建築現場で使われる「ネコ」とは?由来から金物・土台・規格まで徹底解説

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Category:コラム建築

著者:上野 海

建築現場で「ネコ」と呼ばれるものをご存じでしょうか。猫のようにかわいらしい名前ですが、実際は一輪車・金物・土台など、現場で欠かせない道具や部材を指します。

しかし、「ネコ車」と「ネコ金物」はまったく用途が異なり、混同すると施工ミスや発注トラブルの原因にもなります。

この記事では、建築用語の「ネコ」について、由来・種類・使い方・規格までをわかりやすく解説します。

建築用語「ネコ」とは?

建築業界で「ネコ」と呼ばれるものは、主に3つの用途で使われています。

コンクリートや砂利を運ぶ一輪車、鉄骨部材を固定するための金物(ネコ金物)、そして基礎と土台の間に入れる「ネコ土台」です。

それぞれの「ネコ」は形状・目的が異なりますが、「狭い場所で軽快に動く」「猫の足のような形をしている」といった共通点があります。ここでは、それぞれの「ネコ」について紹介します。

一般的な「ネコ(一輪車・手押し車)」

建築現場で「ネコ持ってきて」と言われた場合、まず指すのは一輪車(ネコ車)です。

土砂・モルタル・廃材などを人力で運ぶための道具で、狭い足場や通路でも作業できる利便性があります。なお、一般的な土用ネコは約0.05〜0.07㎥、コンクリート用は約0.06㎥が目安です。

(参考:土木学会「土木用語に見られる身近な生き物(ネコ)」

金物としての「ネコ金物(アングル・ネコ材)」

鉄骨・木造問わず建築材として用いられるのが「ネコ金物(ネコ材)」です。

これはL字型アングルの金属部材で、鉄骨柱や梁を補強・固定する際に使用します。以下に材質や形状を整理しました。

項目内容
材質鋼板・ステンレス
形状L字型(90°)
用途鉄骨・木造の接合部固定
サイズ目安一般的には3.2t×40×40〜75×75mm前後

さらに、メーカーによっては「ネコピース」「ネコ座金」という呼称も見られます。

その他の「ネコ」用語(ネコ土台・鉄骨ネコなど)

建築現場では、さらに以下のような「ネコ」呼称が存在します。

  • ネコ土台:基礎と土台の間に設置する換気・高さ調整用のスペーサー
  • 鉄骨ネコ:鉄骨の建て入れ時に仮支持する補助金物
  • ネコ立米:ネコ車1杯分の体積を意味する現場俗語(例:0.06㎥)

これらは地域・職種ごとに意味が異なるため、施工仕様書や監督指示書を必ず確認して用語を使いましょう。

また、建築全般で用いられる専門用語を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

建築用語で「サル」とは何ですか?

「ネコ」と対になる言葉として、建築現場でよく耳にするのが「サル」です。以下に2つの用語の違いを整理しました。

用語意味使用箇所
サル引っ掛け金物、仮設固定具足場・仮設配管
ネコ支持・運搬用具現場全般

主に足場の支柱を固定する金具(猿環)や引っ掛け金物を指します。語源は「ぶら下がる姿がサルに似ている」ことから来ていると言われています。

「ネコ」という呼び名の由来・語源

「ネコ」という名称の由来には、形状・動作・文化的背景の3要素が関係していると言われています(諸説あり)。

現場のベテランほど自然に使う言葉ですが、正式な定義はなく、現場用語・俗語として定着しています。

一輪車の「ネコ車」が猫に見えるという説

もっとも一般的なのが「猫のように見える」という説です。

ネコ車を伏せたときの形状が「丸まって寝る猫の背中」に似ているというものであり、そのままの形状をイメージして生まれたと考えられています。また、狭い場所でもすり抜ける姿勢が猫の動きに通じることから、自然と「ネコ」と呼ばれるようになったとも考えられています。

金物の「ネコ」が猫の足・足跡に似ているという説

金物の場合、「ネコ」の呼称はL字アングルが猫の足に見えることが由来とされています。

現場では「足が出ている」「踏ん張っている」という形象が親しまれ、鉄骨の“支える”役割にぴったりな名前として広まりました。このように「ネコ」は、形状と機能を言葉で象徴的に表現する、日本的な現場文化の一例でもあります。

建築用語の「ネコ」に関連するよくある質問【FAQ】

建設用語で「ネコ」とは何ですか?

建設用語で「ネコ」とは、主に一輪車(ネコ車)や金物(ネコ金物)を指す現場の俗称です。コンクリートや砂利を運ぶ際に使う「運搬用具」としてのネコ、鉄骨や木造建築で部材を固定する「L字アングル金物」としてのネコのほか、スペーサーは「ネコ土台」、鉄骨の建て入れ時に仮支持する補助金物を「鉄骨ネコ」と呼ぶ場合もあります。

建築でネコ材とは何ですか?

「ネコ材」とは、鉄骨建築や木造住宅で接合部を補強・固定するためのL字型アングル金物のことです。小型ながらも強度確保に重要な役割を持ち、柱や梁を安定させます。通称「ネコアングル」「ネコ座金」と呼ばれることもあります。

建築で「ネコ」と呼ばれるのはなぜですか?

「ネコ」と呼ばれる理由は、形や動きが猫に似ていることに由来します。一輪車の場合は、伏せた姿が丸まった猫の背中のように見えることから、金物の場合はL字型の形状が猫の足に似ているとされます。猫が日本で古くから愛されてきた動物だからこそ生まれた名称だと言えます。

建築用語で「サル」とは何ですか?

「サル」は、足場や仮設工事で使用される引っ掛け金具(猿環)や、資材を吊るための補助具を指す現場用語です。「ネコ」が支える・運ぶ用途で使われるのに対し、「サル」はぶら下げ・引っ掛ける動作に由来します。語源は、金具がぶら下がる姿がサルに似ていることからであり、どちらも動物名を使った建築業界特有の親しみある呼称です。

まとめ

建築用語の「ネコ」は、現場で生まれた知恵と文化の象徴です。一輪車を指す「ネコ車」から、L字アングルの「ネコ金物」、基礎部の「ネコ土台」まで、用途は異なっても「支える・運ぶ」という共通点があります。

その名の通り、猫のように身軽で頼れる存在です。建築の現場で見かけた際は、ぜひ意味を理解したうえで活用してみてください。