建設国保とは?一人親方・建設業者のための保険制度を解説【2025年版】

建設業界で働くとき「国民健康保険よりもお得な制度」を利用したい人におすすめなのが「建設国保(建設業国民健康保険組合)」です。しかし、具体的にどのような保険なのかわからないとお悩みではないでしょうか。
そこでこの記事では、建設国保の概要や国民健康保険との違い、加入するメリット・デメリットなどについてわかりやすく解説します。
目次
建設国保とは?
建設国保(建設国民健康保険組合)とは、建設業に従事する自営業者や一人親方を対象とした「業種別の国民健康保険制度」です。
【主な加入先】
一般的な市町村の国民健康保険とは異なり、業界ごとの「国民健康保険組合(今回は建設業)」が保険者となって、建設業に特化した給付制度や健康支援を受けられます。
加入資格と対象者【一人親方も】
建設国保は、次の人たちが主な加入対象です。
- 一人親方
- 建設業の個人事業主
- 家族従業者
- パートナー
加入条件を満たせば、会社に属さずとも医療保障や傷病手当の対象になれます。
また一人親方について詳しく知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
建設国保と国民健康保険の違い
建設国保は「建設業に特化した組合型の国保」であり、市町村が運営する国民健康保険と、保険料体系・給付内容・加入条件が異なります。参考として以下に、2つの保険の違いをまとめました。
建設国保 | 市町村の国民健康保険 | |
保険者 | 建設国保組合(業界団体) | 各市区町村 |
対象者 | 建設業に従事する一人親方・家族従事者など | 全業種の自営業・無職者など |
保険料 | 所得に関係なく「定額+世帯人数」で計算 | 所得に応じた「所得割+均等割」 |
給付内容 | 傷病手当金、出産手当金など業界特化型あり | 基本的な医療給付のみ(手当金なし) |
特典 | 健康診断の補助、医療費還付など | 自治体ごとに異なる |
たとえば、市町村の国民健康保険は、建設業特有の事情(労災・傷病給付など)が反映されにくいのが特徴です。そのため、建設従事者だと国民健康保険だけではすべてのトラブルをカバーできません。
一方で、建設国保は業界特化型の給付内容もカバーしていることから、もしものときの備えになるのが大きな違いです。
建設国保のメリット
建設国保は、建設業の働き方やリスクに対応した保障やサービスが整っているため、一人親方や自営業者に対して、次のようなメリットがあります。
- 保険料が一定で安定している
※国民健康保険は所得によって変動する - 傷病手当金が支給される
- 出産手当金や育児一時金あり
- 健康診断や人間ドックの補助あり
- 医療費の自己負担還付制度あり
- 生活習慣病の予防支援(メタボ予防指導など)
上記からもわかるように、建設業者に特化した手厚い給付・定額制保険料・健康支援制度が魅力です。「働けないときの保障」「健康維持のサポート」まで含めて考えると、費用以上の価値があります。
建設国保のデメリットと解決策
建設国保は、制度の特徴を正しく理解していないと「想定よりも負担になった」と後悔するケースもあります。参考として以下に、知識がない状態で加入した際に起こりやすい問題をデメリットとしてまとめました。
デメリット | 解決策 |
家族構成によって保険料が高くなる | 世帯構成に応じて市町村国保と比較をして、有利なほうを選択する |
建設業をやめると資格を失う | 他業種へ転向する場合は、事前に市町村国保や協会けんぽへ切り替え準備をする |
法人代表者は加入できない | 法人化後は厚生年金・協会けんぽへの加入が原則(法人登記時に手続き) (参考:日本年金機構「事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」) |
加入・脱退手続きが煩雑である | 事前に組合事務局へ問い合わせ、書類のテンプレートや手順を確認する |
保険料の納付方法が限定的な場合もある | 利用可能な支払方法を事前に確認し、納付遅延を防ぐ |
建設業で働く一人親方や個人事業主にとって魅力的な制度ですが、すべての人に最適だとは限りません。加入すべきか不安、また切り替えるかお悩みなら、組合窓口や社労士に相談するのも有効な対策です。
建設国保の保険料
建設国保の保険料は「組合ごと」「加入人数(世帯構成)」によって変化します。
ここでは、代表的な建設国保組合の保険料目安や、計算方法、加入人数別の料金イメージをまとめました。
保険料の計算方法
建設国保の保険料は「基本保険料+被保険者数に応じた追加料」で構成されており、加入人数に比例して金額が上がる仕組みです。
加入形態 | 月額保険料(目安) | 年間合計(概算) |
一人親方(本人のみ) | 約2万円 ※若い頃は月1万程度、年齢を重ねると月3万程度 | 約24万円 |
本人+配偶者 | 約3万円 | 約36万円 |
本人+配偶者+子2人 | 約5万円 | 約60万円 |
※保険組合のおおよその平均となります
なお、自分の条件に合う保険料を知りたい方は、全国建設工事業国民健康保険組合が提供している「保険料シミュレーション」を利用するのがおすすめです。保険料の目安がわかります。
給付内容|医療費・傷病手当金・出産育児一時金
加入先にもよりますが、建設国保では主に次のような給付を受けられます。
- 医療費の自己負担軽減
- 傷病手当金
- 出産育児一時金
- 出産手当金
- 高額療養費制度
市町村の国民健康保険では受けられない「傷病手当金」「出産手当金」などの生活支援型給付が建設国保には揃っています。
建設国保の加入手続き|国民健康保険からの切り替え
以下に、国民健康保険から建設国保へ切り替える場合の手続きの流れを整理しました。
- 所属予定の建設国保組合に連絡・資料請求をする
- 必要書類を準備する
- 建設国保へ書類を提出する(郵送または窓口)
- 建設国保の審査を待つ(通常1週間〜10日前後)
- 建設国保の資格証を受け取る(=ここで加入完了)
- 市区町村役場へ行き「国民健康保険 資格喪失届」を提出する
- 市町村国保の保険料を精算する
- 切り替え完了後、今後の保険料支払い方法を確認する
加入完了後の手続きもしっかりと進めることで、国民健康保険の二重払い・未加入期間の発生を防ぐことができます。
建設国保についてよくある質問【FAQ】
建設国保についてよくある質問をまとめました。
建設国保に加入すると年金はどうなる?
建設国保に加入している場合、年金制度は「国民年金」が基本です。会社員のように厚生年金には加入できない点に注意してください。将来の受給額を増やしたい場合は、付加年金や国民年金基金、iDeCoの加入も選択肢となります。
建設国保は社会保険なの?
建設国保は「社会保険」の一種ですが、一般的に言われる「社会保険(=健康保険+厚生年金)」とは制度が異なります。年金を含まない「業種特化型の国民健康保険」であり混同しやすいため、加入前に保険証の種類・年金制度との違いをよく確認しましょう。
まとめ
建設国保は、建設業に従事する一人親方や個人事業主にとって、市町村の国民健康保険よりも保障内容が充実している業種特化型の健康保険制度です。
自身の働き方や家族構成に合った保険を選ぶことが、将来の安心につながるため、この機会に加入や切り替えを検討してみるのもいいかもしれません。
なお「保険料を抑えつつ、安心できる保障を受けたい」「働けないときの給付が心配」という建設業の方は、一度建設国保の組合に相談してみるのがおすすめです。