いま「二級土木施工管理技士」が注目される理由とは|インフラ更新時代の主役に

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Category:コラム土木
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著者:鈴原 千景

少子高齢化とともに技術者の世代交代が迫られています。建設業界においても、施工管理の専門性が問われるようになりました。

たとえば、地域社会の基盤となる道路・橋梁・上下水道といったインフラ整備の現場では、資格を持つ技術者の有無がプロジェクトの品質や安全性を左右する局面も増えています。そして、現場の中核を担う人材の登竜門として、「二級土木施工管理技士」が注目を浴びています。

本記事では、「二級土木施工管理技士」の資格制度の概要や評価される背景、取得後のキャリアパスに至るまで、最新の制度改正をふまえて総合的にみていきましょう。

建設業界における「二級土木施工管理技士」の位置づけ

二級土木施工管理技士は、施工管理業務のスタートに位置づけられる国家資格です。国土交通省が認定する施工管理技術検定制度で、試験合格者が取得できます。

試験は一次と二次に分かれており、施行管理業務担当者として、「主任技術者」の立ち位置で建設現場に配置可能となる点が資格の有無によって大きく異なる点だといえるでしょう。

とくに中小建設業者においては、一級資格者の確保が困難なケースが多いため、二級資格者の存在は現場の運営に直結する戦力と評価されます。現場の信頼性向上や対外的な評価、建設業許可要件の充足といった点でも企業での評価も年々高まっています。

二級土木施工管理技士の受験資格

二級土木施工管理技士の受験資格は、令和7年度では以下のようになっています。

受験したい試験の種類要件
二級土木施工管理技士:一次試験受験する年に17歳以上となるもの(2009年4月1日移行の生まれ)
二級土木施工管理技士:二次試験1.1次試験合格後、実務経験3年
2.土木施工管理技士一級の第⼀次検定合格後、実務経験1年以上
3.技術⼠第⼆次試験合格後、実務経験1年以上

※参考:全国建設研修センター「令和7年度 2級土木施工管理技術検定の実施についてより

つまり、最短で1年の実務経験で二級土木施工管理技士の二次試験を受験できるものの、施工管理を行いつつ、取得を目指す場合は3年の実務経験が必要だといえるでしょう。一次試験合格後の有効期限はなく、2028年までは旧・新制度どちらでも受験可能です。

旧制度の受験条件は全国建設研修センターの「旧受検資格 受検の手引」を参照してみましょう。また、旧制度では二次試験を2回以内で合格できなければ、1次試験をもう一度受けなければならないという違いがあります。

二級土木施工管理技士の資格が評価される背景とは

近年、二級土木施工管理技士への注目が再び高まっている背景は大きく分けて以下の2点です。

  • 建設業界を取り巻く人材不足が加速している(若年層の入職者が少なく、高齢化が進み過ぎている)
  • 法制度の変化(責任者が求められる工事が多くなり、無資格では施工管理そのものができない。公共工事では、経営審査事項の加点対象にもなる)
  • 全国的なインフラ更新需要の顕在化(老朽化した道路・橋梁・上下水道などの維持補修・更新工事が増加傾向にある)

とくに、建設業に従事する技能者や技術者の高齢化が進行している状況です。そのため、若年層の入職者は横ばい、減少傾向にあります。そのため、比較的若い年代の実務者が資格を取得し、管理者としての職務を担うことによって、企業側の育成コスト低減や人材の安定化にメリットがあるといえるでしょう。

また、近年の公共投資では、国土強靭化・災害復旧・インフラ長寿命化といったテーマが課題の1つとなっている状況です。地域ごとの維持管理事業が活発化しており、資格の保有が工事受注の可否や人材配置の整備に直結する要素となっています。

土木施工管理技士一級と二級の業務範囲の違い

「一級」と「二級」の施工管理技士には、以下のような明確な業務範囲の違いが存在します。

項目二級土木施工管理技士一級土木施工管理技士
主任技術者の配置可(対象工事に制限あり)可(全規模に対応)
監理技術者の配置不可可(特定建設業における必須資格)
対象工事規模原則、請負金額が4,000万円未満の工事請負金額に上限なし(1億円以上含む)
公共工事の等級入札参加一部制限あり制限なし(上位区分での参加可)
管理職登用・昇進中規模現場でのリーダー職大規模工事の統括、経営層候補

二級土木施工管理技士のキャリアパス

二級土木施工管理技士のキャリアパスは、次のような流れで考えられます。

  • 現場経験+資格取得によるフェーズの変化
  • 主任技術者や小規模現場のリーダーに
  • 管理職または一級へのステップアップ

    実務経験を積むところからスタートし、資格取得によって作業者からマネジメントを行う立場になっていきます。二次検定を受けるまでには、1年から3年の実務経験が必要であるため、二次試験に合格するタイミングでは、主任技術者として活躍できるようになるでしょう。

    その後は、リーダーとしての役割も含めて、一級土木施工管理技士の取得や社内での管理職を目指すルートも考えられます。とくに、一級土木施工管理技士を取得すれば、受注できない工事がなくなるため、さまざまな工事を経験することで、専門性を高めていくキャリアパスも選択可能です。

    資格取得後に求められるスキルと視野

    二級土木施工管理技士の資格は、現場における管理者としてのスタートラインに立つためのものとして評価されます。そのため、資格そのものは即戦力として扱われる資格ではないといえるでしょう。

    しかし、資格取得後には、現場運営の中核を担う人材として、より広範なスキルと高い視座が求められるようになります。たとえば、資格取得後は「現場における指揮力・調整力」が問われるようになり、主任技術者の立場であれば、以下のような複数の責任があるといえます。

    • 協力会社・下請業者との工程調整や作業員に対する安全指導
    • 発注者(官公庁や民間施主)との打ち合わせ対応、設計変更・仕様調整時の説明と記録管理
    • 近隣住民への対応(騒音・交通・通報など)
    • 労務と機材の手配計画、予算内に収めるためのコスト意識
    • クレームやリスクの初期対応

    施工管理者は、日々の現場をこなしながら「職長」「主任」「工事管理者」といったステップアップしていく過程があるという認識で日々の業務を進めていきましょう。

    また、2級土木施工管理技士においても、BIM/CIMやデジタルツール、ICT技術の理解と活用は、今後のキャリア形成において避けては通れないテーマといえるでしょう。電子納品やデジタル写真管理・クラウドベースの工程管理は政府からも推進されているため、施工管理者のスキルとして重要です。

    まとめ

    二級土木施工管理技士は、現場経験を積みながら資格を取得し、作業者から管理者へと役割を広げていくキャリアパスを形成します。主任技術者としての指揮力や調整力、コスト管理能力などが求められ、将来的には一級取得や管理職登用も視野に入ります。

    また、スキルとして、BIM/CIMやICT技術の理解と活用が不可欠となり、施工管理におけるデジタル対応力も重要な評価軸となっているといえるでしょう。