大成建設、大阪・御堂筋エリアで脱炭素技術を実装 環境と快適性を両立した複合ビル開発を推進

大成建設株式会社は、学校法人相愛学園と共同で進めている「(仮称)本町四丁目プロジェクト」において、先進的な脱炭素化技術の実装が大阪市の補助事業に採択されたことを発表しました。

次世代の環境配慮型ビルを目指して

このプロジェクトでは、地下1階、地上26階建ての複合ビルのオフィス部分(10〜25階)において、建物のライフサイクルにおけるCO2排出量(ホールライフカーボン)を40%以上削減する「ZCB-Oriented」の実現を目指します。これは、エネルギー分野のZEB認証制度と同様の考え方に基づいています。

大成建設グループは、2050年に向けたグループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を掲げており、建物のライフサイクルCO2排出量をゼロにする「ゼロカーボンビル(ZCB)」の実現を目標としています。このプロジェクトは、その目標に向けた重要な取り組みの一つです。

3つの柱で実現する先進オフィス環境

このプロジェクトでは「脱炭素化と付加価値創出の両立」を目指し、次の3つのテーマに基づいた先進技術を導入しています。

1. スマート&ウェルネス:働き方改革を支える環境

オフィス専有部分の高層フロア(18階〜25階)とオフィス共用施設(17階)には、次世代省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver®」を採用し、人の在不在に合わせて照明や空調を自動制御します。さらに、明るさ感制御システム「T-Brightness Controller®」との組み合わせにより、自然採光も考慮した「明るさの感覚値」による調光が可能になります。

また、人体の生体リズム(サーカディアンリズム)に基づいた調光調色制御も導入され、ワーカーの健康にも配慮した快適な執務空間を提供します。これらの技術によって、エネルギー消費量を抑えながら、ワーカーにとって快適な環境を実現します。

2. グリーン&ウェルネス:自然と調和した空間

オフィス共用部では、CO2の貯蔵・固定化効果のある天然木を内装材に多く採用し、随所に配置された自然植栽と調和した温かみのある空間を創出します。

オフィス共用施設(17階)には、構造性能と可変性に優れた木質フレームシステム「T-WOOD® SPACE Light」を導入します。さらに、大成建設グループが滋賀県大津市に保有する森から供給される木材を活用した家具を設置することで、地産地消による循環型社会の形成にも貢献します。

室内の自然植栽には、植物の生育に適した光環境を制御できる照明設備を導入。植物の成長という自然とのつながりを身近に感じられる「バイオフィリックデザイン」の手法を取り入れることで、オフィスワーカーの心身の健康増進を図ります。

3. レジリエンス:災害時の事業継続を支える設備

建物外装には、ガラスに発電素子を挟み込んだ太陽光発電システム「T-Green® Multi Solar」を国内最大規模(約1,700m²)で採用します。これにより再生可能エネルギーを創出しながら、災害時など外部からの電力供給が停止した際にも自立電源を確保し、事業継続計画(BCP)対応を可能にします。

この太陽光発電システムによる電力は、オフィス部分の年間消費電力の約10%に相当します。通常時は建物内の電源として利用しつつ、災害時には17階の共用施設に太陽光発電と蓄電池による電力を供給する自立運用エリアを構築します。これにより、72時間の電力供給が可能な非常用発電機を補強し、建物の事業継続能力をさらに高めます。

国内最大規模の直流配電システムを導入

このプロジェクトの注目技術として、オフィス部分に国内最大規模の「直流配電システム」を採用します。一般的な建物では交流方式で配電が行われていますが、多くの機器は内部で直流に変換して使用しています。直流配電システムの導入により、交流・直流の多段変換によるエネルギーロスを低減し、CO2排出量を削減できます。

直流配電と空調の革新でCO2排出削減を実現

このシステムは、4種類の直流電源(太陽光発電、リチウムイオン蓄電池、電気自動車のリユース蓄電池、電気自動車接続)から、8種類の直流負荷(空調、照明、環境制御システム、USBコンセント、換気設備、清掃ロボット、エレベータ、電気自動車用充放電設備)に配電する仕組みです。接続数では国内最大規模であり、民間賃貸オフィスビルでは日本初の試みとなります。また、主電源を直流配電とした業務用空調設備の実用化も国内初となります。

大成建設は今後も、このプロジェクトを通じて御堂筋エリアの脱炭素化を進めるとともに、様々な環境配慮型技術を実装した建物の普及を図り、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

出典情報

大成建設株式会社リリース,(仮称)本町四丁目プロジェクトにおける脱炭素化技術の実装が大阪市補助事業に採択-脱炭素先行地域に選定された御堂筋エリアの脱炭素化を推進-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/assets_cms/pdf/10438.pdf