竹中工務店が目指す「ちがいでつむぐ」建築、インクルーシブデザインの実践と未来への展望

竹中工務店は「ちがいでつむぐ これからのかたち」というコンセプトで、年齢や性別、国籍、障がいの有無などに関わらず、誰もが快適に過ごせる建築やまちづくりに取り組んでいます。企画・設計・施工・保全を一貫して行い、お客様の事業を建物のライフサイクルを通してサポートしています。
インクルーシブデザインとは
インクルーシブデザインは、1994年に英国王立芸術大学院のロジャー・コールマン氏が提唱した考え方です。これまでの建物やサービスでは、平均的な利用者が優先され、障がいのある人や高齢者などのニーズは十分に反映されていませんでした。
この考え方の特徴は次の通りです。
・身体的、認知的、感覚的、言語的、文化的な多様性を考慮する
・デザイン過程に実際の利用者が参加し、課題からアイデアを形にする
・誰も排除せず、使う人の気持ちを大切にする
元ジャパンタイムズのコラムニスト、ジュリア・カセム氏は、デザインが無意識のうちに「身体的排除」「感覚的排除」「知覚的排除」「デジタル化による排除」「感情的排除」「経済的排除」という6つの排除を行うことがあると指摘しています。
いま求められるインクルーシブデザイン
◆障がいの考え方の転換
1983年、イギリスのマイケル・オリバー氏は「社会モデル」という考え方を提唱しました。これは、障がいが生じる原因は個人の機能ではなく、多数派を前提につくられた社会環境だとする考え方です。国連の障害者権利条約でもこの考えが反映されています。
◆法制度の進展
日本では2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、民間事業者にも障がいを理由とした差別の禁止や合理的配慮の提供が義務づけられました。障がい者の法定雇用率も段階的に引き上げられ、多様な人々が安心して活動できる場の提供が求められています。
◆持続可能な未来に向けて
幅広い利用者を対象とした使いやすい建物は、市場を広げ、平均的な利用者にも新たな価値を生み出します。少子高齢化や人口減少が懸念される中、インクルーシブデザインはビジネス面でも重要な戦略となっています。
実現された多様性を包み込む建築事例
竹中工務店は多様な利用者が参加し、対話を通じてつくりあげた建物を数多く手がけています。
◆中山視覚福祉財団 神戸ライトセンター
視覚障害者支援のボランティア団体の拠点として、オフィスのような開放的な空間をデザインし、2022年日本空間デザイン賞入賞の評価を受けています。
◆茨木市文化・子育て複合施設「おにクル」
徹底的な対話から生まれた「壁のない」市民のためのサードプレイスで、2024年度グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100(公共施設)」に選出されました。
◆国分寺市庁舎
「地域で暮らすすべての人とつながる公園のなかの市庁舎」をコンセプトに、市民に開かれた行政施設として設計されています。
◆立命館アジア太平洋大学(APU)「Green Commons」
100か国以上の多様な国籍・文化が集まる学びの場として、多国籍・多文化・ジェンダーレスな環境を実現しています。
◆有明アリーナ
多様な選手・観客が集い、訪れるすべての人が一緒に楽しめるアリーナとして設計されています。
インクルーシブデザインを支える技術
竹中工務店は様々な技術を活用しています。
・人流・行動シミュレーションとモニタリング:様々な利用者の動きをシミュレーションし、実際の行動を分析して改善につなげています。
・安全な避難を支援する技術:火災時に安全に避難できる視覚的な誘導灯や、安全な区画でエレベーターを利用できる制御技術を開発しています。
・共感に基づく空間づくり:アクティビティカード®を用いた計画手法や、SNS投稿から場所の魅力や課題を分析する技術で、多様な視点を取り入れています。
多様性を活かした空間づくりの未来
竹中工務店は「ちがいでつむぐ これからのかたち」のコンセプトのもと、多様な人々にとって使いやすい建築やまちづくりを推進しています。これからも様々な「ちがい」を尊重し、誰もが快適に過ごせる空間の創造を目指していきます。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,竹中工務店のインクルーシブデザイン,https://www.takenaka.co.jp/inclusive_design/