大成建設の農地再生技術、バイオ技術活用で耕作放棄水田を収益性の高い畑地に再生

大成建設株式会社(相川善郎社長)は、長年培ってきたバイオ技術と緑化ノウハウを活用し、使われなくなった水田を畑として再生する技術開発に取り組んでいます。この技術を用いた農地での栽培試験では、初年度から枝豆などで一般的な収穫量を達成できることが確認されました。

深刻化する耕作放棄地問題への取り組み

近年、農業に携わる人が減少し続け、耕作されない農地が急増していることが社会問題となっています。この状況に対応するため、全国各地の自治体が主導して、使われていない農地を大規模にまとめ、農業法人や企業を誘致する「農業団地」の計画が進められています。

こうした農業団地の多くは、交通の便が良く、広い土地がまとまっている低地の水田が候補地になっています。しかし、これらの水田を畑作に適した土地に変えるには、雨が降った時に冠水しないよう土地を高くする必要があります。これまで、既存の水田を大規模に嵩上げして収益性の高い農地として再生する技術は確立されておらず、造成したばかりの農地で安定した収穫を得ることは難しい課題でした。

地域資源を活用した循環型の農地再生技術

大成建設は、地域の資源を循環させる持続可能な社会の実現を目指し、耕作放棄された水田を生産性の高い畑地へと再生する技術開発に着手しました。

埼玉県羽生市が計画した「羽生チャレンジファーム」内の研究開発農地「イノベーションラボ」(株式会社アグリメディア運営)では、近隣の建設現場から出た土を使って農地を高くしました。さらに、食品廃棄物を堆肥化したリサイクル肥料を用いて野菜の栽培実験を行い、使われていなかった水田が初年度から生産性の高い畑として機能することを実証しました。

技術の特長

1. 最適な土壌改良で高い生産性を実現

通常、低地の水田を畑に変えた場合、安定した収穫量を得るまでに数年かかることが多いです。大成建設は、微生物を使った土壌浄化技術や植物育成に適した土壌を作る技術を活かし、水田の土を畑作に適した状態に改良しました。また、排水性を高める方法も取り入れ、造成直後から安定した収穫が得られる農地を実現しました。

イノベーションラボでの栽培試験では、枝豆が初年度から普通の収穫量を確保できることを確認し、他の野菜についても収穫量を増やすための土壌改良や肥料の与え方についてのデータを集めました。

2. 地域の資源を循環させる仕組みを提案

この農地再生技術は、地域の資源を循環させる持続可能な社会づくりの一部として開発されています。この技術を地域の資源循環の仕組みに組み込むことで、地域で出る食品などの有機廃棄物、建設現場の残土、下水処理場の汚泥などを有効に活用できるシステムを作ることができます。

再生した農地を中心に地域の様々な資源を循環させることで、地方の活性化にもつながる構想として、自治体などへの提案を進めています。

今後の展開

大成建設は今後、高い収益が期待できる農地への再生技術の提供だけでなく、地域の農産物を扱う食品工場や農業に関連する観光施設などの整備を行う「農業の6次産業化」を進める方法を自治体と一緒に検討していきます。会社が持つ多様な技術を総合的に活用して、地域の持続可能な社会づくりに貢献することを目指しています。

「羽生チャレンジファーム」は埼玉県羽生市が2018年に計画した農業団地で、2024年12月時点で約24ヘクタールの計画地の約半分が水田から畑地に変わり、民間企業が農業を行っています。株式会社アグリメディアが、羽生市から委託を受けて民間企業に農地を紹介する業務を行っています。

出典情報

大成建設株式会社リリース,耕作放棄地の水田を畑地化する農地再生の取り組みを開始-地域資源の循環利用により持続可能な社会の構築に貢献-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250507_10462.html