コンクリートのひび割れの原因とは。施工ミスか経年劣化か?現場対応を徹底解説

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コンクリートのひび割れは、施工段階のミスや環境変化、経年劣化によって発生する重大な劣化要因です。とくに建設現場では、構造性能や安全性、品質保証に直結するため、正確な知識と対処が求められます。

本記事では、ひび割れの原因・分類・対応方法についてみていきましょう。

「コンクリート ひび割れ」とは

建設業におけるコンクリートのひび割れは、施工時と経年劣化どらちでも起こる可能性があります。たとえば、以下のような場合であれば、コンクリートを打ちなおしたり、大規模な修繕の必要がある点は知っておきましょう。

  • かぶり厚が確保できていない箇所に発生したひび割れ-鉄筋が露出することで耐久性や防錆性に問題が出る
  • 打ち継ぎ部や構造接合部(梁・柱・スラブ)のひび割れ-構造耐力に関わるため、構造検討や再評価が必要
  • プラスチック収縮による施工初期(数時間以内)のひび割れ-初期強度が出る前に発生した場合、補修では済まない
  • 大幅なひび割れ幅(0.3mm超、とくに構造部材)-建築確認申請や第三者機関の検査でNGとなる

ひび割れは構造性能や耐久性、法的な適合性に対して、影響を及ぼす重大な要素だといえます。施工管理者は、施工段階から適切な管理と判断を徹底し、ひび割れの早期発見・正確な対応が重要です。

現場でよく発生するひび割れの種類と原因

ここでは、現場で発生する「施工中」と「施工後(竣工後)」に発生しやすいひび割れの典型的なパターンとそれぞれの代表的な現場例をみていきましょう。

コンクリートのひび割れは、施工のタイミングや構造物の種類によって、さまざまな形で現れます。とくに建築・土木現場では、施工段階での管理ミスや環境条件の違いから多様な原因が複雑に絡み合う点といえます。

1.施工中に発生するひび割れ

施工中のひび割れは、コンクリートがまだ硬化していない段階、あるいは初期硬化期に起こるものです。主に環境条件、打設管理、型枠施工などの不備が原因になります。場合によっては、やり直しになるケースもあります。

ケース発生タイミング現場状況主な原因補足・対策
基礎スラブ(プラスティック収縮)打設から数時間以内晴天、高温、養生遅れ表面からの水分蒸発により、表層と内部の応力差でひび割れ発生夏場・風の強い日・広面積でとくに注意。散水・シートによる速やかな養生が重要
擁壁(型枠不良)打設中〜脱型直後型枠剛性不足、型枠が膨らんだ型枠のズレや締め不足、バイブレーターの過剰使用、偏った打設型枠の固定点検、バイブレーションの適正化、均等な打設がポイント
RC壁(打継ぎ不良)打設から1〜数日以内前回打設部と新設部の接着不良打継ぎ面の清掃不足、レイタンス未除去、目荒らし不十分継ぎ目の清掃・目荒らしを確実に行い、一体化を図ることが重要

2.施工後(竣工後)に発生するひび割れ

竣工後に発生するひび割れは、以下のような外部の原因によって発生します。

  • 供用開始後の乾燥
  • 気温の変化
  • 荷重の加わり方
  • 地盤の動き

すぐに目に見える形で現れないことも多く、定期的な点検やモニタリングの体制が重要です。

ケース発生タイミング現場状況主な原因補足・対策
住宅基礎スラブ(乾燥収縮)数日〜数週間後夏場、空調使用などで急激な乾燥内部の水分蒸発による収縮応力が、拘束部で集中してひび割れを生じる面積が広い場合や配筋が少ない場合にリスク大。適切な収縮目地や養生が有効
擁壁(温度変化)昼夜の寒暖差が大きい時期冬期や季節の変わり目で温度変化が大きいコンクリートの膨張・収縮が繰り返され、拘束部(とくにコーナー部)で応力が集中温度補償筋の配置、伸縮目地の設置など設計段階での配慮が必要
RC壁面(荷重応力・地盤変位)供用開始後数ヶ月〜数年建物荷重や地盤沈下、振動などの外力がかかるコンクリートに過大な応力が作用し、構造的なひび割れが発生地盤調査の精度、支持層の確認、配筋の適正化、供用後の点検体制が重要

コンクリートのひび割れが発生した場合の対応方法

コンクリートにひび割れが発生した場合は、現場で冷静に対応しなければなりません。見た目だけでは判断せず、状況を把握し、記録し、補修の必要性と内容を適切に検討しましょう。

現場対応の基本フロー

コンクリートのひび割れは、以下の流れに沿って、対応することになります。

  • 状況確認
    ひび割れの位置や長さ、幅、深さを確認する。目視だけでなく、クラックスケールやルーペ、ピンゲージなどを使用して数値化し、記録する。周囲の温湿度や荷重条件も併せて確認する
  • 原因特定
    発生時期や施工記録、設計図を照合する。ひび割れの原因が乾燥収縮や温度応力、施工不良、地盤変位などのどれに該当するかを分析。必要に応じて構造設計者や監理者と相談する
  • 補修方法選定
    ひび割れの性質(幅・深さ・構造部材か否か)に応じて、補修の可否や手法を決定する。見た目や施工性、費用、安全性なども考慮して判断する
  • 記録・報告
    写真は、全体像・接写・クラックスケール付きの3パターン以上が基本となる。記録内容には発見日や担当者、状況説明、判断内容、対応方針を含める。報告書形式にまとめ、関係者と共有する

原因特定では、以下のようなコンクリートの非破壊検査が実施されるケースもある点は知っておきましょう。

  • 超音波法:音波の反射や速度変化を利用し、ひび割れの深さや位置を確認
  • 電磁波レーダー法:鉄筋位置や内部異常の位置を把握
  • 赤外線サーモグラフィ法:温度分布の偏りから内部の空洞や水分を検出

よく使われる補修工法と適用範囲

ひび割れ補修は、状況に応じて適切な工法を選定することが重要です。幅や深さだけでなく、部材の構造的役割や環境条件によっても適用工法は異なります。以下に、実務で頻繁に使われる補修工法とその選定基準をまとめました。

工法名適用範囲代表的な使用条件留意点
エポキシ樹脂注入工法幅0.2mm以上の構造部材のひび割れ構造補強が必要、乾燥状態施工時の気温と湿度に注意。構造クラックには最優先で適用
シーリング工法(表面充填)幅0.2mm未満、非構造部材や美観目的軽微なひび割れ、水密・気密の確保内部補強効果はないため、構造クラックには不向き
断面修復工法欠損・はく離がある構造部位クラックにより断面性能が低下している場合はつり精度、下地処理、仕上げの一体化が必要
表面被覆工法擁壁・基礎など広範囲の劣化防止雨水・炭酸ガスの侵入対策、中性化防止ひび割れが再発する場合は先に注入や修復を行う

まとめ

ひび割れは構造・耐久性・品質のすべてに影響するリスク要因です。場合によっては、施工のやり直しにつながるケースもあるため、見逃しや軽視は禁物です。そのため、施工管理者はひび割れの種類と原因を把握し、非破壊検査や適切な補修工法で確実に対応することが重要だといえるでしょう。

現場での早期発見と的確な対応によって、品質確保と将来的な補修コスト抑制につながります。