国土交通省発表、建設労働者不足0.5%に改善も職種・地域格差が顕著に、令和7年5月調査結果

国土交通省が発表した建設労働需給調査結果によると、令和7年5月の建設技能労働者の需給状況は、全国8職種平均で0.5%の不足となりました。前月4月の0.8%の不足と比較すると、0.3ポイント改善しています。

この調査は、建設業者の技能労働者確保支援と円滑な公共事業執行を目的として、昭和54年7月から継続実施されているものです。毎月、建設技能労働者の需給状況を職種別・地域別に詳細に把握し、建設労働対策の基礎資料として活用されています。

職種別の状況に明暗

職種別に見ると、労働者の過不足状況には大きな差があります。

■不足が目立つ職種

・型わく工(土木):1.9%の不足

・とび工:1.6%の不足

・鉄筋工(土木):1.1%の不足

・左官:0.9%の不足

■過剰な職種

・型わく工(建築):1.7%の過剰

・鉄筋工(建築):2.3%の過剰

・配管工:0.4%の過剰

電工については、ほぼ均衡状態(0.6%の不足)となっています。

地域格差が顕著に

地域別の状況を見ると、東北地域では8職種平均で0.8%の過剰となり、前月の0.2%不足から過剰に転じました。これは被災地復興事業の進捗に伴う需要変化の影響と考えられます。

一方、その他の地域では依然として不足が続いており、特に以下の地域で不足が深刻です。

・北海道:1.8%の不足

・九州:1.8%の不足

・四国:1.1%の不足

・関東:0.6%の不足

新規募集でも人手不足が深刻化

新規募集における過不足率は、より厳しい状況を示しています。8職種計で4.3%の不足となり、前年同月の5.3%からは改善したものの、依然として高い水準です。

特に深刻なのは以下の職種です。

・型わく工(土木):7.1%の不足

・とび工:6.1%の不足

・鉄筋工(土木):4.2%の不足

・電工:4.0%の不足

今後の見通しは「普通」レベル

7月および8月の労働者確保に関する見通しについては、全国および東北地域ともに「普通」との回答が最も多くなりました。しかし、詳細を見ると、困難と回答した割合が増加傾向にあります。

7月の見通しでは、「困難」と「やや困難」の合計が28.5%となり、前年同月の19.2%から9.3ポイント増加しました。一方、「やや容易」と「容易」の合計は6.5%で、前年同月の5.9%から0.6ポイントの微増にとどまっています。

現場の労働強化も続く

残業や休日作業を実施している現場(強化現場)の割合は、全手持現場数の2.7%となりました。前月の3.1%からは0.4ポイント減少しましたが、前年同月の1.8%と比べると0.9ポイント増加しており、現場での労働強化が続いていることがうかがえます。

強化理由として最も多いのは「前工程の工事遅延」(34.1%)で、次いで「昼間時間帯時間の制約」(20.0%)、「天候不順」(14.1%)となっています。

建設業界の課題と対策

この調査結果から、建設業界では依然として人手不足が構造的な問題として存在していることが明らかになりました。特に土木系職種での不足が顕著で、インフラ整備や災害復旧工事などの重要な社会基盤整備に影響を与える可能性があります。

一方で、建築系の一部職種では過剰となっており、職種間での労働力の偏在も課題となっています。今後は、職種間の技能転換支援や、地域間での労働力移動の促進などが重要になると考えられます。

国土交通省では、この調査結果を基に、より効果的な建設労働対策の検討を進めていく方針です。

出典情報

国土交通省リリース,建設労働需給調査結果(令和7年5月分調査)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001896100.pdf