竹中工務店のアクティビティカード®、多様な働き方を実現するコンサルティングツールとして評価

株式会社竹中工務店は、ワークプレイス(職場空間)計画において多様化するニーズに応えるため、お客様のご要望を引き出す独自のコンサルティングツール「アクティビティカード®」を活用しています。このツールは2017年に導入されて以降、様々な施設で採用され、これまでに100件以上のプロジェクトで使用されてきました。
現代の職場では、従来とは異なる多様な働き方が求められるようになっています。そのため、利用者が本当に必要としている空間を正確に理解することが、設計において重要な課題となっています。同社が開発したこのツールは、そうした課題の解決に役立つものとして注目されています。
カードを使った新しいアプローチ
このツールは、約100枚のカードで構成されています。カードのサイズはかるたと同じで、扱いやすい大きさです。現在は3つのバージョンが用意されており、オフィス版87シーン、大学キャンパス版84シーン、自治体庁舎版100シーンのカードがあります。
それぞれのカードには、職場での具体的な活動内容が記載されています。たとえば「複数人で活発に意見を交わす」「一人で作業に没頭する」「リフレッシュのために軽く運動する」といった内容です。これらは同社がこれまで蓄積してきた経験をもとに、わかりやすい言葉で表現されています。また、各カードには活動のイメージがつかみやすいよう、写真も添えられています。
実際の使い方
施設の設計を始める際、利用者の要望を整理する段階で、このカードを使った話し合いの場が設けられます。参加者は現在の働き方や、これから実現したい理想の職場環境について、カードを選びながら意見を出し合います。
このやり方の利点は、専門的な知識がなくても参加できることです。カードを見ながら直感的に選べるため、普段は言葉にしにくい要望も表現しやすくなります。こうして集まった意見は、設計者が空間を計画する際の重要な情報となります。
なお、このツールは知的生産性に関係する多様な働き方とレイアウト計画の対応を整理した例として、建物利用者の健康や快適性を評価する仕組み「CASBEEウェルネスオフィス」のマニュアルにも紹介されています。
開発に至った経緯
竹中工務店は、職場環境を企業の成長を支える大切な資産と位置づけています。2006年からは、オフィス構築に必要なプログラミングやコンサルティングを専門に行う「ワークプレイスプロデュース本部」を設けて、オフィス構築の支援を行ってきました。
この部門では、アメリカで生まれた「プロブレム・シーキング」という手法を日本の実情に合わせて改良し、数多くのプロジェクトで活用してきた実績があります。
しかし近年、場所を選ばない働き方や、業務内容に応じて最適な場所を選択するABWなどの新しいスタイルが広まりました。それに伴い、利用者が職場に求める内容も複雑になってきたのです。そこで、これまでの手法を補う新たな道具として、このカードツールが開発されました。
利用者からの評価
2017年の導入後、多くのプロジェクトで使用されてきたこのツールには、利用者から好意的な声が寄せられています。「働き方について改めて考えるきっかけになった」「設計を担当する人に自分たちの考えを伝えやすかった」「短時間で関係者の合意が得られた」などの意見があり、実際の現場で役立っていることがうかがえます。
これまでの採用事例
このツールは、さまざまな種類の施設で採用されてきました。
主な採用施設
・企業のオフィス:ダイキン工業本社、伊予銀行本社ビル新南館、三菱電機ZEB関連技術実証棟「SUSTIE®」、デサントR&Dセンターなど
・大学施設:桃山学院大学あべのキャンパスなど
・行政施設:国分寺市役所新庁舎など
また、このツールを採用したプロジェクトのうち、13件が日本経済新聞社とニューオフィス推進協会が主催する「日経ニューオフィス賞」を受賞しています。この賞は、創意工夫に富んだオフィスづくりを表彰するもので、受賞実績からもこのツールの有効性が示されています。
今後の方針
今後は、働き方の変化に応じて、カードの内容を更新していく予定です。利用者の実際の状況や希望に合わせて、カードの調整や改良を続けていきます。
さらに、病院やまちづくりをはじめ多様なプロジェクトなど、より幅広い分野でも活用を進めていく方針です。利用者に寄り添った環境づくりを通じて、働き方に関する課題や地域の活性化といった社会的な問題の解決にも貢献していく考えです。
このように、竹中工務店の取り組みは、変化し続ける職場環境のニーズに応えるための有効な手段として、今後もさらなる発展が期待されています。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,「アクティビティカード®」の適用プロジェクトが100件以上に お客様の多様な働き方・オフィスの使い方を実現するコンサルティングツール,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/11/04/