大成建設、半導体製造装置用免震装置TASSユニット改良、震度3から震度6弱まで自動対応実現

大成建設株式会社(社長:相川善郎)は2025年11月17日、半導体製造装置向けの高性能機器免震装置『新型TASSユニット®』を改良し、機能を拡張したことを発表しました。今回の改良により、これまで対応していた大規模地震だけでなく、震度3から5弱程度の中規模地震に対しても効果を発揮するようになりました。

TASSユニット開発の背景

半導体製造装置向けの免震システム「TASSユニット」は、2009年に大成建設と株式会社エーエス(社長:森明広)が協力して生み出した製品です。当初の目的は、震度5弱以上の強い揺れから、半導体製造に使われる石英製の部品を保護することでした。

このシステムは、車輪とレールを組み合わせた転がり支承という機構をユニット化したもので、水平方向の2方向から地震の揺れを効率的に抑えることができます。2022年には設計を見直し、共通部品を増やして設置用の架台も改善した新しいタイプを開発しました。これまでに日本国内と台湾で、旧タイプと新タイプを合わせて約4000台が導入されており、導入実績は着実に増加しています。

なぜ改良が必要だったのか

近年、半導体チップに刻まれる回路はますます細かくなっており、この「プロセスノードの微細化」と呼ばれる技術進歩が進んでいます。それに伴い、比較的頻繁に発生する中規模の地震であっても、製造工程にあるウェーハなどの半導体製品が破損してしまう危険性が高まってきました。そのため、強い地震だけでなく、より弱い揺れに対しても保護機能を持つ装置が求められるようになったのです。

改良版の主な特徴

今回開発された改良版「TASSユニット」最大の特徴は、地震の強さに応じて摩擦の度合いを自動的に切り替える仕組みを採用した点です。

新しい転がり支承には、摩擦抵抗が異なる2種類の車輪が使われています。一つは従来から使用されている標準的な摩擦を持つ車輪、もう一つは摩擦が少ない車輪です。これらの車輪と、クランク状に曲がった特殊な形状のレール(切替型レール)を組み合わせることで、揺れの大きさに応じて使用する支承を自動的に切り替えることができます。

中規模の地震では装置の移動距離(ストローク)が小さいため低摩擦タイプの車輪が機能し、大規模な地震で移動距離が大きくなると標準摩擦タイプの車輪が作動します。この仕組みにより、震度3程度の比較的弱い地震から震度6弱程度の大きな地震まで、幅広い規模の地震に対して高い防護性能を実現しています。

導入しやすいコストと短納期を実現

機能が大幅に向上したにもかかわらず、改良版「TASSユニット」の基本的な構造は従来のものを引き継いでいます。そのため、導入にかかる費用は従来型と同じ水準に抑えられています。

さらに、納期の面でも優れた特徴があります。工場にある半導体製造装置の仕様や設置条件などの情報を事前に提供してもらえれば、注文を受けてから最短で1か月という短期間で納品することが可能です。主な用途は縦型炉などの半導体製造装置ですが、その他のさまざまなタイプの製造装置にも柔軟に適用できる設計となっています。

半導体産業への貢献

半導体製造の現場では、製造装置に搭載された精密部品や、製造過程にある半導体製品が地震の被害を受けると、生産ラインの停止や製品の損失につながります。今回の改良により、発生頻度の高い中規模地震から大規模地震まで対応できるようになったことで、地震による被害をより広範囲に抑えることができます。

これは結果として、半導体製造における稼働率の向上や生産効率の改善に貢献することが期待されています。

今後の展開

大成建設は、この機能を拡張した改良版「TASSユニット」を製品ラインアップに加え、国内だけでなく海外の半導体製造施設に向けても積極的に販売していく方針を示しています。半導体製造装置の種類は多岐にわたりますが、それぞれの装置に合わせた対応が可能であり、様々な規模の地震に備えることができる高性能な免震装置として、幅広い普及を目指しています。

地震が多い日本をはじめ、世界各地の半導体製造拠点において、この技術が生産活動の安定性向上に寄与することが見込まれます。

出典情報

大成建設株式会社リリース,半導体製造装置向け高性能機器免震装置・新型「TASSユニット®」を機能拡張-新開発の免震支承により中小地震から大地震まで幅広い対応が可能に-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/251117_10769.html