【2025年最新版】建築確認申請が不要な建物とは?10㎡以下・カーポート・小屋・倉庫の基準を徹底解説

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Category:コラム建築

著者:上野 海

家の庭に「ちょっとした小屋やカーポートをつくりたい」と考えたとき、気になるのが建築確認申請が必要かどうかという点です。

建築確認申請は、建物が建築基準法に適合しているかを確認する重要な手続きです。しかし、一定の条件を満たす場合は「申請不要」となるケースもあります。

この記事では、建築確認申請が不要な建物の条件・注意点・2025年改正後のポイントを、国交省一次情報を交えながらわかりやすく解説します。

建築確認申請とは?必要な理由をわかりやすく解説

建築確認申請とは、建物を建てる前に法律上の安全基準に適合しているか確認を受ける手続きのことです。

国土交通省が定める建築基準法第6条にもとづき、原則としてすべての新築・増築・改築に義務づけられています。

(出典:e-Gov法令検索「建築基準法|第6条」

この制度は、地震や火災などの災害から人命や財産を守るための最低限のチェックを行う仕組みです。建築士や施工会社を通して申請し、確認済証の交付を受けてから着工するのが原則で

まずは不要な条件を説明する前に、建築確認申請の基本について紹介します。

なぜ建築確認申請が必要なのか

建築確認申請は「安全な街づくり」を支えるための制度であり、構造・防火・衛生などの基準を満たしているかを確認する制度です。

もしこの確認制度がなければ、違法建築や安全基準を満たさない建物が乱立し、次のような災害被害が拡大してしまうリスクが高まります。

  • 火災延焼
  • 倒壊
  • 浸水

事前の確認をすることで、甚大な被害を未然に防止できるのがメリットです。「小さな増築だから不要」と自己判断せず、建築士・確認検査機関に事前相談することが欠かせません。

建築確認を怠った場合のリスク

建築確認申請をせずに建てると、罰則や撤去命令などの法的リスクが発生します。

建築基準法第99条では、確認を受けずに建築した場合に、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される可能性があります。また、違法建築物として住宅ローンの利用・登記・売却ができないなど、経済的な損失も大きいです。

(出典:e-Gov法令検索「建築基準法|第99条」

そのため、「建築確認が不要」だと思い込むのは危険です。事前確認→安全施工→将来の安心という流れを守ることが、結局はコスト削減につながります。

より詳しく建築確認申請の概要を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

建築確認申請が不要になる主なケース【早見表】

建築確認申請は原則すべての建築に必要ですが、一定の条件を満たす場合は「申請不要」になります。

ただし、面積・地域・用途・構造などの条件をひとつでも外れると、確認申請が必要になるケースも多いため注意が必要です。ここでは、代表的な「不要となるケース」を早見表で整理し、「なぜ不要なのか」「どんな注意点があるのか」をわかりやすくまとめました。

ケース条件注意点
①床面積10㎡以下の建物防火・準防火地域外で、居住用途でない物置・プレハブ小屋など
②都市計画区域外の小規模建築物木造・2階以下・延床200㎡以下新3号建築物(2025年以降)
③仮設建築物30㎡以内、3ヶ月以内の使用工事現場・応急施設など
④減築(建物を小さくする)構造に影響がない増築を伴う場合は要確認
⑤内装・模様替え工事構造を変えない範囲壁紙・フローリング交換など
⑥文化財・指定建築物特別法に基づく許可で代替文化財保護法対応

上記の6項目について、以下より詳しく解説していきます。

【1】床面積10㎡以下なら建築確認申請は不要?

「10㎡以下なら建築確認申請はいらない」と聞いたことがある人も多いでしょう。

確かに、建築基準法第6条第1項第4号に基づき、一定条件を満たす10㎡以下の建築物は申請不要とされています。

しかし、これはあくまで限定的な特例です。「防火地域内」や「居住用」などの場合は対象外となり、申請が必要になるケースが多くあります。誤解したまま建てると違法建築と見なされ、後から撤去命令や罰則を受ける可能性もあるため、以下より詳しく不要の条件を解説します。

「10㎡以下」とはどのくらい?

10㎡は約3坪(畳6枚分)で、庭に置く物置やプレハブ小屋程度の大きさです。次のように、家庭菜園の倉庫やバイクガレージなどが該当します。

  • 幅3.6m × 奥行き2.8m × 高さ2.5mの物置(約10㎡)
  • プレハブ製の家庭菜園ハウス(約8㎡)
  • 小型木造倉庫(約9㎡)

これらは防火地域外で、居住・事務用途でなければ申請不要となります。ただし、10㎡を超えると即座に申請が必要です。面積を測る際は「外壁中心線での面積」を基準とする点にも注意しましょう。

防火地域・準防火地域では例外

10㎡以下の建物であっても、防火地域・準防火地域に建つ建物は、面積に関係なく建築確認が必要です。

火災の延焼防止を目的として、建築基準法第61条・第62条により、防火地域内では「屋根・外壁の不燃化」が義務づけられています。そのため、1㎡でも建築確認の対象になります。

(出典:e-Gov法令検索「建築基準法|第61条・62条」

居住用や事務所利用は対象外

人が継続的に利用する建物(住宅・事務所・店舗など)についても、面積に関係なく建築確認が必要です。

特に、用途が「居住・労働」に関わる場合は、構造や安全性の基準が厳しく設定されています。換気・採光・耐震基準など、人命に関わる要素が多いため免除されません。

【2】カーポート・ガレージが不要となる条件

カーポートやガレージは、屋根があるため基本的には「建築物」とみなされ、建築確認申請が必要です。ただし、次のような設置方法や使用目的によっては申請不要になるケースもあります。

  • 床面積が10㎡以下
  • 基礎固定がない
  • 防火地域・準防火地域外
  • 一時的な利用

ただし、恒久的な利用や地面への固定・電気設備の有無によっては建築確認申請が必要です。建築基準法では「建築物」を土地に定着して使用される構造物と定義しており、これに該当すれば規模を問わず確認申請が求められます(法第2条第1号)。

設置内容申請の要否理由
コンクリート基礎で固定土地に定着しているため建築物扱い
電動シャッター付きガレージ恒久的構造・電気設備あり
鉄骨・アルミ製の2台用カーポート構造強度を確認する必要あり
テント型・組立式カーポート不要仮設扱い(固定なし・可動式)

※上表はあくまで目安です。自己判断せず、必ず自治体や確認検査機関に問い合わせをしてください。

【3】倉庫・ユニットハウスなどが不要なケース

倉庫やユニットハウスでも「仮設扱い」であれば建築確認申請は不要です。

ただし、恒久的な利用や地面への固定・電気設備の有無によっては申請が必要になるため、使用目的が重要です。

まず建築基準法では「建築物」を、土地に定着して使用される構造物と定義しています。そのため、ユニットハウス・コンテナ倉庫・仮設プレハブなどでも、基礎固定・電源接続・断熱加工を行うと「定着構造」とみなされ、建築確認が必要です。

逆に、短期間の仮設現場事務所や移動可能なコンテナ倉庫であれば、建築確認の対象外になります。

設置内容申請の要否理由
現場用プレハブ事務所(仮設3ヶ月)不要仮設・定着性なし
コンテナ倉庫(基礎なし・電源なし)不要移動可能構造
工場用ユニットハウス(基礎固定・電源接続)恒久利用・定着構造
屋外物置(10㎡超)建築物扱い
(施行令第1条)

※上表はあくまで目安です。自己判断せず、必ず自治体や確認検査機関に問い合わせをしてください。

【4】減築・リフォームで不要になるケース

既存建物の構造を変えない「軽微なリフォーム」や「減築」は、建築確認申請が不要です。ただし、構造耐力・用途・面積を変更する場合は申請が必要となります。

たとえば建築基準法第6条では、「新築・増築・改築・移転」に該当する工事には建築確認を義務づけています。一方で、「模様替え」「修繕」「軽微な改築」は対象外とされており、耐震・防火性能に影響を与えない範囲であれば、届け出が不要です。

工事内容申請要否理由
内装の張替え・壁紙・床材の変更不要構造に影響なし
屋根の葺き替え(同材質)不要構造変更なし
減築して床面積を減らす不要建物規模縮小のため
木造→鉄骨造に変更構造区分変更
間仕切り壁を撤去して耐力壁に影響構造耐力に関係

※上表はあくまで目安です。自己判断せず、必ず自治体や確認検査機関に問い合わせをしてください。

【5】都市計画区域外で不要となる建築

都市計画区域外(いわゆる白地地域)では、建築確認申請が不要な建築も多く存在します。ただし、用途地域外でも一部の建築物には制限があるため、自治体への確認は欠かせません。

まず、建築基準法の建築確認制度は、都市計画区域・準都市計画区域内の建築物に適用されます。そのため、市街化調整区域外・都市計画区域外では、特定行政庁が指定した構造物を除き、建築確認は不要となります。

ただし、農地転用・景観条例・高さ制限・道路斜線制限など、別法令の規制がかかるケースもある点に注意が必要です。

地域建築物申請要否補足
都市計画区域外木造平屋10㎡不要法第6条対象外
都市計画区域外鉄骨2階建て住宅構造規模による
準都市計画区域倉庫・工場条例指定あり

※上表はあくまで目安です。自己判断せず、必ず自治体や確認検査機関に問い合わせをしてください。

【6】文化財・指定建築物は申請が不要

文化財や歴史的建造物は、建築基準法の建築確認義務が免除される場合があります。ただし、文化庁・自治体の許可制度によって別の手続きが必要です。

たとえば建築基準法第3条では、「国宝・重要文化財・登録有形文化財」などは特例建築物として扱われ、建築確認・検査の適用を除外できる旨が定められています。一方で、文化財保護法や景観条例に基づく届出・許可は必須です。

(出典:e-Gov法令検索「建築基準法|第3条」

建物区分建築確認代替手続き備考
国宝・重要文化財不要文化庁への届出建築基準法第3条適用
登録有形文化財不要自治体教育委員会へ届出修繕・保存は許可制
伝統的建造物群保存地区不要景観計画に基づく許可景観法適用

※上表はあくまで目安です。自己判断せず必ず自治体等に問い合わせをしてください。

建築確認申請をしないとどうなる?【罰則とリスク】

建築確認申請が必要な工事で申請を行わずに着工すると、その建築物は「違法建築」となり、次のような面で大きな不利益を被る可能性があります。

  • 是正命令(撤去・改修)
  • 工事停止命令
  • 行政代執行
  • 刑事罰(罰金・懲役)
  • 資金調達
  • 売買契約
  • 保険加入

所定の手続きを経ていない建築は、安全性や周囲への影響が担保されないため、行政が是正措置で公衆の安全を確保します。是正に従わない場合は刑事罰や強制執行の対象となる点に注意してください。

なお、後から建築確認を取れば問題ないと思われがちですが、その条件にあてはまる建物は一部だけであり、既に着工・完成している場合は行政の判断が厳しく、是正(改修・撤去)指示や罰則の対象になりやすいです。

事後申請は簡単ではなく、金融・売買・保険等で不利益が残る点に注意してください。

また、建築確認申請で罰則等を受けないためには、建築確認済証を受領しておく必要があります。内容については。以下の記事で詳しく解説しています▼

2025年4月の法改正でどう変わる?【4号特例廃止】

建築確認申請の制度において、2025年4月1日から、いわゆる「4号特例」の対象範囲が大きく見直されました。

これまでは比較的簡易な小規模建築物(木造2階以下など)に対して構造・防火審査の省略が認められていましたが、改正により多くの建築物に対し確認申請・図書提出・省エネ基準適合の義務付けが強化されます。

対してこれからは、「新2号建築物」として木造2階建て以上、または木造平屋で延べ面積が200㎡超の建築物も、確認審査の対象となります。

建築・リフォームを計画中の方は、2025年4月以降の「着工日」を必ず確認し、新制度の対象かどうかを事前に設計士や施工業者に確認することが重要です。

(参考:国土交通省「2025年4月(予定)から4号特例が変わります」

建築確認申請が不要な建物についてよくある質問【FAQ】

建築確認申請は10㎡以下なら不要ですか?

原則として、床面積が10㎡以下かつ防火地域・準防火地域外であれば、建築確認申請は不要です。ただし、地面に固定したり、居住・事務所として使う場合は「建築物扱い」となり、申請が必要になることがあります。

2025年以降、不要な建物の基準は変わりますか?

2025年4月の4号特例廃止により、構造や規模を問わず、多くの建物で確認申請が必要になります。特に木造2階建て以上や延べ200㎡を超える建物は審査対象となり、省エネ性能や構造安全性の確認が義務化されます。

申請をせずに建てた場合はどうなりますか?

確認申請が必要な建物を無申請で建てると、違法建築物となり、行政から是正命令・工事停止命令・撤去命令を受けることがあります。さらに、売却・融資・保険契約で不利になり、資産価値の低下にもつながります。

カーポートやユニットハウスも対象ですか?

屋根付きで地面に固定されているカーポートやユニットハウスは「建築物」とみなされ、原則として建築確認申請が必要です。ただし、可動式や仮設型など基礎を固定しない構造であれば不要となる場合もあります。

まとめ

建築確認申請が不要になるケースは、「床面積10㎡以下」「防火地域外」「仮設・非固定構造」など、ごく限られた条件に該当する場合に限られます。

また、2025年4月の**法改正(4号特例廃止)により、これまで簡易に扱われていた小規模建築物でも、構造・省エネ性能などの審査が求められるケースが増えます。

そのため、これからの建築確認申請では、「小屋や倉庫を建てたい」「カーポートを設置したい」「ユニットハウスを置きたい」といった場合でも、事前に確認申請が必要か必ずチェックしましょう。