【2025年最新】木造5階建ては建築できる?価格・法律・実例まで解説

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Category:コラム建築

著者:上野 海

都市部の土地が限られている今、空間を有効活用できる「木造5階建て」の住宅・アパートが注目されています。これまで「木造で高層建築は難しい」と言われてきましたが、技術の進化により、法的にも、そして安全面でも実現可能となってきました。

そこでこの記事では、木造5階建ての概要を説明したのち、安全性や建築するメリット、価格相場について紹介します。

木造5階建てとは?背景もわかりやすく紹介

木造5階建てとは、文字どおり構造材に木を使いながらも5階建ての高さを持つ建築物のことです。

これまで5階建ての中高層建築は、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート)を用いるのが主流でしたが、2020年代以降、木材の強度向上やCLT(直交集成板)などの技術革新により、木造でも中層建築まで対応できるようになりました。

2025年現在、都市部などでは、住宅・共同住宅・商業施設などさまざまな用途で、木造5階建ての事例が増えつつあります。

また、本項で登場したCLTに興味がある方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

耐震性・耐火性の技術進化

今まで木造は「地震に弱い」「火に弱い」という印象をもたれてきました。しかし、次のような技術によって、2025年現在では、木造でも安全性が大きく向上しています。

技術名説明
CLT(直交集成板)木材を交差して圧着し、剛性と強度を確保
準耐火構造の採用建築基準法で認められる防火区画や耐火被覆技術
制振装置の導入木造住宅向けの制振ダンパーで揺れを吸収

実際に、日本住宅・木材技術センターが公開している「CLT建築事例集2024」には、5階建ての木造建物の事例が掲載されています。

出典:日本住宅・木材技術センター「CLT建築事例集2024」

今後、さらに木造建築の技術が発展していけば、5階建てに留まらず、6階建て、7階建てへの対応も可能となっていくかもしれません。

建築基準法の規定と構造基準

2022年の建築基準法改正により、現在はCLTを使った中層建築の規制が緩和されました。これにより、実務的に木造5階建てが現実的な選択肢となっています。

(参考:国土交通省「令和4年改正 建築基準法について」

また、以下の条件を満たせば、木造5階建てであっても、構造基準・法的制限の適合が可能です。

  • 構造計算が必須|耐力壁や柱・梁の配置を数値で安全確認
  • 準耐火または耐火構造の義務|延焼のおそれがある場合は法的基準クリア必須
  • 用途地域や容積率制限|都市計画により階数や高さに制限あり
  • 特定建築物への分類|避難経路や非常用照明の確保が必要

通常の木造建築物と比べて基準が厳しくなるものの、条件さえ満たせば建築が可能です。

また耐火構造は、地域によってルールが違います。エリアの調べ方などを知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください▼

木造5階建ては本当に大丈夫?

木造5階建てと聞いて「本当に安全なのか」「途中で傾いたりしないのか」といった不安を抱く方も少なくないでしょう。

結論として、適切な設計と建築基準法に則った施工を行えば、十分に安全性を確保できます。以下に大丈夫だと言える根拠を整理しました。

  • 技術的な安全性が確保されている
  • 建築基準法上の許可が下りている
  • 実際に建築された事例が存在する

つまり、法律が許可した(国が許可した)建築物であるため安全です。日本は世界のなかでも非常に建築技術が優れている点からみても、信頼できる根拠だと言えます。

木造6階建てとの違いと課題

木造5階建てのみならず、木造6階建についても建築は技術的に可能です。しかし、コスト・法規制・構造設計の面で5階建てと比べて大幅にハードルが上がるため、現実的には慎重な判断が必要です。

比較項目木造5階建て木造6階建て
法的分類特定建築物(中高層)特定建築物(高層扱い)
構造要件準耐火構造でも認可される場合あり原則「耐火構造」必須
構造計算の難易度通常の中層建築向け計算で対応可材料強度・変形・層間変位の複雑化
コスト坪単価をRC造より安く抑えられる傾向耐火構造・補強設備でコストが跳ね上がる
設計自由度比較的高い法規に縛られ設計自由度が大幅に減少

特に注意しなければならないのが、高層扱いになる点です。中高層の建物よりも厳しい条件が求められるため、コストが上昇しやすい点に気を付けましょう。

木造5階建て住宅・アパートのメリット

木造5階建てならではのメリットを、4つに分けて具体的にご紹介します。

【メリット1】RC造よりも建築コストが抑えられる

木造5階建ては、RC造と比べて1㎡あたり最大20〜25%ほど建築費が安くなります。CLT工法やプレカット材の活用により、材料費と工期を圧縮できるのが大きな利点です。

【メリット2】都市部の狭小地でも容積率を最大限に活かせる

木造5階建ての建物は、都市部の限られた敷地でも、高さを活かすことで容積率を有効に使えます。敷地面積に制限がある土地でも収益性を高められます。

【メリット3】建築期間が短く、早期入居・収益化が可能になる

木造はRC造よりも工期が短く、早期の入居・賃貸開始が可能です。プレカット材や乾式工法を導入すれば、天候に左右されず、効率的な施工を実施できるのもメリットです。

【メリット4】環境性能が高く、SDGsやZEBへの対応も

木造の建物に使用される「木材」は再生可能な資源であることから、日本や世界が2050年を目標としている「カーボンニュートラル」にも貢献します。ZEB(ゼロエネルギービル)化にも適しており、脱炭素社会に対応した建築が実現可能です。

ZEBについて詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください▼

ZEB

木造5階建てに向いている人・用途とは?

木造5階建ての建築は、主に次のような考えをもつ人に向いています。

  • 都市部に土地を所有し、建築の制約がある人
  • 初期投資を抑えたい人
  • 環境配慮型の建築を求める人

また、5階建てを建築する場合には、次の用途に木造が適しています。

用途分類詳細内容
賃貸アパートワンルーム〜1LDKタイプの低層集合住宅に最適
下宿・寮大学・専門学校向けの学生寮や職員用住宅など
共同住宅シェアハウス・サービス付き高齢者住宅などにも応用可能
商住複合施設1階を店舗、上階を住居にする都市型ミックスユース物件にも対応

建築の選択肢が広がることから、RC造に代わる「現実的な手段」として、今後ますます採用されていくでしょう。

価格はどれくらい?木造5階建て住宅・一軒家の建築費と費用目安

基本的な相場としては、住宅で坪単価80万〜100万円、アパートでは70万〜90万円が相場です。RC造よりも約2〜3割安い傾向があります。

用途坪単価(目安)延床面積目安概算建築費
一軒家住宅80万〜100万円約40〜60坪約3,200〜6,000万円
賃貸アパート70万〜90万円約100〜150坪約7,000〜1億3,500万円

なお上記の価格はあくまで目安です。木造5階建ては、建築工法・立地・用途(住宅 or アパート)によって価格に大きな幅がある点に注意してください。

木造5階建てについてよくある質問【FAQ】

木造5階建ては本当に建てられるの?

建てられます。ただし、建築基準法に基づいて構造計算や耐火性能の確保が必要です。2022年の法改正以降、CLT工法や準耐火構造などの条件を満たせば、木造でも中層建築として認められています。

木造5階建てはエレベーターなしでも大丈夫?

法律上、住宅用の木造5階建てにエレベーター設置は必須ではありません。ただし「高齢者向け住宅や福祉施設として使う場合」「各階の居室がワンフロアのみの場合(バリアフリー非対応)」「延床面積や用途によって「特定建築物」に該当する」といった条件を満たすときには設置が強く推奨されます。

木造5階建てとRC造のコスト差は?

木造5階建てとRC造(鉄筋コンクリート造)は、坪単価が平均20〜30%程度変わってくる傾向があります。RC造の場合には、型枠工事・鉄筋工・コンクリート養生などが必要で、人件費・工期がかかるため、これら不要となる木造のほうが費用を抑えやすいのが特徴です。

まとめ

木造5階建ては、かつての常識をくつがえす「都市型・環境配慮型」の次世代建築として大きな注目を集めています。技術の進化と法整備の進展により、2025年現在では安全性・コスト・自由度の3つがそろった建築の選択肢となりました。

すでに設計業務などでも広く活用されている構造であるため、まずはどのような基準を満たす必要があるのか、リサーチを開始してみてはいかがでしょうか。