国土交通省による3月統計、民間主導で2か月連続の増加により景気回復の兆し

国土交通省が公表した令和7年3月分の「建築着工統計調査」によると、全国で新たに着工された建築物の総床面積は1,062万平方メートルに達し、前年同月比で28.6%の大幅増となりました。2か月連続の増加で、建築需要の回復傾向が鮮明になっています。

今回の統計では、住宅・非住宅のいずれの分野でも増加が見られ、特に民間主導による着工の伸びが際立ちました。

居住用建築が好調、非居住用も回復基調

建築主別にみると、民間による着工が1,025万平方メートルとなり、前年同月比で30.7%増となりました。全体の着工面積のうち96%以上を占めており、建築市場の回復をけん引する格好です。

このうち住宅用途の着工面積は707万平方メートルで、前年同月比42.5%増と特に大きな伸びを記録しました。

また、非居住用建築も318万平方メートルで同10.4%増となり、こちらも2か月連続でのプラスとなりました。

金融・不動産業が大幅増、宿泊・医療分野は低調続く

非居住用の主要な用途別に見ると、金融業・保険業用の建築面積は13万平方メートルで、前年同月比1,788.6%増と急増しました。あわせて、不動産業用の建築も34万平方メートルで同335.6%増と著しい伸びを示しています。

この背景には、再開発事業やオフィスビル投資の再活性化、都市部での収益物件建設の動きがあるとみられます。

一方、宿泊業・飲食サービス業用は16万平方メートルで前年同月比61.5%減、医療・福祉施設用は26万平方メートルで同4.4%減となっており、業種による明暗がはっきりしています。特に宿泊分野は観光回復の遅れや事業再編の影響が続いているとみられます。

構造別でも木造建築が伸長 非木造建築も堅調に推移

建築構造別では、木造建築が4,900万平方メートルで前年同月比42.9%増と大幅な伸びを見せました。これは戸建住宅の需要増が主因と考えられます。

非木造建築も5,720万平方メートルで18.4%の増加となっており、マンションや商業施設などの中高層建築物が堅調に推移していることが分かります。

特に鉄筋コンクリート造は、2,457万平方メートルで前年同月比61.9%増と目立った伸びを示し、集合住宅や大型ビルの建設が再開している様子がうかがえます。

公共工事は引き続き減少 地方自治体の発注抑制が影響か

一方で、公共部門による建築は約37万平方メートルで、前年同月比11.3%の減少となりました。これで2か月連続のマイナスです。

中でも市区町村による建築が約23万平方メートルで、前年比19.9%の減少となっており、地方自治体における予算制約や発注抑制の影響が懸念されます。

今後の見通し

全体としては、民間投資の活発化により、建築市場は回復基調を維持しているといえます。しかしながら、業種や建築主の種類によって増減が大きく、すべての分野で一様に回復しているわけではありません。

金融・不動産業が先行する一方で、観光業や医療分野では依然として慎重な動きが続いています。今後の政策動向や経済環境の変化が、建築需要にどのように影響するかが注目されます。

出典情報

国土交通省リリース,建 築 着 工 統 計 調 査 報 告 令和 7 年 3 月分,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha703.pdf