【2025年版】軽量コンクリートとは?1種・2種の違いからALC比較まで徹底解説

掲載日:
Category:コラム建築
Tag:建築

著者:上野 海

建物の軽量化や断熱性の向上、施工負担の軽減を目的に、近年多くの現場で採用が増えているのが「軽量コンクリート」です。一般的な普通コンクリートよりも比重(単位容積質量)が小さく、1種・2種・ALC(軽量気泡コンクリート)など複数のタイプが存在し、用途に応じて使い分けられます。

そこでこの記事では、軽量コンクリートの種類・特徴・比重・強度・配合・用途をわかりやすく解説します。

軽量コンクリートとは?

軽量コンクリートとは、普通コンクリートよりも比重(単位容積質量)が小さく、構造物の自重を大幅に軽減できるコンクリートの総称です。JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)では「軽量コンクリート」として位置づけられ、1種・2種の規定や配合条件が明確に示されています。

(参考:全国生コンクリート工業組合連合会「JIS A 5308 レディーミクストコンクリート

改正案の概要」

たとえば、コンクリートを軽量化することにより「建物の荷重を減らす」「高層建築や改修で有利になる」「断熱性・遮音性が高い」といった利点を生み出せます。

一方で、軽量骨材は内部に空隙が多く吸水率が高いため、配合や水量調整には注意が必要です。

普通コンクリートや軽量気泡コンクリート(ALC)との違い

軽量コンクリートを理解するうえで重要なのが、「普通コンクリート」「軽量気泡コンクリート(ALC)」との違いです。以下にそれぞれの違いを整理しました。

項目普通コンクリート軽量コンクリート 1種軽量コンクリート 2種ALC(軽量気泡コンクリート)
比重(単位容積質量)約 2.3〜2.4 t/m³約 1.8〜2.1 t/m³約 1.4〜1.8 t/m³約 0.5〜0.7 t/m³
主な骨材砕石・砂粗骨材のみ人工軽量骨材粗骨材+細骨材も軽量骨材石灰質・けい酸質原料+気泡
構造区分RC造の主要構造部材RC造構造部材RC造構造部材(より軽量)S造の非構造部材(外壁・屋根)
圧縮強度高い(~40N/mm²)普通とほぼ同等やや低め構造耐力なし(非構造材)
ヤング係数高い普通より低いさらに低いかなり低い
断熱性低い普通普通〜やや高い非常に高い(気泡が多い)
遮音性普通高い(多孔構造)高い高いが厚みに依存
耐火性普通普通普通非常に高い(ALCの特徴)
主な用途梁・柱・スラブ高層建築/屋根押え改修・荷重制限現場外壁材・屋根材・間仕切り・カーテンウォール

参考:国土交通省「公共建築工事標準仕様書(建築工事編) 令和 3 年 3 月 25 日 国営建技第 19 号|第6章 コンクリート工事」などを参照

たとえば、普通コンクリートは梁や柱といった主要構造部に用いられるのが特徴です。これに対し軽量コンクリート(1種・2種)は荷重制限などがある構造体に使えます。主にRC造向けとして適用可能です。一方でALCは、外壁パネル・屋根材などの二次製品(非構造材)に使われます。 

比較表に登場した項目・数値情報については、以下より詳しく解説していきます。

また、モルタルやセメントとの違いをチェックしたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

軽量コンクリートの基礎知識(用途・種類・強度など)

ここでは、軽量コンクリートの基礎知識として、以下の情報を整理しました。

  • 用途
  • 種類
  • 比重(単位容積質量)
  • 強度(圧縮・引張・曲げ・付着)
  • 経済性

軽量コンクリートの用途|構造体・非構造材で異なる使い方

軽量コンクリートは、建物の荷重を減らしたい場面や断熱・耐火性を高めたい部位で使われます。

たとえば次のように、構造体として扱える軽量骨材コンクリートと、外壁材などに使うALCでは用途が大きく異なるのが特徴です。

  • 構造体:梁・床・スラブ・屋根押え(1種・2種)
  • 非構造材:外壁パネル・屋根材・間仕切り(ALC)
  • 改修現場:床の増し打ち・荷重制限対応

RC造の軽量化、高層建築の荷重調整、外壁の断熱性向上など、現場条件に応じて最適な種類を選定することが重要です。

軽量コンクリートの種類|1種・2種の違いとALCの位置づけ

軽量コンクリートは大きく「軽量骨材コンクリート(1種・2種)」と「軽量気泡コンクリート(ALC)」に分類され、それぞれ規格や用途が異なります。

種類特徴主な用途
1種粗骨材のみ軽量RC造の構造部材
2種粗+細骨材も軽量より軽量化が必要な構造部位
ALC気泡入り二次製品外壁・屋根・間仕切り

1種・2種は主に生コンとして構造体に使われ、ALCは外壁用の軽量パネルとして施工されます。

またALCの概要を詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

軽量コンクリートの比重(単位容積質量)

軽量コンクリートの最大の特徴は「軽さ」であり、比重(単位容積質量)が普通コンクリートより大幅に小さくなっています。

種類比重(t/m³)
普通コンクリート約2.3〜2.4
軽量1種約1.8〜2.1
軽量2種約1.4〜1.8
ALC約0.5〜0.7

重量低減により、構造スリム化・改修工事の荷重調整・高層建築の負担軽減に寄与できるのが軽量コンクリートの強みです。

軽量コンクリートの強度(圧縮・引張・曲げ・付着)

軽量コンクリートの強度は、普通コンクリートとほぼ同等の圧縮強度を確保できますが、ヤング係数・曲げ・引張はやや低い傾向があります。

圧縮強度:普通と同等(1種)

引張強度:普通の約1/9〜1/15

曲げ強度:普通の約1/6〜1/10

付着強度:普通と同程度

(参考:人工軽量骨材協会「技術情報・建築編」

軽量骨材は吸水性が高いことで空隙が多く、変形性能が異なるため、構造設計時はヤング率を考慮しなければなりません。

軽量コンクリートの経済性

軽量コンクリートは材料単価こそ高いものの、自重が軽くなることで鉄筋量・鉄骨量・基礎規模が縮小できるため、構造全体としてのコストを下げやすいのが特徴です。

項目普通コンクリート軽量コンクリート(1種)結果
材料単価
(呼び強度18想定)
15,300円/m³24,800円/m³高い
建物総重量基準約5〜10%軽減軽量
鉄骨量基準約4〜5%削減減少
基礎寸法基準小規模化可能減少
総工事費100%約94〜95%約4,600万円の削減例あり

参考1:新潟生コンクリート協同組合「生コンクリート標準価格表」

参考2:人工軽量骨材協会「技術情報・建築編|軽量コンクリートの経済性」

軽量コンクリートの作り方|現場・工場での製造プロセス

軽量コンクリートは、現場出荷される軽量骨材コンクリート(生コン) と、工場で製造されるALC(軽量気泡コンクリート) の2系統で、それぞれ作り方が異なります。

軽量骨材コンクリート(1種・2種)の製造手順

  1. 軽量骨材の含水調整(プレウェッティング)
  2. 配合設計(水セメント比・単位水量の調整)
  3. セメント・骨材・混和剤の計量
  4. ミキサーで練り混ぜ(混練時間を長めに設定)
  5. スランプ・空気量・比重の品質確認
  6. 現場へ出荷

人工軽量骨材(膨張スラグ・焼成シェルなど)を使用する生コンであり、普通コンクリートと同様に生コン工場で製造されます。骨材の吸水率が高いため事前吸水処理や水量調整が重要です。

ALC(軽量気泡コンクリート)の製造手順

  1. 発泡(スラリー中でアルミ粉が反応し気泡を発生)
  2. 整形(型枠内で膨張し、ブロック状に成形)
  3. 蒸気養生(高温・高圧のオートクレーブで強度発現)
  4. 切断(規格寸法としてパネルやブロックに切断)

工場で完全に成形される二次製品で、軽量・断熱・耐火の性能が安定しています。内部に微細な気泡をつくるため、コンクリートとは異なる専用プロセスで製造されます。

軽量コンクリートのメリット・デメリット

軽量コンクリートは、その名の通り「軽さ」を武器にした材料であり、構造計画・耐震計画・コスト最適化の観点で大きな利点を持ちます。一方で、吸水性や強度など、普通コンクリートとは異なる注意点もあるため、種類(軽量骨材・ALC)に応じた使い分けと施工管理が欠かせません。

ここでは、軽量コンクリートのメリット・デメリットを種類ごとに紹介します。

軽量骨材コンクリート(1種・2種)のメリット・デメリット

軽量骨材コンクリートは、構造体にも使用できる唯一の軽量材料です。

自重が減ることで構造計画の自由度が上がり、躯体コスト削減にも寄与します。一方で、吸水性が高く品質管理の難度が上がる点は注意が必要です。

メリットデメリット
構造体の軽量化で地震力を低減吸水率が高く品質管理が難しい
鉄骨量・基礎規模の縮小でコスト減圧送性が低くポンパビリティに注意
高層建築で効果大ヤング係数が低く変形が大きい
スラブのたわみ抑制に有利(1種)材料単価は普通コンクリートより高い

軽量気泡コンクリート(ALC)のメリット・デメリット

ALCは、軽量・断熱・耐火性に優れた「外壁材」として普及しています。

パネル化されているため施工も早く、均一な品質が得られますが、構造材としては使用できず、防水や仕上げで注意が必要です。

メリットデメリット
圧倒的な軽さ(比重0.5〜0.7)防水処理を怠ると吸水しやすい
高い断熱性・耐火性仕上げの経年劣化に注意
工場製品で品質が安定構造体としては使えない
施工が早く工期短縮につながる固定金物設計に配慮が必要

軽量コンクリートについてよくある質問【FAQ】

普通コンクリートとの強度差は?

軽量コンクリートは、圧縮強度そのものは普通コンクリートと大きな差がありません(JIS基準)。ただし、引張・曲げ・ヤング係数は低めで、変形がやや大きい点は設計で配慮が必要です。

軽量生コンとは何?

軽量生コンとは、人工軽量骨材や天然軽量骨材を使用し、比重を下げた生コンクリートのことです。構造物の自重を軽くできるため、高層建築の床スラブや改修工事で採用されます。普通生コンより吸水率が高く、配合設計と施工管理が重要です。

軽量コンクリートの比重は?

軽量コンクリートの比重(単位容積質量)は、1種で約1.8〜2.1t/㎥、2種で約1.4〜1.8t/㎥が一般的です。普通コンクリート(約2.3〜2.4t/㎥)より10〜40%軽く、ALCはさらに軽い0.5〜0.7t/㎥です。用途に応じて種類を使い分けます。

まとめ

軽量コンクリートは、1種・2種・ALCで性能も用途も大きく異なる材料です。

構造体の軽量化によるコストメリット、断熱・耐火性能、非構造材としての施工のしやすさなど、多くの利点があります。一方で、吸水性・強度・施工管理には種類ごとの注意点があるため、現場条件に合わせた最適な選択が欠かせません。

種類で用途が異なるため、設計条件に合わせて材料を選定しましょう。