竹中工務店、環境配慮型燃料サステオを建設現場で検証、建設重機でCO2削減へ

竹中工務店の佐々木正人社長が率いる同社は、2025年11月17日、建設工事に伴う二酸化炭素排出量の低減を目的とした実証実験を開始しました。都内の工事現場において、次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を建設重機に使用し、その実用性を確かめる試みです。

対象となるのは、江戸川清掃工場の建て替え工事現場です。ここで使用される燃料は、株式会社ユーグレナが開発した「サステオ」で、植物由来の成分を高い割合で含んでいます。この燃料は水素化処理を施した植物油を51パーセント配合したもので、従来の化石燃料に代わる選択肢として注目されています。

東京都の技術開発支援事業に採択

この検証作業は、東京都が助成する「令和6年度新エネルギー推進に係る技術開発支援事業」の助成対象となっています。具体的には「新規HVO混合燃料の開発及びサプライチェーン構築とその社会実装」というテーマで採択されました。

実証に向けた体制として、ユーグレナと竹中グループに属する2つの企業が連携しています。朝日興産の宮本靖雄社長と平野石油の平野賢一郎社長が率いる両社が、江戸川清掃工場の工事現場へ燃料を届ける役割を担います。

現場では建設機械に対して長期にわたり燃料を使い続けることで、機械のエンジンが本来持つ性能に変化が生じないか、また作業員による操縦のしやすさに問題が起きないかを確認していきます。同時に、燃料を安定して供給するための仕組みづくりや、実際の運用で浮かび上がる課題の解決にも取り組む方針です。

従来品との違いと実用上の利点

ユーグレナが生み出したこの燃料は、日本国内で定められた軽油の規格要件を満たしています。これまで市場に存在していた100パーセント植物油由来の製品は、通常の軽油と比較して密度が低いという特性がありました。

この密度の違いにより、地方税法の規定上、燃料タンクに軽油が残っている状態で継ぎ足すことができないという制約が存在していました。しかし今回の製品は、既存の軽油への追加注入が認められるため、使い勝手が大幅に向上しています。

特に建設現場を頻繁に移動するラフテレーンクレーンのように、公道を走行する機会が多い建設機械への適用が容易になります。これにより、実際の工事現場での活用範囲が広がることが期待されています。

脱炭素社会実現に向けた長期戦略

竹中工務店は「環境戦略2050」と名付けた方針に沿って、2050年までに事業活動全体でカーボンニュートラルを達成する計画を推進しています。

工事現場から排出される二酸化炭素を分類すると、燃料の直接使用による排出が全体の約75パーセントを占めています。一方、電力や熱の使用に伴う間接的な排出は約25パーセントとなっています。

竹中グループでは、2030年を目標年として、燃料使用による直接的な二酸化炭素排出量を2019年比で32パーセント削減する数値目標を掲げています。従来の軽油からサステオなど次世代バイオディーゼル燃料へ切り替えることで、この32パーセントという削減目標のうち、約20パーセント分に相当する効果が見込めると計算されています。

総合的な排出削減目標の達成を目指して

竹中グループが目指すのは、2030年までに直接排出と間接排出を合わせた二酸化炭素排出量を、2019年の水準から46.2パーセント削減することです。

この目標達成に向けて、工事で消費するエネルギー源の環境配慮型への転換を柱として、複数の施策を同時並行で進めていく構えです。燃料の見直しだけでなく、電力や熱源についても環境負荷の少ない選択肢を採用していくことで、脱炭素社会の構築に寄与していく方針を示しています。

建設業界全体で環境への配慮が求められる中、大手企業による具体的な実証実験の開始は、業界における環境対応の加速を示す動きとして受け止められています。今回の取り組みで得られた知見は、今後の建設現場における環境配慮型燃料の普及に向けた貴重なデータとなることが見込まれます。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,建設現場におけるHVO高混合軽油「サステオ」の実証実験を開始 建設重機のエンジン性能・操作性への影響を検証,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/11/03/