「Torch Tower」とは|日本一の高さを誇る超高層タワーの事業概要と建設工法を解説

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今回は、2028年に竣工予定の東京駅日本橋口前「Torch Tower」をピックアップします。Torch TowerはUR都市機構が施行する「大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業」の第四次事業にあたり、東京駅日本橋口前「TOKYO TORCH」街区の建築物です。
Torch Towerは現時点で日本一の高さ390mを誇る超高層タワーとなり、東京の新たなシンボルタワーとして期待されています。この記事では、Torch Towerの事業概要と、本事業で導入された最新の工法をくわしく解説します。
「Torch Tower」とは|事業概要
ここからは、「Torch Tower」の事業概要について、東京都やUR都市機構の資料をもとにご紹介します。
所在地
,https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai18/shiryou1.pdf,参照日2025.7.24
「Torch Tower」の所在地は、東京都千代田区大手町2丁目、中央区八重洲1丁目です。当該地域は東京駅日本橋口駅前となり、アクセス良好な位置になります。
大手町は国際金融・メディアなど数多くのオフィスビルがあり、日本経済の中枢的役割を担うエリアです。近年では建物の老朽化が進んでいたため、グローバルビジネスの戦略拠点として生まれ変わるべく、再開発プロジェクトが立ち上がった経緯があります。
構造・規模
https://www.mec.co.jp/news/mec230927_torchtower/230927_TorchTower.pdf,参照日2025.7.24
「Torch Tower」の構造は、以下をご覧ください。
建物 | 構造 |
---|---|
Torch Tower(B棟) | S/SRC造 地上63階、地下4階建て |
3~6階の低層部には約2000席の大型エンタメホール、7~52階にはオフィス、53~58階にはホテルが整備されます。高層部は大手町エリア初のラグジュアリーレジデンスとなり、最上階は屋外空間併設の展望施設となります。
面積
主な面積は、下記をご覧ください。
- 敷地面積:31,400㎡
- 建築面積:22,600㎡
- 延床面積:553,000㎡
竣工日・オープン予定日
竣工日やオープン予定日は、下記の通りです。
- 着工日:2023年9月
- 竣工日:2028年(予定)
- オープン予定:2028年(予定)
ゼネコン|清水建設
Torch Towerの施工は、清水建設が担当しています。起工式は2023年9月27日に行われ順調に進んでいましたが、地中から障害物が出た影響で竣工時期を2か月遅らせると発表されました。その後は大きな遅れもなく、予定通り竣工する見込みです。
Torch Towerで清水建設が採用した建設工法と新たな取り組み
ここからは、Torch Towerの建設で導入された清水建設の建設工法について解説します。
耐震性を高める「外殻ブレース制振構造」と「ダイヤグリッド架構」
Torch Towerは、高さ約390mと日本一の高さを誇る超高層タワーです。これまでにない規模の耐震性能を求めた結果、清水建設が設計したのが「外殻ブレース制振構造」です。外殻ブレース制振構造とは、建物の外側にブレース(斜めの補強材)を配置して建物全体を包み込むことで、長周期振動などの強い揺れから建物を守る構造です。
この外殻ブレース制振構造に加えて、低層部には「ダイヤグリッド架構」を採用しています。ダイヤグリッド架構は、柱を斜めに組み込んでダイヤ型のようにした構造です。ダイヤグリッド架構の採用で、建築基準法が求める耐震性能基準の2.5~3倍ほどの耐震性能が得られる結果となり、タワー全体に高い安全性を確保しています。
「Shimzハイブリッド逆打ち工法」による並行施行で工期短縮
Torch Towerの建設では、工期短縮のために「Shimzハイブリッド逆打ち工法」が採用されました。
Shimzハイブリッド逆打ち工法とは、中央部に順打ち工法(地下から順に建築を進める工法)、外縁部を逆打ち工法(地下に向かって建設する工法)で進めることで、逆打ちの外延部が山留めとなり、中央部の切梁が不要になるという工法です。このようにすると地上階と地下階の施工を並行して進められるため、工期の短縮が可能になります。
「花びら拡底杭」で施工期間が10~20%削減
「花びら拡底杭(かくていぐい)」は、清水建設が2020年に丸五基礎工業と開発した、場所打ちコンクリート拡底杭です。拡底杭の底部に、従来の拡底杭の2倍近い底面積を確保することで、1本あたり約10,000トンの支持力を実現します。
花びら拡底杭を使用することで、従来よりも施工期間を10~20%削減できる見込みとなっています。Torch Towerは日本一の高さを誇る超高層タワーとなるため、工期の短縮と経済的な建設を目指し、この花びら拡底杭が採用されました。
国内最高の積載量で、騒音削減も実現した工事用エレベータ
Torch Tower新築工事では、国内最高の垂直搬送性能を持つ工事用エレベータ「SEC-5000RS」が導入されています。この工事用エレベータは、清水建設が2024年に三成研機、エスシー・マシーナリと共同開発したものです。
最大積載量は従来の3.0tを大幅に上回る5.0tとし、搬器床面積が1.6倍、ボード積載量は3倍となっています。騒音についても、従来の工事用エレベータの約90dbから80dbへ低減される結果となり、周辺環境への配慮した工事を実現しています。
大型建設機械へバイオ燃料を使用
「Torch Tower」プロジェクトでは、株式会社ユーグレナのバイオ燃料「サステオ」が大型建設機械へ導入されています。サステオは、100%バイオマス(生物資源)が使われている燃料で、他燃料との混合も可能です。
今回の導入ではサステオを単独で使用することで、CO2排出量削減事例として大きくプロモーションを展開し、建設事業におけるバイオ燃料の普及を目指しています。なお、清水建設とユーグレナは東京都の「バイオ燃料活用における事業化促進支援事業」の事業者に認定されています。
Torch Towerのポイント
ここからは、「Torch Tower」のプロジェクトの特徴や、環境への取り組みについてご紹介します。
①東京駅周辺の都市基盤の更新
,https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/tokyoken/tokyotoshisaisei/dai18/shiryou1.pdf,参照日2025.7.24
「Torch Tower」プロジェクトは、「日本を明るく元気にする」をコンセプトに、東京駅周辺の都市基盤の更新と高度防災都市づくりを目指す計画です。具体的には、東京駅周辺の地下歩行者ネットワークを再整備し、周辺エリアのアクセスを向上させます。さらに、東京駅前には大規模広場と親水空間を整備して、駅前のにぎわいを創出します。
「Torch Tower」の計画地は日本橋川に面し、東京湾から皇居へつながる重要な箇所となっています。そのため、緑地面積もかなり大きくとられており、「Torch Tower」の敷地面積のおよそ1割が新規緑化面積となっています。
②「東京国際金融センター」構想の実現
「Torch Tower」の建設により、大手町から兜町までのエリアは、日本の金融の中枢機能が集積する金融拠点として強化されます。これは、東京都が推進する「東京国際金融センター」構想の実現に向けた計画です。
また、東京駅周辺の観光力強化のため、展望機能などの観光機能を充実させ、国際都市東京の魅力を高めます。
③高度防災都市づくり
「Torch Tower」は、災害時の帰宅困難者対策として、エネルギー供給が可能な広場や建物を整備します。防災活用として、ホールは帰宅困難者約4,800人が一時滞在できる状態になり、外国人観光客が利用できる多言語対応のクリニックや物資の提供設備も整備されます。
環境負荷への取り組みとしては、東京都建築物環境計画制度(PAL*、ERR)の3段階目、さらにCASBEEでは「Sランク」を目標としています。大規模コージェネレーションシステム(CGS)の活用や、機能性ダブルスキンによるビル内の自然換気促進を行い、CO2排出量削減を目指します。
まとめ
「Torch Tower」は、現時点で日本一の高さとなる約390mを誇る超高層タワーとして建設が進められています。本事業では、環境負荷低減や効率化の取り組みも積極的に行われています。東京駅周辺がこれからどのように生まれ変わるのか、2028年の完成に期待が高まっています。