国土交通省が発表した最新統計で読み解く、建設業界の受注動向と住宅市場の現状

国土交通省の月例経済データ(2025年11月号)に基づいて、建設業界の最新動向をお伝えします。

目次
建設工事の受注状況に明るい兆し
2025年9月における建設工事の元請受注高は、8兆3,713億円を記録しました。これは前年同月と比較して16.2%の増加となっており、業界全体として堅調な推移を見せています。
受注元の内訳を見ると、公共機関からの発注額は2兆4,302億円で、前年同月から6.7%の伸びとなりました。一方、民間部門からの受注は5兆9,411億円に達し、前年同月比で20.6%という大幅な増加を示しています。
ただし、下請工事の受注については3兆5,803億円と、前年同月比で3.8%減少する結果となりました。
新築住宅の着工状況は減少傾向
2025年9月の新設住宅着工戸数は6万3,570戸となり、前年同月と比べて7.3%の減少が見られました。
工事種別ごとの受注動向
土木工事分野では、元請受注高が2兆3,584億円となり、前年同月比13.2%増加しました。建築工事と建築設備工事を合わせた受注高は5兆1,516億円で、前年同月から16.8%上昇しています。さらに、機械装置等工事の受注高は8,613億円となり、前年同月比21.0%増という好調な伸びを記録しました。
地域別の受注状況に差異
三大都市圏とその他の地域における元請受注高を見ると、地域間で明確な違いが現れています。
東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)では4兆1,762億円の受注高となり、前年同月比28.8%増と大きく伸長しました。大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)は1兆1,812億円で前年同月比10.8%増、その他の地域は2兆5,537億円で前年同月比7.6%増となっています。
対照的に、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)の受注高は4,602億円で、前年同月から11.8%減少する結果となりました。
住宅種類別の着工状況
新設住宅の着工戸数を種類別に分析すると、以下のような状況が明らかになりました。
・持家:1万8,273戸(前年同月比5.6%減)
・貸家:2万8,494戸(前年同月比8.2%減)
・分譲住宅:1万6,428戸(前年同月比8.3%減)
・給与住宅:375戸(前年同月比53.7%増)
給与住宅のみが大幅な増加を示した一方で、その他の住宅タイプはいずれも減少傾向にあります。
地域ごとの住宅着工動向
新設住宅着工戸数を地域別に見ると、全ての圏域で減少が確認されました。
東京圏では2万3,009戸で前年同月比8.1%減、名古屋圏は5,521戸で前年同月比4.5%減、大阪圏は9,834戸で前年同月比12.1%減となっています。その他の地域においても2万5,206戸と、前年同月比5.0%の減少が見られました。
民間建築物の着工面積動向
2025年9月における民間建築主による建築物の着工床面積は、合計で809万平方メートルとなり、前年同月比5.1%の減少となりました。
地域別では以下の通りです。
・東京圏:242万平方メートル(前年同月比5.6%減)
・名古屋圏:102万平方メートル(前年同月比13.0%増)
・大阪圏:115万平方メートル(前年同月比6.7%減)
・その他:350万平方メートル(前年同月比8.6%減)
名古屋圏のみが増加を記録し、他の地域では軒並み減少する結果となっています。
非居住用建築物の内訳
民間による非居住用建築物の着工床面積は307万平方メートルで、前年同月比2.1%減となりました。
用途別の内訳は次の通りです。
・事務所:40万8,000平方メートル(前年同月比38.9%増)
・店舗:28万8,000平方メートル(前年同月比6.4%増)
・工場:33万6,000平方メートル(前年同月比44.6%減)
・倉庫:109万6,000平方メートル(前年同月比2.4%減)
事務所と店舗が増加した一方、工場と倉庫は減少しており、特に工場の減少幅が顕著となっています。
リフォーム市場の状況
2025年度第1四半期における建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は、合計4兆1,069億円となり、前年同期比7.6%の増加を記録しました。
内訳を見ると、住宅向けは1兆1,698億円で前年同期比2.2%減となった一方、非住宅建築物向けは2兆9,371億円で前年同期比12.0%増と好調に推移しています。
建設コストの推移
2025年8月時点の建設工事費デフレーターを見ると、建設総合では130.9ポイントとなり、前年同月から2.4ポイント上昇しました。建築総合、土木総合ともに同じく130.9ポイントと130.7ポイントをそれぞれ記録し、いずれも前年同月差で2.4ポイントの増加となっています。
これらのデータから、建設業界は受注面では好調さを維持しているものの、新築住宅市場においては慎重な状況が続いていることが読み取れます。
出典情報
国土交通省リリース,国土交通月例経済(令和7年11月号)概況,https://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/getsurei/r07/11/overview.pdf