建設リサイクル法とは?対象工事・届出義務・違反リスクを建設業者向けに解説【2025年版】

掲載日:

著者:上野 海

2002年に施行された「建設リサイクル法」は、解体工事や一定規模以上の建設工事に対して、資材の分別解体と再資源化を義務づける法律です。違反すれば罰則が科される可能性もあり、知らなかったでは済まされません。

そこでこの記事では、建設リサイクル法の概要や条文を説明したのち、対象工事や手続きの流れ、違反した際のリスクを詳しくまとめました。

建設リサイクル法とは?【条文を簡単に解説】

建設リサイクル法とは、建設現場で発生する廃棄物(特定建設資材)を再資源化し、リサイクルを推進するための法律です。

正式名称を「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」と言い、2002年5月に施行され、環境保全のために運用されています。

たとえば、コンクリート塊やアスファルトなどが建設リサイクル法にもとづき再利用されて、産業廃棄物の削減・資源循環が進められている状況です。環境省の公式サイトにて具体的な仕組みがまとめられており、届出様式もPDFで公開されています。

(参考:環境省「建設リサイクル法の概要」

建設リサイクル法の施行規則・施行令の違いとは?

建設リサイクル法には「施行令」「施行規則」という2つのルールが存在します。以下に2つの違いを整理しました。

区分建設リサイクル法施行令(政令)建設リサイクル法施行規則(省令)
制定主体内閣(国の閣議で決定)国土交通省(所管省庁が定める)
法的位置づけ法律の具体化として大枠の制度を定める制度の運用に必要な実務詳細を定める
対象内容・対象工事の金額や規模基準・対象資材の範囲・届出の提出先や提出時期など・届出書に記載する内容・書類の書式・添付書類・登録制度の細則など
実務での使用場面工事が「届出対象かどうか」の判定に使用実際に届出を作成・提出する際の手続き詳細に使用
誤解しやすい点解体面積や金額で対象かどうかを見落としやすい書式の記入漏れ・添付資料不足による受付拒否が発生しやすい
関連法令リンク施行令(e-Gov)施行規則(e-Gov)

たとえば、実際に工事を行うとき、発注者や元請業者が提出する「分別解体等の計画書」は、施行規則にもとづいた様式で作成する必要があります。逆に「そもそもその工事が届出対象かどうか」は、施行令の基準(金額・規模)で判断します。

建設リサイクル法の対象工事と金額条件

建設リサイクル法はすべての工事に適用されるわけではありません。

以下より、法律の対象となる工事・資材を紹介します。

建設リサイクル法の「対象工事」は?

建設リサイクル法の対象となる工事には「種類」「規模(面積または金額)」の2つの条件が設けられています。条件は次の通りです。

工事の種類発注形態工事契約の内容対象工事の規模基準
新築工事一括発注建築物の新築工事(設備工事を含む)500㎡以上
分割発注建築物本体の新築工事500㎡以上
分割発注新築に伴う設備の新設請負金額 1億円以上
修繕・模様替等工事一括発注建築物の修繕・模様替等工事(設備工事を含む)請負金額 1億円以上
分割発注建築物の修繕・模様替等工事請負金額 1億円以上
分割発注設備工事(維持修繕、更新、新設、撤去)請負金額 1億円以上
設備単独発注設備工事(維持修繕、更新、新設、撤去)請負金額 1億円以上
解体工事一括発注建築物の解体工事(設備撤去を含む)床面積 80㎡以上
分割発注設備の撤去請負金額 1億円以上
分割発注建築物本体のみの解体床面積 80㎡以上

出典:国土交通省「建設リサイクル法 質疑応答集(案)」

上記からわかるように、金額基準と面積基準が混在しています。発注形式や工事の内訳によって、条件が異なる点に注意してください。

建設リサイクル法の「対象資材」は?

建設リサイクル法では「特定建設資材」として4つの資材が明確に定められています。対象資材が含まれる工事は、分別解体と再資源化が義務付けられているため、以下をチェックしてみてください。

資材名主な対象物再資源化の用途例
コンクリート建物の基礎・壁・柱など路盤材・再生骨材・二次製品(擁壁等)
アスファルト・コンクリート駐車場・道路舗装再生アスコン材
木材下地材・内装材・構造材木質ボード材・燃料チップ
コンクリートと鉄の複合材RC梁・柱など鉄と骨材に分別→再生利用

なお、上記の資材はあくまで一例です。コンクリートのなかでもレジンコンクリートは対象にならないなど、細かな条件があるため、詳しくは国土交通省の「建設リサイクル法 質疑応答集(案)」で確認すると良いでしょう。

建設リサイクル法の届出義務と手続きの流れ

建設リサイクル法では、対象となる工事に対して、工事の発注者が所定の届出を行う義務があります。以下より3つのポイントに分けて解説します。

誰が届出を出す?工事発注者の責任

建設リサイクル法における届出義務者は、原則として「工事の発注者」です。

たとえば、以下に示す発注者には、分別解体・再資源化の責任が課せられており「工事の計画」を管轄行政庁に事前に届け出ることが求められます。

  • 解体工事|不動産会社、解体業者に依頼した施主など
  • 修繕・新築工事|ゼネコンへ工事を一括発注した企業や自治体
  • 公共工事|国や地方自治体が発注者

また、元請業者(施工者)に手続きを委託するケースもありますが、あくまで法的責任は発注者です。そのため、届出を「元請業者に任せたからOK」ではなく、発注者としての責任は残ることを忘れてはいけません。

届出のタイミングと必要書類

建設リサイクル法の届出は「工事開始の7日前まで」に提出しなければなりません。提出期限を過ぎると工事を開始できない場合があり、行政指導の対象になる恐れがあります。

(参考:e-GOV法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」

なお届出までには、以下の書類を準備しなければなりません。

書類名内容備考
分別解体等の計画等届出書工事概要、資材の処理計画などを記載各自治体で様式が若干異なる場合あり
付近見取図・配置図工事現場の位置や周辺状況を示す図面公図または地図に記載
工事契約書の写し工事の契約金額・発注者を確認する資料請負金額の確認資料
建設資材の再資源化等に関する計画書対象資材の分別・再資源化方法を記載特定建設資材に関する計画を明記
解体工事業者の登録証写し解体工事を請け負う業者の許可証明都道府県登録業者である必要がある

届出の遅れや不備は、行政処分や工事の停止につながるリスクがあります。「誰が・いつ・どの書類を提出するか」を工程初期の段階から明確にしておき、事前準備を徹底しましょう。

電子届出・自治体ごとの違いに注意

建設リサイクル法の届出は、自治体によって手続き方法や提出書類、電子申請の有無が異なる点に注意してください。以下によくある自治体ごとの違いをまとめました。

項目自治体によって異なる内容対応のポイント
届出方法紙提出 or 電子提出(例:電子申請・jGrantsなど)事前に「建設リサイクル法 届出 ○○市」などで検索
書類様式国交省様式をそのまま使える or 独自フォーマット自治体HPから最新版をダウンロード
添付書類の範囲見取図、契約書の写し、写真の有無などチェックリストで確認
提出先部署建築指導課・都市整備課・環境政策課など様々役所の代表番号に確認するのが確実
提出期限原則7日前までだが、受付時間や休日扱いが異なる曜日をまたぐ日程には注意

全国で同じ様式や方法だと思い込まず、必ず着工前に該当自治体の公式サイトや担当課に確認することが重要です。

建設リサイクル法違反のリスクと罰則

建設リサイクル法に違反すると「指導」で済まないケースもあり、罰則・業務停止・再発防止命令など、経営に重大な影響をおよぼす可能性もあります。以下に、届出を怠った場合や虚偽記載、再資源化不履行時のリスクを整理しました。

違反行為法律条文罰則内容
対象建設工事の届出を行わなかった場合第10条20万円以下の罰金(第51条第1号)
対象建設工事の変更届出を行わなかった場合第10条20万円以下の罰金(第51条第1号)
分別解体等義務の実施命令に違反した場合第15条50万円以下の罰金(第49条)
再資源化等義務の実施命令に違反した場合第20条50万円以下の罰金(第49条)
解体工事業の登録を受けずに解体工事を行った場合第21条1年以下の懲役または50万円以下の罰金(第48条第1号)
解体工事業の登録内容の変更届出を行わなかった場合第25条30万円以下の罰金(第50条第2号)
解体工事業の廃業等の届出を行わなかった場合第27条10万円以下の罰金(第53条第2号)
技術管理者を選任しなかった場合第31条20万円以下の罰金(第51条第3号)
標識の掲示を行わなかった場合第33条10万円以下の罰金(第53条第3号)
帳簿の備え付けを行わなかった場合第34条10万円以下の罰金(第53条第4号)
事業停止命令に違反して解体工事業を営んだ場合第35条1年以下の懲役または50万円以下の罰金(第48条第3号)
報告の徴収に応じなかった場合第37条20万円以下の罰金(第51条第4号)
立入検査を拒否・妨害した場合第37条20万円以下の罰金(第51条第5号)

(参考:e-GOV法令検索「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」

また建設リサイクル法では、違反行為を行った者だけでなく、その者を雇用する法人や個人事業主も罰則の対象となる「両罰規定」が設けられている点に注意してください。

建設リサイクル法に関するよくある質問【FAQ対応】

建設リサイクル法の対象外の工事は?

床面積80㎡未満の解体工事や、500万円未満の新築・修繕工事は対象外となります。また、対象資材(コンクリート・木材など)が発生しない工事も原則として適用除外です。ただし、複数棟をまとめた工事では合算面積に注意が必要です。

建設リサイクル法は戸建住宅も関係ある?

戸建住宅も建設リサイクル法の対象です。たとえば延床80㎡以上の解体や、500万円以上の新築・修繕工事は届出が必要になります。個人の自宅解体でも、資材が再資源化対象であれば例外ではありません。

書類の保管期間は?

届出書や処理計画書の控えは、一般的に工事完了後5年間の保管をするのがよいと言われています。記録や書類の保管期間について、具体的な年数などが定められていませんが、工事関係書類として行政からの確認や監査の対象になることがあるため、厳重な管理が求められます。

リサイクル法の届出はどこに出せばいいの?

届出先は工事場所を管轄する自治体の「建築指導課」「都市整備課」などです。自治体によって提出窓口や様式が異なるため、事前にホームページまたは電話で確認しましょう。電子申請に対応している地域もあります。

まとめ

建設リサイクル法は、単なる環境対策ではなく、届出・分別・再資源化を通じて社会的信頼を守る法令です。

本記事で紹介した情報をもとに、工事が対象かどうか、誰が届出を行うか、いつ何を提出するかを事前に確認し、違反やトラブルを未然に防ぎましょう。