参政党のインフラ政策に関する考察

参政党が提唱するインフラ政策は、自由民主党が進めているレジリエントな国土づくり、国土強靭化を支持している。本記事では、この国土強靭化をはじめとする参政党のインフラ政策を概観し、考察を加えるほか、問題点を指摘することを目的とする。なお、2025年8月1日までの情報に基づく考察であること付記しておく。
目次
国土強靭化政策の核心: 先手防災と新素材の活用
参政党のインフラ政策は、党の「九の柱」の一つとして位置づけられ、防災・危機管理の観点から国土強靭化を柱に据えている。党は、自然災害の多発を背景に、インフラの耐災害性を高め、迅速な復旧を実現する「先手防災減災体制」を提唱している。政策カタログでは、「自然災害等に備え、防災インフラの整備や国土強靱化を推進し、災害に強いネットワークの構築を進めていく」と具体的に述べている。
2025年参院選政党政策アンケートでは、国土強靭化予算の増額について「◎賛成」と回答し、「日本は地震や水害など自然災害が多いため、インフラの強靭化は非常に重要」と位置づけつつ、「公共事業の名の下に無駄な予算を使わないよう、厳格な管理が必要」と条件を付けている。これは、過去の公共投資減少(2001年から2023年)が甚大な被害を招いた教訓に基づくもので、高速道路、新幹線、河川整備を通じて災害に強い国づくりを急務とし、これが地方の価値向上と地域活性化に寄与すると指摘している。
具体策として、新素材を活用した強靭化が挙げられる。党のPDF政策文書では、「災システムの構築と新素材を活用した国土強靭化」を強調している。天災、人災、侵略などの緊急事態に一元的に対応するための「日本版国土安全保障省」の設立を提案する。これにより、コンクリートや鋼材の耐用年数を超えたインフラを更新し、治水整備を進める。田中角栄の「日本列島改造論」を参考に、耐用年数を迎えたコンクリートや水道管の再整備を国主導で推進する。これはナノテクノロジーやカーボンファイバーなどの新素材を導入し、地震耐性橋梁や洪水耐性ダムを構築する基盤となり得る。IoTセンサーでリアルタイム監視し、AIで災害予測を可能にする「スマート強靭化」である。
防災インフラの構築では、ネットワーク化がカギになる。福井市の「国土強靭化地域計画」を例に、災害時でも寸断されない道路ネットワークの構築を推進している。党の政策ミーティングでは、「第1次国土強靭化実施中期計画」について解説し、事前防災として線状降水帯の予測を強化している。高速道路の4車線化を例に、防災・減災・国土強靭化の推進を財政融資で支える。神谷代表は2025年5月15日の国会質疑で、特別会計と緊縮財政の弊害を指摘し、高速道路4車線化による強靭化を例に挙げている。これにより、地方の均衡ある発展を促進し、災害に強い国土を実現する。
この政策は環境調和を重視している。強靭化を「豊かな自然や生態系と整合する総合的な視点」から進めるため、コンクリート依存の旧来型ではなく、グリーン素材やバイオエンジニアリングを統合する。量子コンピューティングで素材シミュレーションを加速すれば、持続可能な強靭化が可能である。しかし、予算増額を主張しつつ、無駄排除を求める姿勢は実効性を問う。党の統一地方選挙アンケートでは、「公共事業の予算を削減し続けた結果、甚大な被害が近年頻発」と賛成を表明するが、具体的な管理基準が曖昧である。
地方インフラ整備を通じた地域活性化: 分散型システムと一次産業支援
参政党のインフラ政策では、地方のインフラ整備が地域活性化の鍵を握る。九の柱で、「地域特性に応じた地産地消の分散型エネルギー供給システムを各地域で展開し、地域の地力を強化(二層構造のエネルギー供給体制)」を提唱している。安定的なベースロード電源を基幹としつつ、地方の特性を生かした分散型システムで地域自立を促進する。これにより、都市から地方への人口・機能分散を推進し、ヒートアイランドや騒音などの都市問題を緩和し、地方の生活基盤を強化する。
具体的に、一次産業(農業、林業、水産業)の支援をインフラ整備と連動させる。農村RMO(地域管理組織)の拡大を漁村・山村へ広げ、経済・生活支援活動を推進する。食料自給率100%達成に向け、中長期計画を策定し、休耕地再生や国内食料優先政策を実施する。ブロックチェーンや地域トークン(地域通貨)を活用した地方経済循環を促進し、インフラ投資で持続可能な地域モデルを構築する。有機農業の推進(2050年25%目標の前倒し)や伝統食の地元消費奨励で、農家の支援と地域経済活性化を両立させる。
このアプローチは、地方のインフラをエネルギー・農業インフラとして再定義し、テクノロジー(AI、6G)でコミュニティ接続を強化する。地域コミュニティの教育・生涯学習導入で、住民参加型の活性化を実現する。しかし、移民反対の姿勢が労働力不足を招き、一次産業の担い手確保が課題である。都市部偏重の是正は理想的だが、財源確保(投資国債)と管理の厳格化が成否を分ける。党のビジョンは、地方を自立した循環型社会へ導くポテンシャルを秘めているが、実行時の地方自治体連携が鍵である。
インフラ整備の革新: 再公営化と防災志向の統合
民営化の見直しも党の目玉政策だと言える。郵政、水道、NTT、鉄道などの「行き過ぎた民営化」を是正し、再公営化を進める。党は、これらを「国民の共同財産」と位置づけ、外資買収の規制強化を求める。実際、水道民営化は宮城県などで外資参入の懸念を生み、党はこれに反対している。建設業と農業の兼業を推進し、準公務員化で長期雇用を確保する。神谷代表は2025年5月27日の財政金融委員会で、郵政民営化の失敗を検証し、再公営化を訴えている。農林中金の資金を海外投資ではなく国内一次産業に振り向けるよう要望した。また、2025年7月2日の党首討論会では、「インフラを外国資本に売ると国民の命に関わる。土地や水源を野放図に買わせてはいけない」と強調し、外資規制の必要性を強く主張。水道PPP(公私連携)の外資リスクを指摘し、反対を表明した。
交通インフラでは、防災と地方活性化をリンクさせる。高速道路の法面に太陽光パネル設置を促進する道路法改正に賛成したが、党見解では「原則、法面や橋には設置しない」とのガイドラインを評価している。災害時の迅速復旧を優先し、広域道路管理を強化する。能登半島地震を教訓に、迂回路確保のための高速道路整備を急ぐよう求めている。
これをテクノロジー視点で考察すると、5GやAIを活用したスマートシティ構想につながる。電柱地中化や送電網強化は、ドローン点検やセンサー監視で効率化可能である。一次産業の公務員化は、ドローン農業や精密農法を国家レベルで推進し、食料自給率倍増を実現する基盤となる。神谷代表は2025年7月17日の投稿で、NISA資金の国内インフラ投資を提唱し、「国民の金融資産が国外流出」する現状を批判している。東証グロースETFへの誘導や国営ファンドとの連携で、国内事業発展と国民配当を提案した。これは、フィンテックとインフラの融合を象徴する。
エネルギー政策の補完: 強靭化との調和型ミックス
国土強靭化を支えるエネルギー政策は、現実的なバランスを追求する。地球温暖化の科学的検証を前提に、「脱・脱炭素政策」を推進している。党は、2050年カーボンニュートラル目標が「百兆円単位の国力消耗」を招き、地球温度低下にわずか-0.006℃しか寄与しないと指摘している。再エネ賦課金の廃止を掲げ、電気料金を2010年レベルに戻すことを目指す。これにより、家庭用・産業用電力コストを抑制し、経済活性化を図る。神谷代表はSNSで繰り返し再エネ賦課金の廃止を訴えた。2025年4月8日の財政金融委員会質疑では、金融機関の脱炭素投資離れに合わせ、政府の政策見直しを求め、トランプ政権との足並み揃えを提案した。これにより、電気料金低減と製造業支援を実現し、「三方よし」の効果を期待する。
具体策として、水力発電の最大活用が挙げられる。日本には1,500カ所のダムが存在するが、水力利用は700カ所に留まる。党は、既存ダムの嵩上げや小水力発電を推進し、構成比を20%に引き上げる。河川法改正により、「川のエネルギー開発」を追加し、地産地消の分散型システムを構築する。
これは、ブロックチェーン技術を応用したマイクログリッドと相性が良く、地方のエネルギー自給率向上を促進する。これはIoTセンサーで水位を監視し、AIで最適発電を制御する「スマートダム」の基盤となり得る。神谷代表は2025年5月8日の質疑で、日本政策投資銀行に対し、水力発電投資を要望し、再エネ賦課金不要の安価な電気供給を強調した。
新技術開発への積極投資も掲げる。次世代原子力(小型モジュール炉)、核融合、水素、地熱、バイオマス──これらを国主導で推進する。民間任せを避け、投資国債で財源確保を提唱する。これは、量子コンピューティングを活用した核融合シミュレーションや、水素燃料電池のスケーリングを加速させるだろう。自動車分野では、EV一辺倒を批判し、ハイブリッドや水素車を含む多様な技術を支援する。550万人の雇用を守りつつ、バッテリーやモーターのキーテクノロジーを強化する。神谷代表の2025年2月13日の投稿では、再エネの「クリーンエネルギー」という主張を「ウソ」と断じ、風力発電の森林破壊を問題視している。熊森協会との議論を基に、政治の利権依存を批判した。
これらの政策は、環境調和を重視し、国土強靭化と連動する。メガソーラーの環境破壊を抑止するため、事業者資格の厳格化や設備処分責任を課す。パリ協定離脱も視野に入れ、外国勢の資本流出を防ぐ。党の神谷代表はSNSで、「発電事業はインフラ事業だ。行政が責任を持ってやり、安い電気を供給して欲しい」と発信し、再エネ利権のクリーンさを疑問視している。2025年3月11日の投稿では、風力発電の森林破壊を挙げ、「再エネの名の下にビジネスをしたいだけ」と痛烈に批判した。
神谷代表の個人的見解: SNS発信を通じた国民目線のアプローチ
神谷宗幣代表のインフラ政策に関する意見は、党の公式スタンスを補完し、よりパーソナルで鋭い視点を提供する。SNSでの発信は、政策の裏側を露わにし、国民の不安を代弁する役割を果たしている。例えば、2025年1月13日の投稿では、民営化、脱炭素、再エネ、移民、増税などを「日本の富を奪う政策」と列挙し、即時中止を訴えた。「多様性とか言って変な法律を通すべきではなかった」との表現は、保守的な価値観を反映しつつ、インフラの外資売却を「命に関わる」と警告する。
水道民営化への反対は、神谷の代表的な主張である。2025年7月17日の宮城県水道事業投稿では、外資ヴェオリア社の51%議決権保有を指摘し、「外資に売った」という簡潔な表現で有権者に伝える意図を説明している。謝罪拒否の姿勢は、党の「日本人ファースト」を体現する。エネルギー分野では、2025年2月13日の風力発電批判や、3月7日の農薬・再エネ利権指摘が目立つ。「環境が大切だから再エネ賦課金は払うのに、農薬減らすのは批判されるのはなぜ?」との疑問は、政策の矛盾を突く。
防災志向も強い。2025年3月29日の道路法改正投稿では、賛成理由を「災害時の迅速復旧」とし、再エネ活用のガイドラインを評価している。能登地震を教訓に、インフラの持続性向上を強調した。財源論では、2025年5月15日の特別会計質疑で、緊縮財政の弊害を指摘している。NISA資金の国内インフラ投資を繰り返し提案し、2025年7月17日の投稿で詳細を説明した。「財政金融委員会でも同趣旨の発言」との自己言及は、透明性を示す。
神谷の意見は、テクノロジーと調和を重視する。量子コンピューティングやAIを活用したエネルギー革新を暗に支持している。しかし、保守偏重は多文化共生との摩擦を生む可能性がある。2025年6月17日の投稿では、再エネの太陽光・風力を「ノー」とし、中国への厳格姿勢を明示している。党の国際バランスを体現するが、孤立リスクも伴う。
問題点の考察: 理想と現実のギャップ
参政党の政策は魅力的だが、問題点も多い。まず、財源の持続可能性だ。建設国債発行を提唱するが、「財政赤字拡大のリスクがある」と一貫して主張し続けてきた財務当局を説得できるかは不透明だ。国民負担率を35%にキャップする目標は野心的だが、これも「債務依存が国際的な信用を毀損する」と一貫して主張し続けてきた財務当局を抑え込めるか未知数だ。党の政策カタログでは、PB黒字化目標撤回を掲げるが、今のところ実現できる見通しはない。
次に、再エネ政策の矛盾だ。メガソーラー規制を厳格化しつつ、道路法改正賛成は「環境破壊容認」との批判を招くリスクがある。温暖化検証を求める姿勢は科学的だが、パリ協定離脱は国際孤立を招き、技術輸出の機会損失を生む。気候変動データ(IPCC報告)を無視すれば、グローバルなイノベーション競争で後れを取るおそれがある、という指摘もある。
労働力不足も深刻だ。移民反対の「日本人ファースト」は参議院選挙のキャッチコピーだったが、インフラ維持に必要な建設職人は減少の一途を辿っている。一次産業公務員化は解決策だが、官僚増大で効率低下の可能性がある。保守偏重は、多文化共生の時代に逆行し、社会的分断を助長する恐れがある。神谷代表の2025年1月13日投稿では、ジェンダーレス政策を批判するが、これはLGBTQ+権利との摩擦を生む。2025年7月2日の党首討論会では、「移民に頼らず」と主張するが、具体的な労働力確保策が薄い。地方活性化の分散型システムは魅力だが、担い手不足が実効性を損なう。
さらに、実現性の壁がある。再公営化はコスト増大を招き、NTTやJRの株主利益を損なう。党の国会勢力は限定的で、野党連合が必要だが、保守色が強いため調整難航する。2025年参院選での躍進が鍵だが、SNS検索では支持者の声が活発ながら、反論も多い。「参政党は不満の受け皿」との指摘のように、ポピュリズムの側面が政策実行を阻害するかもしれない。神谷のSNS発信は人気だが、誤解を生む表現(例: 水道「売った」)が党のイメージを損なうリスクがある。国土強靭化の賛成も、予算増と減税の両立が難しく、公共事業の「無駄」批判が自己矛盾を生む可能性がある。
ケーススタディ: 宮城水道民営化と外資リスク
具体例として、宮城県の水道事業民営化を挙げる。2025年7月17日の神谷投稿では、外資ヴェオリア社の51%議決権保有を問題視している。党はこれを「外資支配」の象徴とし、再公営化を主張する。テクノロジー的に、水道IoT監視システムの導入で効率化可能だが、外資依存はデータセキュリティの脅威を生む。神谷の「一方的に謝ることはしない」姿勢は、党の強硬さを示すが、地方自治体との対立を招く。

参政党の独自性は、自然調和とテクノロジーのバランスだが、他党の現実路線に比べて理想寄りだ。地方活性化の一次産業重視は差別化すべき点だが、実行力が問われる。
未来への示唆: テクノロジーと調和のバランス
参政党のインフラ政策は、日本独自の「循環型モデル」を提案している。AI駆動のスマートグリッド、水素社会、次世代原子力──これらは、持続可能でレジリエントな国土を築くポテンシャルを秘めている。しかし、問題点を克服するためには、科学的エビデンスの強化と国際協力が不可欠である。党は「国民合意の形成」を強調するが、透明性の高いデータ公開が求められる。神谷代表のSNS発信は、政策のダイナミズムを加えるが、誤解を避ける丁寧さがカギだ。地方インフラを通じた地域活性化は、分散型システムの強みだが、労働力と財源のバランスが成否を分ける。
最終的に、この政策は日本をエネルギー自立大国へ導くものか。老朽化インフラの更新は急務で、参政党の提言は一つの選択肢だ。だが、理想論に終わらせず、テクノロジーのチカラで実装させてほしい。未来は、鋼鉄の骨格ではなく、柔軟なデジタルネットワークが支える時代である。神谷の2025年3月29日投稿のように、「国民の安全確保」を最優先に、政策を進化させることを期待したい。