建築用語「マリオン」とは?マンションの壁・バルコニーでの役割やPC工法までわかりやすく解説

建築業界でよく耳にする「マリオン」は、マンションや高層ビルの外壁に使われることが多い部材です。しかし、実際にどんな役割を果たしているのかご存じでしょうか。
そこでこの記事では、建築用語のマリオンについて、役割や活用例、建築工法をわかりやすく解説します。
目次
マリオンとは?建築用語の意味

出典:国土交通省「各部詳細図(PDF)」
建築におけるマリオンとは、開口部に設けられる「垂直の部材」のことです。
- 窓
- ドアなど
英語のmullionに由来しており、日本語では「方立(ほうだて)」と同じ意味を持っています。また、マリオンは壁そのものの荷重を支えるのではなく、窓やガラスパネルを支えるのが特徴です。
特に、アルミニウムやスチールなど軽量かつ強度のある素材が用いられており、施工性の高さから、ビルや大規模建築物などで採用されています。
マリオンに関する概要は以上のとおりですが、ほかにも建築関係の用語を詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼
「方立」との違い
「方立(ほうだて)」とは、「マリオン」と同じく窓や戸などを連結する際に縦に設置される部材です。マリオンとほぼ同義語として使われており、方立は和名、マリオンは英名という位置づけになります。
なお、方立は建具用語として古くから用いられ、主に窓や扉の枠を縦に区切る部材を指します。一方、マリオンは近代建築において、特にカーテンウォールの縦材として使われることが多い点が特徴です。そのため、用途やスケール感に若干のニュアンスの違いがあります。
マリオン(縦材)と無目(横材)の関係
マリオンが「縦材」であるのに対し、無目(むめ)は「横材」にあたります。
無目は英語で「transom」と呼ばれ、窓や扉の上部に水平に取り付けられる部材です。両者を組み合わせることで、建物の外壁は縦横に安定し、デザイン性と機能性が両立します。
マリオンの役割と機能
マリオンは、建築において「開口部を縦に仕切る補助材」として機能します。以下に、主な役割を整理しました。
- 開口部の縦方向を安定させる
- 窓ガラスやパネルの保持力を強化する
- 建築物の意匠性を高める
- 荷重を支えないため軽量化に貢献する
- 災害時の安全性を向上させる
単に開口部を仕切るだけでなく、デザイン性や安全性の確保など多面的な役割を担います。特にマンションや高層ビルの外装では欠かせない部材です。

出典:東京建築祭「有楽町マリオン(有楽町センタービル)」
また、東京建築祭の公式サイトでは、おしゃれなマリオンが施工されている「有楽町センタービル」の事例も掲載されています。
マンションにおけるマリオンの活用(外壁・バルコニー)
マンションでは、マリオンが外観デザインと安全性を両立させる要素として欠かせません。
まず外壁では、縦のラインを強調し、建物全体をシャープに見せると同時に、ガラスや外装パネルを安定的に支持します。
また、バルコニーに設置されるマリオンは手すりや壁の強度を補い、落下防止の安全性を確保する役割も果たすのが特徴です。
さらに両方に共通するポイントとして、統一感のある外観をつくり出せるのが魅力です。分譲マンション広告などでも、マリオンは高級感の象徴として打ち出されるケースが増えています。
マリオン方式と建築工法
マリオンは「部材そのもの」だけでなく、建築工法のなかで重要な位置を占めています。
特にカーテンウォール工法においては、外壁を軽量化しつつ意匠性を高める手法として、マリオン方式やPCカーテンウォールが広く採用されています。ここでは代表的な3つの工法を解説します。
カーテンウォール工法におけるマリオン方式
マリオン方式(ノックダウン方式)は、高層ビルやマンションで一般的に使われる工法です。
上下階の梁や床にマリオンを掛け渡し、その縦材にガラスやスパンドレルパネルをはめ込んで外壁を形成します。
PCカーテンウォール(マリオンPC建築)
PCカーテンウォールとは、プレキャストコンクリートで製作した外壁パネルを用いる工法です。
マリオンと組み合わせることで、高い耐火性・遮音性・断熱性を確保できます。
バックマリオン方式
近年、増加傾向にあるのが「バックマリオン方式」です。
従来のマリオン方式ではマリオンが表面に出ますが、この工法ではガラスをマリオンの前に取り付けることで、外観がシームレスな全面ガラス張りに見える仕上がりとなります。
マリオンについてよくある質問【FAQ】
建設用語のマリオンとは?
建築用語の「マリオン」とは、窓や開口部を縦に仕切る垂直部材のことです。英語の「mullion」に由来しており、日本語では「方立(ほうだて)」と同義です。建物の荷重を直接支えるのではなく、ガラスやパネルを支持する補助的役割を果たし、外観デザインの縦ラインを強調する意匠性も担います。
バルコニーのマリオンとは何ですか?
マンションなどのバルコニーに設けられるマリオンは、手すりや外壁を縦に補強する部材です。安全性の向上に加え、外観を引き締めるデザイン効果も持ちます。特に高層マンションでは、ガラス手すりや外装材と組み合わせることで落下防止や耐風性を高め、統一感のあるファサードを生み出す要素となります。
建築用語で「ばちってる」とは?
「ばちってる」とは、建築現場で使われる職人用語のことです。部材や仕上げが正しくかみ合わず、微妙にずれている状態を指しており、たとえば、壁材や金物の接合部にすき間がある場合に「ばちってる」と表現されます。公的な建築用語ではありませんが、施工精度や仕上がり確認の際に現場で頻繁に使われる言葉です。
建築におけるマリオン方式とは?
マリオン方式とは、カーテンウォール工法で採用される代表的な手法のひとつです。上下の梁や床にマリオン(縦材)を掛け渡し、その枠にガラスやパネルをはめ込んで外壁を構成します。
まとめ
マリオンは建築における単なる縦材ではなく、外観デザインの印象や建物の安全性に深く関わる重要な部材です。
特に、マンションの外壁やバルコニーでは、縦ラインを際立たせることで美観を高め、同時にガラスやパネルを安定して支えるなどの役割を果たします。工法ごとに強みが変化するため、建築物を設計する際にはマリオンで外観が変わると言っても過言ではありません。