9) | 耐久性設計と施工検査の改良 |
| 2009(平成21) | 性能規定型システムへ転換/構造区分体系再構築 |
| 2015(平成27) | 高強度コンクリート・特殊施工の基準強化 |
| 2018(平成30) | 耐久性設計・使用材料の条件整備 |
| 2022(令和4) | SDGs対応/環境性能・ICT施工・材料多様化反映(最大更新) |
参考:日本建築学会「JASS5 鉄筋コンクリート工事標準仕様書改定の趣旨」
JASS5を入手する方法
JASS5は、一般書店ではほとんど流通していない専門資料です。購入方法としては主に以下の3つがあります。
- 日本建築学会公式サイト
- 建設系オンラインストア(建築技術書専門)
- 大学・技術研究機関の図書館(閲覧のみ)
ちなみに、日本建築学会公式サイトにおける2022年版の価格は定価9.680円(税込)です。なお建築学会員の場合には8,712円(税込)での購入が必要です。
JASS規格の種類によっては基準書の在庫がない場合もあるため、事前に在庫の確認をしておくと安心です。
JASS5 PDFの入手方法と注意点
JASS5は、日本建築学会(AIJ)が発行している規格のため、公式サイトや書籍版で入手できます。
結論として、正式に公開されたPDFは存在しません(公開されているのは改訂情報のみです)。ネット上で配布されているデータは著作権違反の可能性があるため、 実務で使用する場合は必ず正規ルートで購入し、最新版(改定履歴や版数)を確認しましょう。
JASS5に関するよくある質問【FAQ】
JASS5におけるかぶり厚さの基準は何ですか?
JASS5では、用途や構造条件などに応じて必要なスラブ厚が規定されています。たとえば、構造部材なら最小かぶり厚さは30mm、基礎なら60mmなど条件が異なるほか、屋内外のどちらに配置するのかで最小かぶり厚さが変化します。
JASS5における建物の耐用年数はどれくらいですか?
JASS5ではコンクリート構造物が基準性能を維持するための耐久設計思想が示されており、一般的に50〜65年程度の耐久性を前提としています。ただし、材料グレード、環境条件(塩害・凍害)、維持管理計画によって耐用年数は変動します。
まとめ
JASS5は、鉄筋コンクリート工事における品質確保や施工精度の基準となる重要な仕様書です。設計者だけでなく、施工管理者や現場担当者にとっても共通言語となるため、正しい読み方や適用範囲を理解することが欠かせません。
またPDF版は公式提供がないため、必ず正規ルートで最新版を入手し、改定内容や現場条件と照合しながら活用していきましょう。